音が消えた日
ねるねるねこ
第1話 佳奈の場合
世界から音が消えた。…いや正確には急に聞こえなくなった。世界中全ての人が。みんな昨日までは聞こえていたんだ。
だから今日、私の通う学校では、遅刻する人が多かった。現に私の担任の相良先生だって遅刻したんだ。
最初の異変に気づいたのは、家の中だ。外の車の走る音や、目覚ましの音、自分の歩く音が全く聞こえなかったんだ。目覚ましだって…鳴らなかったし。
「席について」
相良先生が入ってきて黒板に書いた。どことなくいらついてる感じがする。相良先生だけじゃない、みんな戸惑ってるんだ。
「これから、出席をとります」
先生は、そう黒板に書くと、一人一人その場で目視で確認していった。出欠はすぐにとりおわった。私のクラスの半分以上が、いないから。
「今日の1限は自習にします。用務員の人が各クラス見てまわるから、何かあったら筆談とかで知らせて下さい。」
先生はそう書き残すと、足早に教室を出ていった。
もちろんこんな状況で真面目に勉強する子なんていない。皆スマホを取り出して、チャットや、ニュースを見ている。私もTwitterを開いてみる
「音聞こえない
東武東上線遅延
JR 運休… 」
いつもだったら、どこか他人事に見えるトレンドが急に自分の身に迫ってくるような感じがして、気がついたらスマホを握る手が汗ばんでいた。
〔委員長:だれか!ほけんのせんせい連れてきて!〕
クラスチャットに委員長からのメッセージがきた。ふと顔をあげると前の席で人だかりが出来ている。
え_______。松中さんが…!
立ち上がって様子を見ると、1番前の席に座っていた松中さんが倒れている。呆気にとられていると、剣道部の蒼くんが素早く歩み寄り、チャットに
〔俺が保健室連れてく〕
と送り、そのまま松中さんを抱き抱え教室を出ていった。
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