第32話 セナ達の成長
ミーナが来た事で私は後回しにしていた【魔石吸収】を行う事にした。
「ミーナ、一個だけ吸収してみて」
今現在セナは目の前に、マナは庭にそしてヤンは誰か訪ねて来た時の為に自警団の仮宿泊所にいる。
私の確認したい事は2つあり、ミーナの【魔石吸収】で本当にパーティーメンバーにも経験値が共有されるのかと、離れた場所に居てもパーティーであれば経験値が共有されるのかという2点だった。
「うん、わかった」
ミーナが私が渡した魔石を一個【魔石吸収】で取り込んだ。
「ミーナさん尻尾が立って膨らんでます……あれ魔石が消えましたね……尻尾が元に戻りました」
セナはミーナが魔石を使って何をしようとしているのか知らないので、ミーナの尻尾の膨らみが気になったようだ。
私は早速セナを【鑑定】してみた。
《レベル》1/30 NEXT 魔石(小)1/10
思った通り、セナの魔石のカウントが1上がっている。私は扉から外に出てヤンと庭で草花を観察していたマナを【鑑定】してみたが、セナと同じくカウントが1増加していた。
「同じ場所に居なくても問題ないようね。ミーナ次は10個ほど【魔石吸収】してみて」
離れた場所にいたヤンとマナにも【魔石吸収】の効果が及ぶ事を確認した私は、セナ達のレベルが一つ上がる数の吸収をミーナに指示した。
「【魔石吸収】? さっき魔石が消えたのはそれが原因ですか?」
セナはミーナの尻尾が立ったり、倒れたりするのを眺めながら尋ねてきた。
私はセナにミーナの特殊な成長の方法について今までの経緯を含めて説明した。
「魔石を吸収する事で強くなれるという事ですか……それが保護された私達にも恩恵として与えられるという事ですね」
目の前でミーナが次々と魔石を吸収している姿を見ていても、今の私の説明を証明にはならない。【鑑定】を使えるのは私だけなので目に見える形で説明出来ないのがもどかしかった。
「まあ口で説明されても信用するのは難しいよね」
セナが考えを整理しているのか黙り込んでしまったのも無理はなかった。
「いえ、信用はしています。既に色々と凄い力を見せられていますので。それに既に力は与えていただいています……これを見てください」
そう言うとセナは手のひらの上に水の玉を作り出した。その丸い水で出来た玉はぐるぐると内部で水が丸く循環して絶えず動いているようだ。
「これは水の魔法で使われる修行方法なのです。魔力制御と純粋な魔力向上の効果があるので私も5歳になった頃から修行を始めました……そして今日突然、この大きさになりました。……昨日まではこのくらいが限界でした」
そう言って水の玉のサイズを小さくするセナ。ひとまわりほど小さくなったその玉はおよそ3分の2程のサイズだろうか。
「この大きさになるまで5年ほどかかりました。それが先ほど試してみると先ほどの大きさに成長していました。草原で狩りをしていた時から不思議に思っていたのです。宿に戻った時に聞いて見ましたがヤンも同じ感想を持っていたようです……私達は突然、強くなったと」
それはつまりクランに加入した事で、ミーナのような基礎能力の向上が見られたという事かもしれない。もしかしたらパーティーに加入した時かもしれないが……
「ビスタさんの説明をお聞きして納得出来ました。それに……」
セナの水の玉がまた少し大きくなったようだ。これの原因はすぐに分かった。
「きゅうしゅう、おわったよ!」
私達が話し込んでいる間も熱心に【魔石吸収】を行っていたミーナが元気に教えてくれた。
「ありがと、ミーナ」
ミーナにお礼を言って、改めてセナを【鑑定】すると――
《レベル》2/30 NEXT 魔石(小)1/20
レベルが一つ上がっていたのだ。
「ビスタさんに保護されると、3年程度の修行と同等の魔力成長があり、ミーナさんの成長の恩恵を受けて半年、いえ1年の修行と同等の成長があるのかもしれません……もちろん個人差や実践経験豊富な者とは成長の度合いも違ってくると思いますが……」
最大レベルが30でゲームより低いと思っていたけど、もし1年でレベル1程度の成長が普通の世界だとすると、どれだけ頑張っても体力的なピークの年齢で最大レベル30というのは妥当な数値に思えた。
(でも魔族に侵攻を受けているんだよね? こんなシステムで本当に勝てるの?)
セナのおかげで私は色々と分かって満足していたが、この国の行く末を思うと心配になってくるのだった。
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