第4話 準
閉店の前にメールをチェックするとボスからメールが来ていた。
今日の報告をするように、という事と、心愛を逃さないようにとの事だった。彼女を顧客にすればここでの任務は終了となるはずだ。私もスタッフもウサギたちも晴れて休暇が取れる。
翌日、定休日だったが餌やりと掃除をしにスタッフの笠井と出勤する。後もう少しの我慢。笠井はオーバーワークをあまり気にしない質のようで鼻歌を歌っている。ハスキーボイスでいい声なのだが、残念ながら音痴なせいか何を歌っているか見当もつかない。鍵を開けて見回すと何か違和感がある。笠井は気づかないようで、餌をやろうとケージに近づいた。
「三上さん、瀬奈がいない!」
慌てて、ケージの前に行く。ケージの鍵がこじ開けられ、瀬奈がいなくなっている。毛があまり落ちていない。瀬奈が懐いている人の仕業だ。
「笠井さん、瀬奈中毒は準しかいない。準の家を探しましょう。他のスタッフにも、すぐに連絡して!」
顧客情報は住所から勤め先まで調べてある。調べてあるというより、ターゲットを顧客にしているのだ。店の場所を悟られない様に、目隠しして送迎している。ロケーション履歴も、送迎時にオフにさせている。気をつけるように言ってはいたが、送迎担当の者が準に跡をつけられてしまったのか、もう一台スマホを持っていて、ロケーション履歴をオンにしてあったのだろう。
他のスタッフにも、準の家に向かうよう連絡をして、私と笠井も一旦店を閉め、すぐに準の家へ向かう。
準は郊外にある駅近くのメゾネットに住んでいる。ちょうど着いたばかりのスタッフと、準の友人を装ってコンビニの袋を持ち、一人がドアフォンを押すふりをしている間に、ドアを囲んだ中の一人がピッキングする。施錠していないかのように、すぐにドアが開く。急いでマスクと手袋をし、中に入るとぐったりしている準の横で瀬奈がのんびり人参を齧っていた。準の様子を見る。同じ症状を何回も見ているから、準は当分入院しなければならないと見当がつく。私と笠井は瀬奈を人参ごとバスケットに回収し、準の家を後にした。残りの者で手分けして、瀬奈の毛が残らないよう手早く掃除をし、一人が残り、救急車を呼ぶ。これで、準が加わっているプロジェクトは、一時的に中断され、準の入院により大幅に遅れるだろう。予定が早まってしまったが、このくらいは許されるだろう。準がプロジェクトの要である事は調査済みだ。これで、ライバル企業を出し抜くことが出来ると、クライアントはホクホク顔だろう。
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次回最終話です。本日中に投稿します。
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