異世界転生?そんな事は信じないからな〜信じないまま異世界生活を送る、不思議な男の物語〜
月影
これは夢だ
ちがう、違う。これは夢だ。夢に決まってる。
祈る様に俺はゴールがないところ目指して走りながら、そう考えた。そう考えたかった。
俺は気付いたら見知らぬところにいた。辺りにはただ原っぱがあるだけだ。
俺は……一体何処にいる?ここは何処だ。
そう考えながら、とにかく歩き回ってみた。きっと、誰かがいるだろう。
しかし、誰もいない。いる気配すらない。
俺は段々焦ってきた。頼む、頼むから。誰かパニック状態の俺を助けてくれ。
そして今にいるという訳だ。
こんな事はあり得ない。我が家は何処だ。
これは夢だ。そうに決まってる。はやく、早くさめてくれ--。
『夢ではない。現実だ』
何処からか、声が聞こえる。
一体誰だ?いや、そんな事はどうでも良い。誰かいるなら、早く助けてくれ。此処が何処だか教えてくれ。
『お前は、異世界転生したんだ』
異世界転生?俺は死んだという訳か?
『そうだ。お前は、事故で死んでしまったんだ』
声は俺の心を読み取る様に、そう言った。
何を言っているんだ、こいつは。俺は死んだ覚えなんてない。やはり、これはただの悪い夢なのだ。そう信じる。
『だから、これは夢などではない。現実なのだ』
「ふざけるな。こんな事はあり得ないだろ?なんで、そんな事が分かるんだ?」
『お前の一生を見て来たからだ』
俺の一生?完全にふざけてやがる。俺を夢の中でからかっているのか?
『此処は異世界なのだ。一度信じてみろ』
いやだ。俺は死なないんだ。死にたくなかったんだ。早く、この夢からさめて我が家に帰りたい。
『信じないと、お前のパニックは終わらないぞ』
そんな事、お前が決める事じゃない。勝手に決めるな。
『わかった。説明しよう。私がお前を異世界転生させたんだ。この世界を救ってもらうためにな』
俺を自ら異世界転生させた?どういう事だ。
「お前は、一体何者なんだ?」
『私はお前の世界でいう、神様という存在だ』
神様?ますます信じれない。神様なんてこの世にいないのだ。いる訳がないのだ。
『それが本当なのだ。私は何でも出来る、世界を操れる存在だ』
「いい加減、からかうのはやめてくれ。本当は神様じゃないんだろ。正体を表せ」
『では、お前がいるこの世界は、どうも変だと思わないのか?』
そりゃあ誰にでも思うだろう。でも、これは夢なのだ。こいつは、夢の中なら俺をからかえると思っているのだろう。
『違うな。私は世界を操り、唯一の頼りになるお前をこの世界に呼んだのだ』
「じゃあ、お前が勝手に俺をこの世界に呼んだという訳か?」
『っ⁉︎ち、違う。そうじゃない。私はお前を不幸にしたくはないのだ』
じゃあ、さっさと俺を元の世界に戻せ。一刻も早く我が家に戻せ。
俺は段々とイラついてきた。こいつ、やっぱり俺をからかっているんだな?
『それは出来ないな。お前を元の世界には戻せない』
どうしてだ。神の癖に。何でも出来るって言っただろ。
『だったらこうしよう。この世界を救ってくれたら、お前を我が家に返してやる。それで良いだろう?』
頭がおかしくなりそうだ。これは夢なのに。俺はどうしてこんなにも焦っているんだ?
『どうやら、まだ信じていない様だな。困ったものだ』
「いい加減にしろ!頼むから一人にしてくれよ!」
俺はついに叫び、全力で走った。
走って走って、転びそうになっても走り続けた。
しかし、俺は止まってしまった。
川だ。深くでかい川が、俺の目の前にある。
俺は決心した。やっと、この夢からさめれる。
俺は足を後ろにやった。
『っ!お、おいっ……待て……っ!』
慌てて止めようとする声も俺の耳には届かない。
俺は川へと身を投げた--。
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