第61話 躍進3

 地上に戻った僕は、四匹ものレッサーラビットを吊るして歩いていた事で多少、目立ってしまっていた。


 地上に出て一番最初に驚かれたのは、よく声をかけてくれる衛兵の二人だった。


「驚いたな、この前二匹、狩ってきてたのでも随分、驚かされたんだけどな!」


 と若い衛兵がそう声を掛けてきた。もう一人のこの前、僕の事を心配してくれた年配の衛兵は、


「いや、子供だと思って偉そうに説教臭い事を言ってすまなかったな、これからも都市の発展の為に頑張ってくれ」なんだか謝罪されてしまった。


「先輩、堅苦しすぎますよ! だが俺からも頼む、頑張ってくれ!」


 こんな風に都市の衛兵に言われる日が来るとは思ってもいなかったので、僕はなんだか一人前になった気分になり


「はい! 頑張ります!」つい嬉しくなって、元気に返事してしまった。


「やはり、そういう所は年相応なんだな!」「ああ、頑張ってくれ」


 二人に、なんだか笑われてしまった。


 衛兵の人達とそんな会話をしていれば、他の探索者の注意を引くのは当然の事で、なんとなく僕の事が話題に昇り始めた。


「あんな子供が一人で四匹だと、俺もウサギ狩りに転向すっかな?」


「お前、魔物とガチでやれんのかよ、やれねえだろが!」


「そうかもしれんが、四匹も狩れりゃあ俺の装備の借金も……」


「やれやれだぜ、考えが足りねえのが多すぎるぜ! ウサギにチマチマ装備削られてえのかよ! なあお前ら! その為にタワーシールドに攻撃集中させてんだろが!」


 少し離れた場所にいた盾を背負った大柄の男が大声で言い出した


「全くだぜ、どうして小物狩りが廃れて、今のやり方が主流になったのかも知らねえ、俄な新参野郎どもが増えたぜ、まったくよ!」


 パーティーメンバーらしき小柄な男が同意した。


「どだい、あんなガキが四匹も狩れるってのがおかしいんだよ! 魔法持ちかなんかじゃねえのか?」


 何処かからか、そんな声が挙がった。それに相鎚を打つように


「ケッ! 何だよ魔法とか成金探索者かよ……」と、誰かから若干羨ましそうな嫉妬混じりの声がした。


「いやいや、俺の目は誤魔化されねえぞ、装備は古びちゃいるがファングクラスの品だな」


 小柄なさっきの男がそう言った、なかなか目端の効く男のようだ


「なんだよ、装備でごり押しかよ、自慢にもならねえな」さっきの盾持ちの男が馬鹿にしたようにそう大声で言い放つた。


 辺りに笑い声が満ち、雰囲気が徐々に僕に対する非難じみた物に代わり始めた。


 年配の衛兵が「おい君、さっさとこの場を離れなさい、何だか雲行きが怪しくなってきた。変なのに難癖つけられる前にな」


 若い衛兵も「不愉快な想いををする前に離れたほうがいい」


 僕も変なのに絡まれるのは嫌だったので、皆が笑っている間に、この場を立ち去ろうとした。


 その時、僕の後ろからダンジョンを出てきた一団から、声が挙がった。


「あらあら、久し振りにガザフに来てみれば随分と探索者の質も落ちたものね! 子供が、たかだかウサギ四匹狩ったくらいで大騒ぎかしら?」


 その声を挙げた女性は、僕が今まで見た事も無いような美しい容姿をしたエルフだった。


「てっ! 【天弓】のミリア!」年配の衛兵の驚きの声が、その場に響き渡ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る