第105話 調査隊2
接近してくるレッサーウルフに僕とサラ、ディーネがそれぞれ放った魔法矢が突き刺さり次々と仕留めていった。
「いける、装填式の連射性能はやはり凄い」レッサーウルフを一撃で葬る威力と連射能力に僕は思わす感嘆の声をあげた。
僕が複合弓に装填した魔石は、先ほど倒したレッサーシープから取り出したものだ。
前方ではフィーネとルピナスが接近してくる敵を【風刃】で次々倒していく。フィーネとルピナスは敵の上空から攻撃を仕掛けているので敵なし状態だ。
僕達は囲まれると厄介なので、フィーネとルピナスに敵の注意を引いて貰いながら常に距離を取って戦っていたが、流石に数が多くて抜けてくる敵が増えてきた。
このままだとディーネが危険なので、素早く弓を収納しバゼラードを抜きレッサーウルフの群れに突撃した。
接近時に盾から放った【風刃】がレッサーウルフの頭を潰し、右手のバゼラードで、もう一匹、接近してきたウルフの鼻頭を切り裂いた。
同じく弓を諦めたサラも黒魔剣に切り替え、更に強力になった【風刃】で、固まっていたレッサーウルフ達を三匹同時に切り裂いた。
尚もサラの突撃は続き、斬撃と【風刃】の組み合わせで凄まじい勢いで殲滅していく。
(サリナさんは黒魔武器より、ガザフは安価な劣化品を大量に求めていると言っていたけど、本当に正しい事なのだろうか?)
サラの奮闘により、僕は戦いながらサラの動きを観察する余裕が生まれていた。
黒魔武器の性能も然る事ながら、次々と敵が殲滅されていく様は、サラの剣技に負うところが大きい。
仮に素人を育成してサラと同じくらいに強化すれば、【風刃】は近い威力を出せるようになるかもしれない。しかし、棒立ちで戦っていては、当然ながらサラと同じような立ち回りは期待できない。
(ガザフはこの強者の強さを、数で圧倒しようと本気で考えてるのかな)
僕自身も盾の【風刃】を単純に放っている訳ではない。敵の攻撃を弾いて生まれた隙だらけの状態の敵に【風刃】を追撃で放ったり、バゼラードの牽制と組み合わせたりしているのだ。
(強者にはそれに見合った強力な武器が必要だし、強い武器にはそれに見合った使い手が必要だ……そして強い敵を相手にするのにも……)
大量にいたレッサーウルフが既に半分を切った頃、「フォーン」遠くから例の【遠吠え】が聞こえてきた。
周囲にいたレッサーウルフ達が一斉に声がした方角に撤退を始めた。
ここで逃がせばまた昨日の二の舞になると、僕は慌てて後を追いかけようとしたが、サラの制止の声が響いた。
「待って! 今、私達がすべき事は少しでも強くなる事よ。それに恐ろしい方達が追っていくのが見えたわ……今の私達が追っても何の役にも立たない……邪魔になるだけよ」
サラの表情に若干の悔しさが見えるのは、決して気のせいでは無いだろう。
サラの言った恐ろしい方達というのは、恐らく調査隊の事だろうと思われた。
変異種と思われる相手の実力が分からない以上、ここは強力な編成で挑んでいるだろう調査隊に任せるのが正しいかもしれないと思い直した。
(今は、自分のやれる事をするしかない)
僕はサラの言葉に素直に従い、周囲に散乱しているレッサーウルフの死骸の処理を始める事にしたのだった。
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