第5話 やめてくれ
蓮は同じ講義を受けている友達によって連れ去られていった。
台風一過とばかりに俺は安堵のため息をついた。まだまだ若いはずなのに、親父みたいな気分になっちまう。
ちびりとコーヒーを飲み、顔をあげると、
「うわあっ。」
目の前に雪の顔が。近すぎるだろ。まだまだウブな俺たちはいい雰囲気になってもなかなか進めずにいた。キスなんか片手でたりるだろう。
元来肌のきれいな雪は、この数年の間も入念なスキンケアによって、それを保ち続けていた。ほんのりと香るシャンプーは、そこはかとない色気をまとい、俺の有能な理性をぶち壊しにかかる。
俺だって、雪だって、そこそこモテるほうなのだ。年に数度のペースで告られたことだってある。俺はともかくも、雪なんて学校を休みがちだったのに、だ。そう思うと俺に雪の隣は相応しいのだろうかと、1年経った今でも時折、そんなことが頭をよぎるのだった。
「ねえ、林くん何て言ってたの。」
興味津々な顔に俺はつい話してしまうのだった。
「ん、男なら女の願いを叶えるのが務めだってよ。って言っても、アイツは...」
「そうだよっ。」
本当に俺の周りのヤツは人の話を聞かない。
「いや、だから20歳になったら、」
「楽しみにしてるね、愛一郎♪」
頼むから人の話を聞けええ!
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