弱者の人となり

常陸乃ひかる

みんなの

 某中小企業に、嫌われ者の会社員が居る。

 役職にはついているのだが、上司は恫喝どうかつ威嚇いかくを平気で行ってくる。また同僚からの、人格否定や容姿への侮辱ぶじょくが絶えない。会社からは時代に合ったリスキリングを求められ、プライベートの時間さえも奪われる。

 それでも彼は、家族のために働き続ける。

 会社以上に、自分を蔑ろにしてくる家族のために。


 どこぞの市井しせいで、名家に嫁入よめいった女が居る。

 そこで待っていたのは姑に監視された生活だった。どこで使うかもわからない御作法の数々を学び、マナー講師の厳しい指導を受ける。女だてらに働くのは禁止され、普段から若くあれとたしなめられる。

 いわれのない難癖は、募集もしていないのに、随時寄せられた。


 ある中学校に、イジメに苦しんでいる少女が居る。

 家庭が原因で、一定の生徒から暴行を受けるようになり、少女から笑みが消えた。それでも学校に通い続けている理由は、先日転校してきた男子生徒のことが、気になっていたからだ。

 不登校になるなら、彼に告白してからでも遅くないと思うほどに。

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