第104話 調査隊1
翌日、僕はダリル鍛冶屋で弓と盾を受け取り、二層で蜂を相手に弓と盾の動作確認を行ってから三層にやって来た。
正直なところ、問題が解決するまで二層で蜂狩りをすべきかとも思ったのだが、昨日僕達はかなりの数のレッサーウルフを取り逃がした状態なのだ。
(敵対心の残ったレッサーウルフが無関係の探索者を襲って、怪我でもされたら申し訳ないからね)
昨日、ギルドに報告した事で、通達がされたらしく噴水広場に集まっている探索者の間でもウルフの大群の噂でもちきりだった。
門衛の二人にもギルドから協力要請が来ているようで、三層通過時は複数パーティーで移動するようにと注意を促していた。
「ギルドへの報告も行ったし調査隊も派遣されるんだから、私達がそんなに気にする必要ないと思うわよ? それに、ここを通過する探索者は四層以降を狩り場にする人達なのよ……私達より格上と言って良い人達の心配するなんて相手に失礼じゃない?」
サラの言う事はもっともだと思われた。
「まあ、僕の気持ちの問題だから」僕の返事を聞いて、サラは少し呆れたように肩を竦めた。
「ユーリ~、心配しなくても大丈夫そうよ、みんな集団で移動してるわ~」フィーネがふよふよ飛びながら、僕に報告してきた。
僕達は四層へのルートから少しはなれた場所から、移動する探索者の集団の様子を確認している。もし何か起こっても、この距離なら複合弓の射程範囲内なので直ぐに援護出来る。
(さすがに、危機意識はあるみたいだけど……なんだかな)
雑談しながら通過していく集団を見ていると、数を頼んでの安心感のような物を感じるので少し見ていて不安だった。
「そろそろ良いんじゃない? 特に問題もなさそうだし」元々あまり乗り気でもないサラが、退屈なのだろうちょっと不機嫌そうだ。
集団の後ろから付いていくような形で様子を見ていた僕達だったが、集団の先頭が四層入り口付近に到達したのを確認した後、引き返す事にした。
これ以上の見守りは、流石に過保護過ぎると思ったからだ。
「何かあったら、四層に逃げ込めるでしょ」
僕の前を早足で歩きながら投げやり気味に言うサラに付いていき、昨日のレッサーシープの狩り場まで移動する事にしたのだった。
◻ ◼ ◻
レッサーシープ狩りは、緊張感の無い物になっていた。二人で弓を射つだけで次々と魔物を仕留めていける。
実際、時間を取られるのは魔素吸収と血抜きぐらいで、血抜きはディーネに任せきりだ。ルピナスとフィーネには周囲の警戒をしてもらっている。
魔素吸収は、雑談の時間になっていた……
「昨日は孤児院の子達、狩りから帰っても随分慌ただしかったわよ。ギルドに誰がいつ行くのか話し合ったみたい。年少組の子供達も交代で行くみたいだからとても張り切っていたわ」
僕は昨日のギルド長のレイラさんとの話をサラに伝えた。
「シルフィー連れてって良かったわね。私もこれからはダンジョン探索に専念できそうよ、ミリア様にも許可を頂いたし」
サラは嬉しそうに見えた。元々、ダンジョンで強くなる事が目的で査察団に付いてきたらしい。
「四人はどうしてるの?」今日はここにいないルナ達の事が気になった。
「今日はウサギだけ狩って、ギルドに行くメンバーに合流するつもりみたいよ」
ルナ達がウサギ狩りを休まないのは、猪鹿亭に持っていくつもりだからだ。孤児院に余裕が出来た今も、猪鹿亭には招待されていて子供達に好評なのだ。
「どうやら来たみたいよ~」フィーネがふよふよと知らせに来てくれた。
「やはり目的は僕達みたいだね」僕がそう告げると、サラも頷いて同意した。
どうやら平和な時間は終わりのようだった。
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