第916話 “松江フォーゲルパークダンジョン”の攻略が始まる件



 フォーゲルパークの駐車場で、来栖家チームが探索準備をしていると係員がやって来た。そして相手がA級ランクの探索者チームと知ると、慌ててお偉いさんを呼びに戻って行く。

 ここまで運転してくれた島根の協会役員の2人は、偉い人が来るなら待ちましょうかとの構え。やはりスポンサーは、この時代も無碍むげには出来ないようだ。


 ハスキー達は見知らぬ地で、ダンジョン入り口はどこだと鼻を鳴らして探している。茶々萌コンビもそれを真似して、今回も元気に関してはあり余っている。

 それはヒバリも同じく、今回もリードを持つ香多奈は早くもゲンナリした表情。とは言え、今から向かうのはA級ランクなので、この仔グリフォンに出番は無いかも。


 ルルンバちゃんに関しては、今回も《並列思考》を駆使して2台同時操作を行う予定。2号ちゃんも、後衛の護衛役にとちゃんと連れて来ている。

 前回は、ワープ移動で車の輸送の手間もなく連れて来れた。次の遠征はどうやって連れて行こうと話していただけに、この鏡のシェルター移動は画期的過ぎる。


 そんな感じで、一行がテーマパークの入り口に近付いた瞬間、お偉いさんらしき人が慌てて出て来た。そして挨拶をしながら、入り口ゲートまで案内してくれる。

 そんな訳で、お客に混じって入場料も払わず敷地内へと侵入を果たす一行。最初の植物公園は、冬だと言うのに派手な色合いの花が満ちていてとっても綺麗。


「うわあっ、この規模で現在も営業してるって凄いねぇ……お客商売は色々と大変でしょうに、頑張ってるんだねぇ」

「鳥はどこっ、この先にいるのかなっ? でもウチのチーム、ミケさんやヒバリがいるから入れて貰えないよねぇ。

 ミケさんとか、スズメとかをいとも簡単に捕獲するもん」

「そうだね、でもまぁダンジョンのエリアも、きっとこんな感じの風景だと思うよ」


 そうかぁと、護人の説明に納得の表情の末妹である。ミケに対して良かったねと振っているが、老猫ミケも案外と狩人ハンターの血が騒ぐエリアとなっていそう?

 そんな期待と不安を胸に、案内されたのはガッチリとコンクリ壁でふさがれた小部屋だった。どうやらオーバーフロー対策に、こうやって備えているらしい。


 そのゲートは結構な大きさで、直径3メートル以上はある半円級だった。それを見て、中には巨大なタイプもいるねぇと姫香の推測の呟き。

 紗良も同意して、ワイバーンとかも出て来た筈と前情報を公開している。飛竜ワイバーンって鳥のカテゴリーなのかなと、不思議そうな末妹である。




 そんな感じで騒ぎながらの入場、ここからようやくの探索開始となった。今日は色々と前振りが多過ぎて、何だかスイッチの切り替えに苦労しそう。

 それは人間だけだと、ハスキー達は完璧に探索の緊張感を身にまとって先行していた。さすが歴戦の勇者達である、来栖家の切り込み隊は今回も頼りになる。


「うわっ、本当に派手な色の植物園だねっ……さっきの入り口より凄いかも、こんなこと言ったら営業妨害になっちゃうかなっ? 

 でも凄いね、これは見応えバッチリだよ!」

「そうだねぇ、でもここは既にダンジョンの中だからねっ、香多奈ちゃん。敵もバッチリ出て来るし、植物系のモンスターも出て来るのが報告に上がってるよっ。

 みんなも、待ち伏せ型の植物系の敵には充分に注意してねっ」

「了解、今回もルルンバちゃんは中衛でいいのかな? 香多奈はちゃんと、ヒバリのお世話して暴走しないように止めておくようにね」


 分かってるよと怒ったような末妹の返答、それを無視して進んで行くハスキー達前衛陣。ここは完全に全天候型のテーマパークをうたっており、屋根が張られたドーム内施設だ。

 タイルも綺麗に張られており、ダンジョンもさぞかし創造時には楽しかっただろう。そして早速出現したのは、パペット兵とウッドゴーレムの群れだった。


 パペット兵は、蔦が絡んで標準サイズよりやや大きいかも。その蔦はオレンジ色の花を幾つか咲かせていて、何というか目立つ敵ではある。

 ウッドゴーレムなどもっと酷くて、蔦絡みの上に、何と木の胴体に巣箱が打ちつけられていた。果たして、あの中に小鳥は棲み付いているのだろうか?


