第100話 ギルド長2
「なるほど、経緯ついては良く理解できました。この件は既にエルフィーデ側にも伝わっていると考えても?」
起こった出来事よりも、エルフィーデの意向を気にする所が少し気になったが、ガザフは査察団を受け入れている立場なのだから、僕には分からない気苦労があるのかもしれない。
「はい、ダンジョンに同行者したサラというエルフの女性が、直接ミリアさんに報告すると申しておりました」
ギルド長は、暫く僕達を見つめた後、
「君はミリア殿に会った事はあるのですか?」と尋ねてきた。
「はい、僕は孤児院の子供達のダンジョンでの育成を手伝っていたんですが、その時にミリアさんが様子を見に来られて、その時、お話しさせて頂きました」
「なるほど、育成か……エルフィーデが大精霊シルフのお告げを受けて、新たな若い力を育てたいと言っていたが、既に支援している孤児院で育成を始めていたのだな」
(サラが孤児院の困窮具合を見て、自助力を付ける為に始めた事だと思ってたけど……違ったのかな?)
「何か勘違いされてるみたいだけど、孤児院の困窮具合を知らないようね」
今まで、黙って聞いていたシルフィーが聞き捨てならないとばかりに、孤児院の現状を訴えた。
勿論、孤児院の現状は探索者ギルドには関係の無い事だ、しかし、孤児達の努力を政治的な思惑で測られ、腹に据えかねたようだ。
「最近、お肉食べられるようになったんだよ」キャロが嬉しそうにそう言うと
「そうか……すまない謝罪させて欲しい。どうもギルド長などという職に長く就いているせいか、物事を真っ直ぐに見れなくなってね……我々も何か支援出来れば良いのだが、残念ながら探索者ギルドは直接関係のない組織に支援するのは難しくてな」
孤児院への支援などというのは本来、ガザフ領主等が考える事だろう。
「あの! 今日からうちの子達が、臨時の手伝いとして素材処理の仕事をさせて貰えるかもしれません!」ルナが意を決したような表情でそう告げた。
僕はさっきのティムと女性職員とのやり取りを説明した。
「なるほど、探索者ギルド側にも利点がある話なら、対外的にも説明がつきやすいか……」
暫く考え込んでいた様子のギルド長は、この部屋に入ってから一度も口を聞いていなかったマリアさんに向かって、
「マリア、問題の魔物の件は、変異種である可能性は伏せて、レッサーウルフの大群が発生している旨を通達してちょうだい。三層通過時は、出来るだけ集団で行動する事もね」
マリアさんが指示を書き留め、「分かりました、ダンジョン入口の門衛にも?」
「ええ、そうね協力をおねがいして。調査隊の編成は一つ羽根以上の探索者の手配を……エルフィーデとの交渉は私が直接向かいます」
「それから、孤児院の臨時のお手伝いの件ですが、役に立つと現場が判断すれば、臨時では無く孤児院への委託作業とします。仕事量にあわせて人員は孤児院側で確保して貰い、ギルド側は作業量に対して報酬を支払う形にします。勿論、相手は子供である以上、仕事の量は孤児院側で判断して貰う事になるでしょう」
これはお互いにメリットが有るように思われた。孤児院としては、収入源が出来るだけでも有難いのだ、そして無理をする必要もない。
ギルド側も職員の数は有限である以上、今回のような対応時に当てに出来る人員は欲しいだろうからだ。
「時間を取らせてすまなかった、エルフィーデとの交渉次第で調査隊の編成はどうなるか分からないが、明日にも動き出せるだろう。貴重な情報感謝する」
話は終わり、マリアさんに促されて僕達は部屋を後にしたのだった。
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