第40話 青い鳥と共に3

 僕は、二匹のレッサーラビットの血抜きの為、木に吊るした状態で休息を取っていた。


 レッサーラビットとの戦闘を思い返していた。


 気になっていたのは、一匹目の完全な不意討ちと二匹の警戒状態のレッサーラビットの反応の違いについてだった。二匹目はルピナスが消えても警戒状態は変わらず僕の接近に気がついた。


 一匹目の行動は不意討ちを受けた魔物の本能的な行動で、敵の突然の消失で攻撃衝動の行き場を無くしたのがあの放心状態とすると、二匹目は警戒状態だけが残ったという事だろうか?


 それとも魔物にも感情や知恵があって、怒りや冷静さ、そして罠のような事を考えたりするのだろうか?


 僕はそこで考えるのを止めた、答えが出るとは思えなかったのだ。


 (魔物に聞いてみる訳にもいかないしな……)


 そんな事を考えていると、ふと思った。もし魔物に人間のような知恵があったとしたら、それは恐ろしい脅威になるのではないか? 考えていて急に恐ろしくなり、その考えを押しやった。


「とにかくさっきの魔物の反応については、もっと試してみないと」


 僕はそう一人呟くと、新たな獲物を求め移動を開始する事にしたのだった。


◻ ◼ ◻


 僕は次の目的地として、二層の入り口の階段を目指し歩いた結果、途中で三匹のレッサーラビットを狩る事が出来た。


 残念ながら全て一匹でしか見つけられなかったので、気になっていた魔物の反応を試す事は出来なかったが、僕にとってはそれ以上の収穫があった。


 ルピナスの索敵能力の高さである。上空から見ているおかげと、魔物の魔素を感じとる力でもあるのか、草原の背の高い草の茂みに隠れたレッサーラビットを容易に発見するのだ。


 ゼダさんに二層にいくなら、遠方に見える木を目標にしながら移動狩りをするのが良いと教えられていた。


 僕はそれを目印に歩いているだけだったので、ルピナスが周囲を旋回しながら獲物を見つけてくれなければ、三匹も狩る事は出来なかっただろう。


 想像以上の収穫を得て、二層に降りる階段を見つけた時にはかなり時間が経っていた。


 実際に狩りの戦闘時間より、移動と血抜き待ちに時間を取られていたのだ。


 (二層に狩り場を移す時は、二匹程狩って移動しながら血抜きするのが良さそうだ)


 目的の場所にも到着したので二層に降りて見る事も可能だったが、五匹も狩れたので十分だと考え、帰る事にした。


「ルピナス、少し早いけど帰ろうか!」僕は、頭の上で寛いでいたルピナスに声をかけた。


「ピッ!」と鳴いて、ルピナスは僕に先行して飛んで行って「ピピッ!」こっち! とでも謂うように上空で待機している。


「入り口の方角、分かるの?」


 僕は木を目印にしながらここまでやって来た。しかし、一層入り口からおよそ北の方角に見える何本かの木を、目標に歩けば到着するというかなり大雑把な道行きだった。


 実際は木がダンジョン入り口から二層までの直線ルートに生えている訳ではないので、かなり蛇行して時間が余計にかかったのだ。


 それでも目印の無い草原エリアで方角を見失えば帰り道さえ分からなくなる。そんな事態になるよりは、多少の遠回りなど問題にならない。


「二層に向かう時は、特にそんな素振りも無かったのに……帰る方角だけ分かるって事なのかな?」


 僕は楽しそうに飛んで行くルピナスを見ながら、特に極端な方角に飛んでいるようには思えなかったので、信じてついていく事にしたのだった。

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