 そんな余計な事を考えてしまう子供たちだが、ハスキー達は無関心に燃やしたりつちで破壊したりと暴虐の限りを尽くしている。コロ助の武器だが、今は『電磁ハンマー』をメインに使用中。

 愛用の白木のハンマーは、戦闘で酷使し過ぎたために既にボロボロに。修理してあげたいが、現状は代用品で我慢して貰うしかない。


 とは言え、この『電磁ハンマー』も雷撃がついていたり、耐性や能力値アップがついていたりと良品である。ただ単に、振り回す形状として前の方がコロ助の好みだったと言うだけ。

 そんな感じで、半ダース余りの敵の第一弾は呆気なく退場の運びに。このダンジョン、親切にルート案内板まで出ていて探索者にはとっても親切かも。


 あちこち迷わなくて済むのは利点だが、テーマパークは敷地も広くて探索に回るのは大変そう。前情報では、ルート通りに進めばゲートは発見出来るとの話。

 ちなみに、魔素濃度はまぁ高くて施設の人にもくれぐれもよろしくと釘を刺されてしまった。そんな訳で、今回も10層かそれ以上の間引きは決定済み。


「それにしても、回る道順が決まってるダンジョンってのも珍しいね。こんな感じで、次の層のゲートの位置まで案内してくれるのかな?」

「前情報では、親切にもしてくれるっぽいね……ただし、ゲートキーパー的な敵が配置されてるみたい。中ボス程じゃないけど、階層ボスを倒さないと階層渡りが出来ないみたいだよ。

