第29話 魔法剣

「魔法陣を刻印する技術は探索者ギルドが握っている、要は都市ガザフを運営する指導者層が独占してるって事さ」

 

 「もしかして魔道具とかも、領営工房が製造を?」


 僕はラナさんが普段使っている洗浄の魔道具や普及品のアイテムポーチの事を考えていた。


「ああ、そういった品は探索者以外にも売れるからな、利益が大きい。だから新市街の大口の街商人で少しでも領営工房と関わる可能性のある者は、ギルドを介さずの素材取引を極力行わない。禁止されている訳じゃないが、ギルドを敵に回して良いことなんて何もない事がわかっているからだ」


 僕は行商人のコナさんの言っていた、ギルドがこの都市の素材流通を握っていて、とても潤っていると言っていた事を思い出した。職員等に監視させなくても自然にギルドが中心に経済が回る仕組みが出来ているのだ。


「そういう流れに拍車をかけそうな物が数年前に遺跡から発掘されてな、都市は定期的に階層更新の遠征軍を派遣している。そいつらが、発見した遺跡から発掘された十本の武器、ミスリル製のその武器は魔石を装填して消費する事で魔法剣となる」


 僕は驚いた、魔法は決定力になるとじいちゃんに教わった、その魔法を常時武器に乗せられれば凄い威力になるんじゃないかと。


「その劣化量産品の技術がエルフィーデ女王国の遺跡研究所からガザフにもたらされたらしい。ミスリル程の魔力伝導率はないが、三十層で出土する黒魔鉄鉱を使った魔法陣の威力を抑えたもので、既に領営工房での製造が開始されているそうだ」


 エルフィーデ女王国とは、エルフの女王を戴く、エルフ、ドワーフや獣人族の国だそうで、人口は少ないが非常に高度な技術力を持つらしい。


 ダンジョンの利権を人間種に譲るかわりに遺跡からの発掘物の所有権と独占研究を主張したが、研究成果の劣化品を人間種に公開しており、それがガザフに多くの利益をもたらしている。


「その劣化魔法剣の購入にはギルドへの貢献度という物が必要で基準等は公開されないらしい。素材の価値は常に流動的な為に、素材の数量でポイント等々を設ければ却って不公平や不明瞭なものになる。とギルドは説明しているが、下手に数量など示せば数を満たせばそれ以降納品しない探索者が出るのを懸念してると言われているがな。公開しなけりゃ、魔法剣が購入したい者は取り敢えずギルド納品するだろうからな」


(今の僕には魔法剣なんて遠い世界の話しだけど……憧れるなっていうのが無理だよね!)


「すまねえ! 長々と話し込んじまった! メンテナンスは夕方には終わるだろうから、それ以降なら何時でも引き取りに来てくれ」


 僕も色々と知らなかった事を聞けたので、感謝のお礼をして鍛冶屋を後にした。

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