第三章 忘却と失念
第十五話 序・三
人を憎いと思ったことはなかった。「淋しい」も「羨ましい」も「狡い」も全部ぜんぶ「わたし」の中にはなくて、ただ「わたし」は空っぽなだけだった。「彼女」がその一つひとつを「わたし」に教える。そうして「わたし」は知った。
世界は「わたし」を愛してくれなかった!
「わたし」だけが世界に愛されなかった!
不条理は精算されなければならない。不平等は正されなければならない。不誠実は罰せられなければならない。
誰もそれを成さないのなら「わたし」が成すほかはない。「わたし」の双眸は光を得た。「わたし」の世界には心が満ちた。嘆きを聞き届けられるまで「わたし」は振り上げたこの拳を決して降ろすことはないだろう。
それが他ならない「彼女」の望みであるのなら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます