第12話 探索者ギルド2
刻印の作業が終わって安心している僕に、次は鑑定の作業が待っていた。
僕にとって、これからの人生を左右するかもしれないのだ。
少し大袈裟に聞こえるかもしれないが、錬金術に向いた属性適性があれば、じいちゃんの言ってたように、ダンジョン三層近辺で地道にお金を貯めて錬金魔法を購入し、錬金術師としてやっていく道もあるのだ。
僕がそんなささやかな人生設計に思いを馳せていると……マリアさんが魔法陣に手を置き、じっとこちらを見ていた。
「すいません……すぐいきます」
僕は慌ててマリアさんの側の鑑定台の前に立った。
鑑定台には、さっきの物より小さい水晶球が台座と一体に成っていて半円の玉のようになっていた。
(こっちは台座と繋がってるのかな? これも遺跡の技術なのかな?)
先ほどの刻印作業と同じく手をかざす。徐々に全身を魔力が循環しているのがわかる。暫くして、魔力の循環が止み半円の水晶球の光が消えた。
台座の上にはガラスのような板が埋め込まれていて、文字のような物が表示されている。
マリアさんがいつの間にか側にいて手のひらに載るくらいの大きさで四角くて薄い板を差し出してきた。
「この[転写板]を魔法陣の絵柄を上にして、そこのガラスのような所に置き手を添えていて下さい」
マリアさんは元の位置に戻り、今度は違う魔法陣に手をあてている。半円の水晶球が輝き、手のひらに魔力を感じ暫くすると光が消えた。
「その板を手にとって、魔法陣の絵柄に手を翳して下さい」僕は言われた通りして板に手を翳した。
すると板に文字が表示された。
「ユーリさんの情報が表示されると思います。本人の魔力が登録されていますので、他人が表示させる事は出来ません。その板は今後、ギルド内での身分証となります。またギルドとの取引の際は提示が必要になります。今回は新規登録になりますので無料ですが……何らかの理由で再発行をする場合は銀貨五枚を申し受けます」
この小さな金属板が結構な金額なのに驚く、どうやら貴重金属らしい。
「……あと、注意頂きたいのは盗難や紛失の場合です。ギルド内での身分詐称に使用される可能性が有ります。その際は直ぐにギルドへ届けを提出して頂く必要があります。もし報告を怠って何らかのトラブルが発生した場合、責任が本人に帰属する可能性もございますからご注意を……ご質問はございますか?」
マリアさんは一気に説明を終えた。相変わらずの無表情だった。
僕は、説明中ひたすら頷いていたが「しっ、質問はごさいません」と答えるのがやっとだった。
◻ ◼ ◻
僕は改めて、情報を表示してみた。僕の筆跡で名前、年齢、性別、出身地……右上には、今日の日付けが読み取れた。
(これ日付けの他は僕が登録用紙に書いた文字だ!凄い技術だな?……えっ⁉)
その下の種族を見て驚いた「ハーフエルフ! 僕、確かに細身だけど耳とか普通に人間のだし、どうして?」
僕は予期しない出来事に驚いてしまい……そして更に、土の[精霊魔法]契約、適性……[土属性]、[小石の精霊の加護]と書かれていた。
「あのマリアさん……表示された鑑定内容に誤りとかはないですよね?」
僕は、色々な情報で驚いてしまい、誰かに確認せずにはいられなかった。
「どういった事でしょう? 鑑定に誤りが有ったという報告は受けた事はございませんね……それから、鑑定の内容は本人の承諾が無ければ、ギルド側も勝手に見ることは出来ません」
マリアさんの顔は少し満足そうだ……無表情だけど……
僕は悩んでしまった。精霊魔法は主に、エルフ、ドワーフや獣人族も使う魔法だ。
精霊にお願いして魔法を行使してもらう都合上、精霊との親和性が高いエルフが得意らしい。
それ故、エルフは森の妖精と呼ばれる事もあるそうだ。
多種族が混在する、この都市なら使い手はいるだろうし珍しい魔法ではないだろう。
だから精霊魔法の事はかまわない、だけど、じいちゃんに精霊石の事は秘密にするように言われている。
どうも[小石の精霊の加護]というのが気になった……
だから本人の承諾が無ければ鑑定結果を勝手に見ない
というギルドの姿勢に信頼を感じ……相談してみる事にした。
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