06


 *



 タァンっ……


 ビーッ!



「あ、早速当たり判定でたね」


「新人君達が双子にやられたかぁ」



 司令塔二人組が、インカムでほのぼのと会話を交わしながら、表情は真剣そのもので別々の方向へと駆けていく。



「あの子達、随分と可愛い話してたよ。百勝したら何をお願いするかって」


「ああ、あれか……随分と懐かしい話だな」



 服部の方は、能登がいつどこでそんな話を聞いていたのかは気にしていない様子だ。気にしても無駄、というのもある。



「あの時は、相方に譲ったけどさ。前線抜けて、平和な内地勤務が良いって……それから二度と会ってないな。能登も、前に所属してた班で百勝達成してただろう?」

「うん」



「何を願ったんだ?」



 丁度その時の事を思い出していた能登は、思わず口元に笑みがのぼるのを感じた。



「秘密」

「おいおい……」



 言いかけた服部を遮り、能登が低い声で叫ぶ。



「十時の方向っ」

「はいよっ」



 市街地跡演習場には建物が乱立している。それらの位置関係を把握していなければ、手の内を知り尽くした仲間、それも曲のある強者揃いなメンバーを制する事は難しい。



 ならば、どうするか……能登は、空を駆けていた。



 決して比喩ではない。パルクール仕込みである全身のバネがうねり、地上を駆けているかのごとく、ビルの隙間を飛び越えて行く。空からならば、地上の様子など丸見えだ。



「地点38に向かって双子兄が逃走中……建物内での交戦に持ち込んで」

「ああ、任せとけ」



 その頼もしい声に、過去がまた蘇る。



(僕は、君の横で戦いたいと願ったんだよ)



 若かりし頃に憧れた背中。今それを預けられている、信頼に報いたい。だから――



「へぇ、面白そーな話してんじゃんっ」

「っ――」



 背後から襲った声に、拳銃を抜き放ち引き金を引く。



「当たるかよっ!それ、関の十八番だし奪わないでよねっ」



 そう、空を駆けていても、安全などでは決してない……壁を登ってくるバカがいるからである。



「健児ぃいっ!」

「いいねいいねっ能登さんのそういう顔、めっずらしー」




 宙を舞う影が小銃を、地を滑る影が拳銃を、お互いに向かって突きつける。




 また一つ、銃声が響いた――




 *




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