恋心を無視した

泡沫 知希(うたかた ともき)

これは恋ですか?それとも憧れですか?

私は熱しやすく冷めやすい人間だった。

そんな私の恋はたくさんあった。


初恋は幼稚園の時に、仲良くしていた男の子が好きだった。その子は、大人しくてあまり話す子では無かったが、一緒にいるのが好きだった。しかし、引っ越しをしてその気持ちは無くなった。


次に恋をしたのは、新しい幼稚園の子だった。やんちゃな男の子で、よく色々な人にいたずらをしている子だった。初恋の子とは真逆のタイプだった。


その次は、小学校1年生の時だった。その子は、私が幼稚園の時に好きだった子の親友だった。そして、足がとても速くて、かっこよく見えたから好きになった。しかし、色々な子からモテていたので、すぐに諦めてしまった。


小学生2年生では、好きな人が3回も変わった。

そこから、同級生たちが恋バナというのをし始めるようになり、自分の恋心はおかしいことに気がついた。みんなは好きな人があまり変わらないことを知ってしまった。自分の恋は本当に正しいものなのだろうか?それは、憧れだったのではないのか?という疑問が浮かんだ。そこからは、好きな人が変わらないようになっていった。


小学校5年生の時に、失恋のようなことを経験した。私が2年間好きだった子(別の子が気になったこともあった)が、付き合ったということを知りました。結構前から付き合っていたそうで、私はあまり恋バナをしない人でしたから遅くなったのでしょう。私は、あぁ…付き合ったのか…。よし、仕方ない。と切り替えました。そこで、その子の恋心は消えました。

そして、自分の恋心にまた疑問を持ちました。同級生には、好きな人が別の人と付き合って、友達と慰め合っているのを見たことがありました。ドラマでも、女性は恋を引きづって、泣いている人や、付き合った子に嫌がらせをする人がいることを知っていました。しかし、私にはそれが無かった。ただ、仕方がない。仲良くしてくれるといいなぁ。別の人探そうという。という感じだったので、やっぱり私の恋心は本物では無いのだろうかと思うようになったのです。


そこからは、好きな人が出来る訳でも無く、ただ同級生の恋バナを聞くことに徹しました。そのおかげで、私が熱しやすく冷めやすいタイプの人間なことを知ることが出来ました。あぁ、自分はそういう人間だから、コロコロ変わったことを理解しました。そして、あの時の感情は恋心でよかったことが嬉しかったのです。あの気持ちが偽物だって言われたら、私を否定されているような感覚があったからです。私が周りと違っていた原因を知り、とても安心することが出来ました。しかし、私は恋をすることよりも聞くことが楽しいことに気がつき、恋心を忘れていったのです。






私は中学生になりました。私は最高の親友たちがやっと出来て、友情を楽しんでいました。

しかし、その親友たちは同じクラスでは無かったので、クラスでぼっちになっていました。その上、慣れない環境から不登校になりかけていました。

そんな時に、私は気になる人が出来ました。その理由が、隣のクラスの先生が自分のクラスの話を雑談としてするので、その話でよく出てくるの子でした。何故かとても気になってしまいました。隣のクラスにいる友達に話を聞いたのですが、クラスでのムードメーカーみたいで面白い子で不思議だと言っていました。その子を廊下から見て、私が知らないタイプの人だなと思いました。


私は、その子を目線で追いかけるようになったのです。近くにいたら、チラッと見てすぐそらすことをしていました。話かけることもしませんでした。

ただその子を知りたいと思ったので、学校には行くようになりました。友達は、その子とよく話しているようなので、その子の話が出たら、聞くだけで楽しかったです。私からその子の話題を振ることはせずに、周りに悟られないようにしていました。

私がそんなことになるのは初めてだったのです。その子の話題を聞くだけで楽しいと思うこと。友達がその子と話せて憧れていることが、イレギュラーな事態でした。多分、周りにいた事がないタイプの人だったから、気になるだけだ。そう思い込ませていました。


初めて話した時は、たまたまでした。友達に伝言を伝えに行った時に、友達は私が気になる子と廊下で話をしていました。その時に


「はじめまして、僕は柳優斗と言います。よろしくね」

「はじめまして、私は森本柚子です。こちらこそよろしく」


これくらいしか覚えていません。ただその時の私は、しっかりと顔を見れませんでしたし、鼓動がとても速くなっていました。でも、話せたことが嬉しかった。心が満たされていたのです。


廊下で会うと、お辞儀をするようになりました。それだけでラッキーだなと思うようになっていました。そして、友達に接点があったこともあり、だんだん話す機会がちょっとずつ増えていきました。でも、2、3日に1回話せるだけでした。


行事で他クラスと合同になると、会えることが楽しみになっている事に驚きました。今まではそんなことは無かったのに。いや、前から薄々と感じていた。これは、なんという気持ちなのだろうか。恋だと思うが、でも、恋でこんなことになる訳がない。なら、何に当てはまるのかな?多分、憧れだ!私は自分とかけ離れた人に憧れているんだ。だから、恋ではない気がする。

それに私は熱しやすく冷めやすいタイプだから、こんなに思える訳が無い。だから、この恋は勘違いだ。

そう思い、私は心にある金庫にこの気持ちを閉じ込めようと思った。出てくることが無いように。私のこの思いを手に持った時に感じた、暖かさと苦しさを忘れるようにたくさんのロックを掛けたのだ。

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