 そう言う意味じゃ、さすがA級指定だけはあるかな?」

「そうなんだ、それは気を引き締めて行かなきゃ……あっ、そこの扉でエリアが変わるね。元がテーマパークだから、ここってエリアの境目がクッキリ違うんだね。

 面白いって言えば、まぁそうなのかなぁ」


 姫香の指した扉で、いったん植物エリアは終了らしい。綺麗だったのにと、撮影役の末妹は名残惜しそうに植物園を最後にフレームに収めて一行の後に続く。

 そして次のエリアを見て、ナニコレって素っ頓狂とんきょうなリアクション。



「わっ、今度は一転して岩だらけの寂しいエリアだねっ! ここは植物の展示も寂しいし、って事は鳥の動物園エリアかなっ?」

「そうみたい、向こうからペンギンがやって来た……アレはペンギンで良いのかな、何か装備を着込んでやたらとマッチョだけど。

 ああっ、ペンギン獣人って感じのモンスターなのかな?」

「そうみたいだねぇ、ペンギンが獣人化したらああなるんだぁ。もっと可愛くなるかなって思ったけど、マッチョかぁ……」


 そう言って顔をしかめる紗良は、出現したペンギン獣人に否定的な視線を送っている。そんな彼らは、フリッパーで相手をぶん殴ってやると気合充分。

 それはもちろんハスキー達も同様で、風を巻いて即座に出現した敵へと襲い掛かって行く。そして壮絶な殴り合い、そこにやや遅れて茶々萌コンビも参入する。


 白熱する戦いに、続いて姫香も参加して敵を押し返す作業。ペンギン獣人の集団は、10体近くいて意外と数が多くて暑苦しい。

 それが密集態勢で、意外と統制の取れた戦い振りを示してハスキー達も攻めあぐねている。そこに姫香の《豪風》込みでのスピンアタックが炸裂。

 固まっていた獣人達は、ボーリングのピンのように吹っ飛ばされていく。


 その機を逃さず、後は各個撃破でこの戦いはようやくの終了へ。初っぱなからなかなかの激闘だったが、姫香はさすがA級ランクだねと気にした素振りも無い。

 ハスキー達も同じく、怪我は無いよと身振りで示して再び先行してチームを導いて行く。茶々萌コンビも姫香に呼ばれて、元の中衛の位置へ。


 今回は中衛で出番のなかったルルンバちゃんだが、慣れてないので仕方がない。いつもは末妹の命令でレーザー砲をブッ放したり、護人の射撃に合わせて攻撃するのだ。

 その両者が隣におらず、前衛寄りの動きをと突然言われても戸惑うのも当然だ。それでも前衛の経験も何度かあるし、その内に慣れて来るよと姫香は気にしていない。


 後衛からも、今回は肉弾戦メインだよと言われて、改めて頑張ろうと奮起するAIロボ。ただし位置取りは慎重に、何しろたまに前が見えないと末妹からお叱りの言葉が届くのだ。

 魔導ゴーレムの巨体も、盾役には最適だが視界をさえぎったりと良い事ばかりではない。ルルンバちゃんのせいでは無いのだが、その辺も考え処ではある。


 一応、彼の機体にも撮影用のカメラはくっ付いているので、ハスキー達前衛陣の活躍は撮影に不便はない。ただし、やっぱり慣れない位置取りにモジモジしてしまうAIロボであった。

 まぁ、中衛の戦力を厚くするってのは、護人の提案で姫香の負担を考えての事。後衛には2号ちゃんも追加されたし、ルルンバちゃんはそもそも万能型である。


 器用に前衛や後衛サポートもこなす彼だが、経験のなさと前に出ない性格のせいで当分の間は苦労しそう。その点は、同じく中衛の姫香が面倒を見る予定。

 そんな事を考えながら、進む来栖家チームはペンギンエリアを抜けて次のコーナーへ。建物の変わり目の扉を抜けると、そこは浅い水場の広がる湿地エリアだった。


「なんか、コロコロと風景が変わるねぇ……建物が連なってるダンジョンは、何度かチームで探索した事はあるけどさ。

 出て来る敵も変わるんなら、こっちの対応も大変だよね」

「確かにそうだな、まぁ植物系と鳥型のモンスターがメインなのは分かっているけど。そうは言っても……おおっと、今回は団体様のお越しだな。

 綺麗と言ってられないな、あれもモンスターだろうから」

「うわあっ、でもすごく綺麗だよっ、叔父さんっ! アレは何て言う鳥なの、紗良お姉ちゃん?」

「フラミンゴかなぁ、羽毛が見事なピンク色だねぇ……アレは食べる餌の色素によって、染まってるって聞いた事があるかなぁ。

 それにしても、20匹以上いるのは酷過ぎっ!」


 毎度の紗良のウンチクの後には、見事に敵集団への非難がくっ付く事態に。確かに群れを成す生態を、そこまで忠実に再現しなくても良かろうに。

 護人はすかさず『射撃』スキルで、ルルンバちゃんに声を掛けての先制攻撃。空を覆う赤い鳥の群れは、どこに撃ち込んでもヒットしてくれる。


 指示を貰ったAIロボも、嬉々としてそれに参加を始めてくれた。ついでに肩の上のムームーちゃんも、護人父ちゃんの役に立とうと魔法攻撃を開始する。

 敵のフラミンゴは、くちばしも鉤爪もモンスター仕様で遠目から見ても凶悪なフォルム。それが来栖家チームの遠隔攻撃により、振る舞われる前にバタバタと倒されて行く。


 地上で待ち受けるペット勢は、自分たちの分も残しておいてってな表情。護人の正確な弓矢攻撃に加えて、ルルンバちゃんのレーザー砲&魔銃の砲撃がえげつない。

 それに加えて、ムームーちゃんの魔法の品揃えは、炎~氷や闇属性までバラエティに富んでいる。お陰で、チームに接近する敵の数は大幅に減ってくれた。


 それらを武器で退治するハスキー達は、何故かちょっと悲しそうと言う。茶々丸は全く気にせず、地上すれすれを滑空している敵に『突進』を繰り出している。

 器用な戦い方だが、相手は残念ながらそんなに器用では無かった。着陸態勢を狙われて、相手に一矢報いる事も出来ずにとうとう全滅してしまった。

 結果、周囲にはあちこち転がる魔石のみという有り様。





 ――そんな訳で、A級ランクのダンジョン探索も何とかなりそう?







   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――

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