第22話 紙媒体の可能性と、その活用の鮮やかさ

 昨日10月3日(日)のプリキュア最新作「トラブル列車! あすかの修学旅行!」から、このテーマにおいて大いに論じねばならぬ論点が出ました。

 まずは、私がこれより論じる論点の事実関係を簡潔に示します。


 あおぞら中学校3年生の修学旅行は、イベント用の寝台列車。食堂車とロビーカーを1両にまとめた車両もある(この点で現実的ではないのだが、それは別の話)。その列車の沿線で後回しの女王の手先のヌメリーが現れそうだと知った1・2年生のプリキュアたちが、追っかける。まあその、よく見るとルーズソックスのおきゃん人魚は置いといて(喝だ!~わっはっは)、問題は、他の3人。

 キュアサマー、キュアコーラル、それに加えてキュアパパイアのみのりん。

 彼女たちは、変身した、すなわち、身体能力が格段というレベルでは済まないほどの力を得て、先行する列車を追いかける。

 その点の現実離れについては、ここでは論じません。

 さて、そんな状況下にも関わらず、その列車の位置を確認するために、キュアパパイアが取った方法が何なのかというと、なんと、紙媒体の時刻表を繰って、現時点におけるその位置を判断するというもの。

 格段にアップした彼女たちの身体能力と、現代社会で少しずつ廃れつつある紙媒体での列車位置の確認。

 このギャップは確かに、鮮やかに描かれていました。まあ、ただでさえもそれはあまりに違和感のある組合せですから、見る側がなるほどとびっくりもしましょうよ。


 今どき、列車の時刻表なんて紙媒体がなくても十二分に移動は可能。ある程度以上の街中に住んでおれば、通勤や近場への移動なら、ネットダイヤになっているからそんなものをいちいち調べなくても駅に行けば大丈夫。というか、長距離移動の新幹線自体がそんな感じになっとるのが現状やないかい。

 そして、のっぴきならずに何かで調べねばとなったときには、最低パソコン、タブレット、いやいや、スマホを使ってネットに接続すれば、もう、それで十分調べられます。まあその、紙媒体特有の「一覧性」というものにはかなり欠けるが、テメエの移動についてだけ調べればいいというのであれば、そんなもの、それで十分。何も時刻表読取コンテストをするわけでもなければ、時刻表を文献として調査するわけでもないのであるから、そんな大げさなこと、するまでもない。

 そこへ来て、プリキュアとやらになって(苦笑)身体能力が極限さえも超えたところまでついている彼女たちが列車を追いかけてやらねーだなる敵を倒すべく移動するにあたって「敵の位置」を確認したのが、スマホや特別なアイテムなどではなく、紙媒体の「時刻表」であったということに、この回の製作者の何らかの意図が込められているとも、私には思われます。


 かくして活躍したのは、我らのみのりん。キュアパパイアである!


 彼女を男子中学生に置き換えたら、まさに、中学時代の私そのものだよ。まあ、当時私は眼鏡をかけていなかったけどね。

 当時はもちろん、パソコンもインターネットもなかった。

 ただ私の場合は、なんせ、鉄道趣味の世界ではかなり特殊な経験をしているというのもありまして、まあ、そこがプリキュアのみのりんと同じような立ち位置と言えばそうであって、当時の岡山鉄道管理局に行って車両の運用表や、1時間目、あるいは二分目のダイヤグラムをもらって、その読み方まで職員の方に教わっていたという状況でした。

 二分目ダイヤというのは、2分ごとに縦軸の栓が入れられていて、その列車の発着が秒単位(当時は15秒もしくは10秒単位)で記されているのよ。まあ、現実には徐行区間などもあったりするから、駅間ともなれば、必ずその位置で見られるとまではいかないけど、ある程度の予測はつけられなくもない。


 そう言われてみれば、やらねーだ一派のヌメリーさん(おぬめりさん)が出てきたのは、山の中の沿線。携帯電話やスマホの電波が、通りにくいところという設定になっておりました。

 となれば、みのりんが、というかキュアパパイアが時刻表というものの存在を知っていることは言うに及ばず、読み方についても、昔の私ほどではないにしても(プリキュアになるぐらいだから、その時点でそれを超えているのかも~汗汗)、すでにきちんと理解しているという解釈が、成立つ。


 実際、この回で描かれた列車や光景というのが、プリキュアを観る主力層の親どころか、祖父母に近い年代のもの。

 やらねーだに取りつかれたディーゼル機関車にしても、あれは国鉄のDD13型機関車。色も、それがモデルであることが明らか。本来は入換用の機関車なのだが、これに連なる貨車はというと、有蓋貨車。モデルはもちろん、ボギーではなく二軸車のワム80000を代表とされる車両。今どきこんな貨車は、余程のことがない限り本線では走らせられないです。他の電車などと同じペースで走らせられないからさ。

 さて、問題はその貨車。うす緑、かつて特急「つばめ」「はと」が東海道電化時に塗り替えられた、いわゆる青大将色の色にかなり近い、旧国鉄のコンテナをほうふつさせる色。そういえば、最初の貨物特急「たから」のコンテナも、こんな色だったはずや。あとで調べてみよう。


 いずれにせよ、今回描かれた光景というのは、まったくもっていかにも「昭和」という空気の中。

 そこにプリキュアが、敵のおぬめりさんが入って行って、どういう戦いをするか。まあそこは私の領域ではないからいいけど、おぬめりさんが最後に言った言葉を、御紹介いたす。

「狭い列車よりも、船だわね」

 ま、こんな感じでしたな。なぜか銀河鉄道999の車掌さんに似た制服で出現した彼女(これも昭和だな~苦笑)、列車がやたらに窮屈そうにしておいででしたな。

 しかし、彼女の言う言葉というのは、この手の話をしていく上で、まさに、基本中の基本となる話なのね。ま、それはまた別の話じゃ。


 こうしてみると、紙媒体というものの可能性というものをわずか30分、正味20分の中でうまく描き込んでいるプリキュア制作者の皆さんに、大あっぱれですな。

 あと、わしの娘(=隠し子)のみのりんにも、大あっぱれだ!


 こうしてみると、みのりんは、頭でっかちだけの少女からかなり脱却できつつあるように思う私は、やっぱり、重度の親馬鹿かな(苦笑)?

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