カスタードクリームになりたい俺は世界をソウゾウする

魚里蹴友

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 学校にはやりたいことが無い。高校の勉強も部活もする理由が無かった。ただお別れまでの残り時間が減っていく音に合わせて、首を振るだけ。それを俺は惰性的生活と呼んでいた。




 勉強、部活に興味を持てれば良かった。しかし、いつになってもそうすることができない。嫌いじゃないが、好きになれないのだ。もちろん俺にもしたいことがある。そして、それには情熱を注ぐことができる。




 様々なものに対する俺の反応はやはり様々なものだ。だが、何がその違いを作っているのか、その理由はわからない。アレルギーみたいな、自分の意思と反したものだ。ただ、とにかくダメなのだった。




 例えば野球部の人に聞きたい。明日からサッカーを始めて人に勇気を与えよ、と言われたらどうするのか。恐らく、嫌な気分になるはずだ。何で俺がサッカーなんかと思うだろう。それでも、最終的には期待に応えようと大抵の人は行動する。




 しかし俺は違う。興味の無いものは興味が無い、それで終わり。期待に応えたくない。こう思うのは異常なことだろうか。いや異常ではない。ただ、確実に少数派ではあるだろう。こうした考えを続ける限り、俺はまともに生きれない気がする。




 ところで、今日風呂に入る前、虫を二匹殺した。爪の汚れみたいな小さな虫だ。これを通して俺は言いたいことがある。それは命を奪うのが悪い、ということではない。虫を殺す俺は神が殺せ、ということだ。なぜ死なないのか不思議で仕方なかった。罪を重ねても死なない。俺はまだ生きたいからありがたいのだが、やはり不思議で仕方ない。




 今日は八月三十日。あと二日で授業が始まる。怖いから行きたくない。でも人に迷惑をかけたくはないからどうせ学校に向かって体は動くのだ。他の生物には例えられない行動だ。変えられないまま、惰性的生活は続く。




 夏生まれの俺にとって十七回目の秋になる。

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