僕達の星空冒険記

巴奈々しろ

プロローグ

 

 ここは、何も無いどこか。まっくろな海の上を僕達の船が泳いでいる。

 暗がりに光る点が、ひとつ、ふたつ、みっつ。数え切れないほど、そこには星が在る。

 いつ頃から、僕らはこの海を泳いでいるのだろう。体感でおよそ二ヶ月ちょっと。

 始まりは確か、ほんのちょっと昔。ただ、きまぐれに自分の存在する意味を考えてしまったから。

 だから、僕らはここにいる。

 故郷のオトナ達は反対していた。

 『そんな必要は無い』

 『時間の無駄だ』

 『子供の戯言に付き合ってやれるほど暇では無いのだ』とかとか。

 言いたい放題言って反対してきたが、そんな事全く気にも止めなかった。

 初めっから、オトナ達に相談するつもりなんて無かったから。

 僕らの故郷は、それはとてもとても栄えていた。現代技術の極致。限界に達した進化の道。

 オトナ達は技術を極めすぎたが故に、それのみに依存するようになっていった。

 脳神経に直接、知識経験、達人のノウハウを流し込む。そうする事で、個人の才能など必要なくなった。

 人工知能に様々な処理をさせるだけで、人々は楽をした。

 人々は生活をプログラムのようにただ繰り返すだけの存在となった。

 資源としての生命の無駄なんて起きないし、争いも何も起こらない。だって、そうしようとする意思がもうないから。

 人々がこうなってしまったのは、もうかれこれ百年以上も前のお話だけど。

 脱線していた話を戻すと、僕らの惑星は、発展していたからこそ、子供だけでも宇宙に旅立つことが出来たのです。

 子供心に何か感じてしまったのかもしれません。

 あの星はもう手遅れだって。実際、凄く息苦しかったのは事実ですが。

 なにはともあれ、旅立てたことに感謝をしたい。

 僕らはこうして新しい星で、新しい出会いをすることが出来るのだから。

 新しい出会いを通して、僕らは自分を見つける。そのための旅。人生を懸けた一大プロジェクト。

 あの惑星で過ごした十四年もの歳月をも越える好奇心が、今は僕の心を染め上げていた。



 窓の向こうには数しれない沢山の星々と、その数だけの出会いがある。子供心にそう信じる二人の男女は、窓の外を眺めて感嘆の息を漏らす。

 今見えるは、初めての他惑星。

 エイリアン達は、胸に期待を膨らませ、到着を今か今かと待ちわびていた。

 その星の名は『ナインズ』。

 生物が生存すると確認がされた九番目の星である。


 

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