第2話 ぼくから俺に

『20歳まで生きられる確率はわずか5%』

と医師から残酷な宣告を受けた彼女ももう19歳。平均体重にも届かないほど瘦せ細った彼女の体は丸みを帯び、でるところのでたグラマラスな女性へと成長していた。


無論、俺もすっかり男の子から男になっていた。一人称は「ぼく」から「俺」に変わり、天使の声と呼ばれるショタ声を卒業して低音の渋い声を手に入れた。チビだと長年バカにされ続け、コンプレックスになった身長も先日180を越した。


そんなオッサン臭い回想から1年前。

晴天に恵まれた俺らの卒業式。在校生の合唱に柄にもなく感動してしまい、大号泣した俺の一世一代の大勝負。

体調が芳しくなく休みがちだった彼女もこの日はなんとか医師の許可をもらい出席していた。

少女漫画でイメトレをした俺は時代錯誤とも言われそうな王道シチュエーションを狙った。校舎裏に呼び出して、想いを伝えたときの彼女の顔を、俺は一生忘れないだろう。


小中高と長い入院生活を繰り返した彼女は同年代の中でも群を抜いた頭脳の持ち主だった。出席できないのでテストの順位にはあらわれないが。に対して俺はバスケ部で主将として活躍していたため赤点ギリギリの成績だった。

部活で培った折れないメンタルを武器に2度と経験したくない受験勉強期間を経て、俺たちは某有名私立大への進学をキメた。


「あいいちろー。」

そう俺がこんな回想にふけっていたのは他でもない“雪”のせいだ。

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