第三話 位階
そんな
自らを天才と称した
それはつまり、年齢が上がると同時に新年が始まるということになり、文輝はこの春、二十二になった。東方の暦には疎い文輝が何とか聞き出した情報が間違っていなければ、子公もまた二十二になる。
ただ、
子公の故国では今の時分が六月にあたるという。暦の違いは基準とした自然が異なることに由来していた。
そんな西白国の暦は旧時代的だと子公は呆れていた。
そう言えば「あの日」は秋なのに空が晴れていたな、と不意に思い出す。
それでも、文輝は物心がついてからというもの、上着を拵えたことがない。
武芸を磨く為に毎朝、一人で調錬場で槍を振るっているとどうしても汗ばんでしまう。
右官として登用されてからも、文輝は毎朝一人で調錬場に通い詰めた。
誰かと手合わせをするわけでもない。
ただ、槍を振るっている間だけは過去のことも、現在のことも、忘れられたからそうした。
中城に配属された女官たちの仕事の一つに井戸水を汲むというものがあったが、文輝は生まれてからこの方ずっとこの任を女官に割り当てたやつは大馬鹿だと思っている。どうして女官などという生物的に力のない存在に力仕事を命じるのか。どうせならば右官に鍛錬の一つとして水瓶を運ばせればいいのだ。
ずっと、そう思っていた。
だから。
「
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