第32話 魅力4 読書の効果を徐々に発揮しつつある少女

 一之瀬みのりという女子中学生は今日も、何かの本を読んでいる。

 そりゃあ、年季の違うわしほども読んでないかもしれんけど、それはしゃあない。これからどんどん、読んでいくであろう。


 問題は、その「読書」したことによる「効果」なのです。

 要は、読書して得たこと、それは知識だけでなく、さまざまな側面から見た能力ということになるのであるけれども、その点については、どうかというのが、今回の論点であります。

 それについては、既に、効果を発揮していると言えましょう。

 もちろんそことて、十二分とは、言えないかもしれない。だが、この2月末からの彼女の「成長」をみていれば、陽に陰に、それは現れていることが明白であります。


 たとえば、いつぞやの「校則違反」か否かの判定を、彼女はきちんと校則というあおぞら中学校の生徒相手に、しかもおおむね校内においてのみ、さらには卒業もしくは転校することによってもはや通用しえなくなるとはいえ、日本国内の法令に基づいて作られた、一種の「法」を駆使して、仲間たちを守るという行動に出ていました。

 これはまさに、幅広い読書をしてきたからこそなしうる行動であることは、ここで改めて申すまでもないでしょう。


 他にも、これは前に書いたことと重なりますが、彼女はなんと、プリキュアという世にもとびぬけた能力を持った状態に「変身」しているにもかかわらず、ある地点を通過する列車の通過時刻を判断するために、時刻表と思しき、紙媒体の書籍を用いて判断しています。

 かつてのプロ野球のスカウトは、全国を飛び回って優秀な選手を探すにあたり、当時輸送の主力だった鐡道を駆使して全国を行き来していました。どうしてものときは飛行機も使わないわけではない。だがそれには、上司の特別許可が必要だったと言われています。これは、紀行作家の宮脇俊三氏がどこかで書かれていましたね。ちょうど昭和で30年代初頭、1950年代半ばのプロ野球のスカウトを描いた「あなた買います」という映画においては、主人公のスカウト、中井貴一氏の御尊父なのですが、この方が飛行機に乗って恐らくは東京から四国の高知へと飛ぶシーンが出てきます。他にも、大阪にあるライバルチーム、それこそ、当時の阪神と南海を足して2で割ったようなチームですが、こちらのスカウトや社長が飛行機から現地にやってくるシーンもあります。後者はともかく、前者については、余程の許可が下りるような事情のある場面だというわけですよ、当時としては。今ならさすがに、飛行機じゃなく列車で行くなどと言われたら、ちょっと、待ってくれって話にもなる。特に余りの長距離にもなれば、ね。


 さて、わしの娘(=隠し子)のみのりんがなぜ、プリキュアになっているとはいえ、あの場面で紙媒体の時刻表というローテクを用いたのか?

 これは言うまでもなく、そういった書籍も普段読んでどのように活用すればいいのかがわかっているからこそ、出来たわけね。プリキュアになって突如、大昔のプロ野球のスカウトや鉄道少年として一世を風靡した私のようなプロ見習?よろしき40年ほど前の中学生なんかと同等の力を持ち得たってわけでは、ないはずよ。


 それから、これは映画でのお話だが、彼女は、雪の王国のシャロン王女の戴冠式に招かれて、その様子のおかしさを察しとっています。これも、単に物語やそこらだけでなく、実際は、かなり広い分野の本を読んでいるからこそ読み取れる効果だと思われますな。

 文化祭のときの回、それこそ、私の誕生日の朝の放映だったあの場面についても、トロピカる部の部室を使ったメイクの歴史についての模造紙に書かれた文章、あれを「起案」したのは、間違いなく、彼女であることは、容易に想像がつく。

 このあたりからも、彼女の構成能力・企画能力が、読書によって鍛えられており、それが効果を発揮している場面であると言えましょう。もちろん、メイクの「実務」については、松田聖子さん母娘の娘と言ってもよろしかろう、涼村さんごちゃんの独壇場でしょうけど、それはまた、別の話。

 しかし、文化祭で模造紙に文字を書いていくというのも、これ、よくよく考えてみれば、昔ながらの「ローテク」な手法ですよね、今となっては。


 こうしてよくよく見て参りますとね、我らのみのりん、わしにとっては娘(=隠し子)なのだけど(そういうことにしといてや~)、確かに、これまで出会っていなかった、同世代とはいえ、異質な少女たちと、あるいは、敵キャラも含めて、そういう「他者」との関連の中で、今、急速な「成長」を遂げているというわけですな。

 これを「魅力」というのはいささか違うような気も、しないではないかと、私は思っておったのですけど、一之瀬みのりという少女を今回のプリキュアの主人公として、彼女を主体として分析していきよりますとですな、やっぱり、これは、成長中のみのりんそのものの「魅力」ではないのかと、私には思えてならなくなりました。

 まあ、それを「親馬鹿」と言われれば、確かに、そのとおりだと思いまっせ。

 間違いなく、わしの、親馬鹿です。


 というわけでな、わし、人の親になったつもりで物事を見ることはこれまでしたことなかったねんけど、みのりんのおかげで、それが、出来るようになった。

 子の成長は親の成長ともいうけど、それも、十二分に実感できよります。


 書く言う(かくいう、と書こうとしたら、漢字が出てきたので、あえて、こう表現した)私のこの一連の文章にしても、そやで。

 私の長年の読書による「効果」やで!

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