笑うピエロは壊れてる

ただの枝豆

第1話

 データ001(飲み屋での記録)


「なぁ?『笑うピエロ』って知ってるか?」

「なんだそれ?サーカスか?」


 賑わう居酒屋でガタイのいい40代の男達が銃を背中にぶら下げて酒を飲んでいた


「違ぇよ。こんな世界になってからサーカスなんてもう無くなっちまってるよ」

「まぁ、そりゃあそうか。で?『笑うピエロ』って何なんだよ」

「ハンターのパーティ名だ」


 話を聞いた男は酒に酔い真っ赤に染まっていた顔をスッと元の状態に戻す


「酒の席ぐらい仕事のことは忘れさせてくれ」

「いやいや、そんなつまらねぇ話じゃねぇよ」


 そう言って話し手の男は、聞き手の男の背中をバンバンと叩く


「『笑うピエロ』っていうパーティ名はな、戦闘の仕方からきたんだ」

「ほー。そりゃまた、強いのか?」

「あぁ、化け物だぜ。どんな窮地でもずっと笑顔を浮かべてやがって、人の力じゃ到底できないような動きを延々とするんだ。化け物級の反射神経。化け物級のエイム力、化け物級の行動範囲、化け物級の硬さ、化け物級の剣捌き、化け物級の頭脳」

「そりゃあ、すげぇ」


 聞き手の男はつまらなそうに酒をグラスに注ぎ、口に酒を含ませる


「ああ、だかな。パーティ全員死んだらしい」

「ぶフゥゥ」


 聞き手の男は酒を吹き出すが、話しての男はわかってましたという風にその酒を避ける


「は、は?勇者とまで言われるアンタが化け物っていう奴がどうやって死ぬって言うんだよ」

「ホロ事件を覚えているか?」

「あ、ああ」

「あの主犯はそのリーダーだ。一人で五万の兵を皆殺しにして、当主諸共爆死したらしい」

「は、はぁ」


 聞き手の男は、話についていけなさそうにため息混じりの声を出す


「ああ、勿体ねぇよなぁ。今度こそ、この地獄が終わると思ったのによ」

「まぁ、化け物でも所詮は生き物だし、死ぬのが摂理だな」



「化け物にしては滅茶苦茶くだらねぇ最期だったがな」

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