第14話
私のママが死んだ
一晩中泣き喚いた
家族はもう誰もいない
当時、5歳だった私に働き口などあるはずもない
孤独と恐怖に苛まれ、私は布団に潜り大声で泣いた
泣き疲れて眠り、起きた時にその人はいた
「セツナ・・・俺はおまえのにいちゃんだ。」
最初は衝撃的だった
私は平民出身でお偉いさんの息子が急に言った言葉が理解できなかった
どうやら、私の父はお偉いさんに縁のある人みたいでその息子さんと私の関係は、はとこ・・・らしい
私は急に連れ出されて部屋を与えられた
とても一人で使うとは思えない広い部屋だ
広い空間で一人ぼっちが嫌だと泣き喚くと兄ちゃは、その我儘を聞いてくれた
私は兄ちゃと同じ部屋になり、時には絵本を世でくれたり、おままごとをしてくれたりした
私が夜泣きしてしまった時だって一晩かけて慰めてくれた
その次の日は、兄ちゃが眠そうにしていて悪いなと思い泣きたくても我慢することを覚えた
楽しかった
兄ちゃと一緒にいることが
時間が経つにつれて、私はどんどん兄ちゃのことが好きになる
私は大きくなり10歳になると兄ちゃに部屋を別にするよう頼んだ
もう兄ちゃには、迷惑かけないようにと
兄ちゃは嬉しそうではあったが少し寂しそうに了承してくれた
・・・・それから数ヶ月後、世界が魔獣で溢れるようになった日
兄さんは帰って来なくなった
私は時間があれば、エントランスのソファーに座り、兄さんの帰りをずっと待つ
いつまで経っても帰ってこない兄さん
だけど、私は兄さんを信じてずっと待つ
それから、私はどんどん大きくなっていった
13歳になる頃、婚約者を当主様・・・の父上に決められた
私は拾ってもらった手前、断ることはできなかったため了承した
それから半年後
従者を見繕われる
兄さんとシズカのような関係に憧れてはいたが、話し相手にはなってくれなかった
ずっと監視するようについてきた
いくら周りが変わろうと私はまだ兄さんの帰りを待つ
14歳になる頃、私に武術訓練を義務付けられる
父上が乱入してくるようになった
このままだと、お前は当主になれないといって何度も何度も殴られる
痛いと叫んでもやめない
不思議と痣はつかなかったが、訓練が終わると痛みで悶え苦しむことになる
辛くてもキツくても
それでも、私は兄さんを待った
15歳になると、婚約者が顔を出してきた
父上は一言、子をなせと
私は絶望に染まった
お兄ちゃんお兄ちゃんとずっと泣き喚いた
すると、婚約者が私の寝室に来て首を絞めた
「お前は捨てられたんだよ」
その一言で私の中の何かは崩れ落ちた
なん・・・で?
私は全てを失った
だけど、私に相変わらずの地獄が降りかかる
いつかまた迎えに来てくれると信じて止まなかったその心はなくなり
何も考えずに心を完全に殺した
強い自分を演じた
手術で体をいじくりまわされたり、訓練で殴られたり、犯されたり
私は、もう兄さんを待たなくなった
その数ヶ月後、兄さんが帰ってくるらしい
もう遅いよ。なんで、今更
父上からは愛する人を殺した復讐のために来ると教えられた
私は、兄さんにとっては愛する者ではなかったのかと泣きそうにもなりながら、その愛する者が誰なのかを聞く
「ん?従者のシズカらしいぞ」
父上のその言葉を聞き、私の体は崩れ落ちた
あの人が兄さんを奪ったのか
私は、楽しかった日々などはとっくに忘れて怒りで心を燃やした
第一塔で兄さんを待った
すると、目撃情報から15分で私のところまで来た
成長した兄さんは、とてもかっこよかった
汚された自分を見られたくないほどに眩しかった
私は、兄さんと戦い負けた
そこで、私の記憶は途切れる
私は未来の夢を見た
こんな話誰も信じてくれないだろう
だけど、私ははっきりと思い出した
兄さんが帰ってこないことによるとても強い孤独感と寂しさ
それが私に記憶を呼び覚ましたようだ
私は今度こそ兄さんに絶対捨てられない
「兄さん・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます