第63話 丞相処遇案

 ルーカスさんは、まず、リスト上の領主、代官に対して書状を送ることとすると語った。


 その書状には、領主の王都への出頭のみを要求するというものであり、出頭理由については明確にしない。

 その代わりに、近日中に前倒しで、皇王様、3人の王女の合意の下、新皇王即位を前倒して執り行うという情報を付け加えておいた。

 さらに、王都には3人の王女がすでに集結し決定事項となっていることも併せて書き記されている。


 また、書状を受け取ってから、1日置かずに出立しなければ、到着できない期限を設けており、これは、各地で情報入手や相談ができないようにするためで、各個人で判断するように求めたものであった。


 内容を見れば招集の目的は自ずとわかるはずであり、どうしなければいけないかもわかるはずである。

 これは最後通告であり、皇国側は最後のふるいをかけることを目的としている。


 ちなみに、書状の送り先にサイモン兄弟の両代官とサイモン伯爵家は含まれていない。

 ということは、これらのものの処遇はすでに決まっているということである。


「この書状のみで出頭に応じたものは、己の罪に対する謝罪の意思があると捉えて、現領主、代官の処罰のみとし、一部領地の返還を持って処置とする方針とします。

 当然のことながら、出頭に応じないものに関しては、家族を含め爵位ならびに全領地の返還を持って処置いたします。

 返還された領地は一旦直轄地とし、皇国より代わりの代官を派遣します。

 これが、私の処置概要になります。

 よろしいでしょうか?皇王様!」


「うむ。お前に全権委譲している。

 その通りにやってもらって構わない。」


「はっ!ありがとうございます!

 早速、書状を送ります。」


 さすが、ルーカスさん。

 丞相って、立案も判断も早いのね。

 もう出て行っちゃった。



 ただ、こうなると当分やることなくなったね。

 かと言って、エマはまだここにいる必要があるわけで、どうしようかな?


「エマ!今からどうする?」


「今日ですか?」


「ちゃうちゃう。領主たちが出頭してくるまで、まだ時間あるやろ。

 それまでどうしよっかなって思て。」


「それなら、一旦イガタウンに戻りますか?

 それとも、この近辺で狩りをするとか?」


「この状況で出歩いていいんかな?」


「うーん、どうでしょうね?」


「皇王様!この件が収束するまで時間があると思うんですけど、僕たちは出かけてもいいんでしょうか?」


「そうね。収束するまでは王都にいてほしいんだけど、危険なことをしないなら日中は何をしてもらっても構わないわ。」


「ありがとうございます。

 そうさせていただきます!」


 各自、応接室を出て行く。


「今日はまだ早いんだけど、今からなんかする時間はないし、せっかくだから街に行く?」


「「「「承知!!♡☆」」」」


 いや、質問なんやけど!まあ、いっか。


「ほんじゃ、行こっか。

 みんな、仮面付けてね。

 ミラ様、エメ様、ちょっと出かけて来ます。」


「えー!私も行きたい!」


「でも、ミラ様はどうするんですか?」


「そうなんだけど……。」


「仲がいいのね。行ってきて。

 私は大丈夫だから。」


「やった!イザベラ!ミラ様をよろしくね。」


「はい、エメ様。ちょっと待っててください。

 護衛を連れてきてもらいますので。」


「あ、今日はいらない。

 ユメさんたちと一緒だから。ね!」


「いえ、そういうわけにはいきません!」


「えー、ケチ!」


 そりゃそうでしょ!次期皇王なんやから。

 この人もオンオフが激しいな。


 侍女の人が護衛を呼びに行った。


「ふふふ、これで私もなかまになった感じ?

 それとも、なかま入り?」


 どっちも同じやんか!

 この人は、そんなになかまに入りたいんかな?

 うちの場合のなかま入りって事故が発生するんやけど……。


「エメ!残念ながら、まだなかまではないよ!

 黒の軍団に入りたいの?」


「えー、まだなの?入れてよ〜!」


「お頭〜☆」


「エメ様!黒の軍団でなかまというのは、なんというか、自分で決めるんじゃなくて、突然にそうなるんです。

 例えて言えば、神様が決めるみたいな感じなんです。」


 ほんとに神様が決めるんです……。


「ふーん、まあ、いいわ。

 じゃ、友達からお願いします!」


「はい、喜んで!逆によろしくお願いします。」


 次期皇王様なのに、ほんとに優しい人やね。

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