明日と孤独と嘘。
@Melaton
第1話 Just Fly Away
君と出会えたこと、君と笑えたこと、君が嘘をついたこと、君に拒絶されたこと、君が死のうとしたこと、君の心配をまたできたこと。全部が僕の宝物で、それも全部が好きでした。
ありがとう。
君から全てを教わったから。
あの日、すごく暑かった。夏休みに入る少し前。学校から大急ぎで家に帰る。あの鳥はどうして飛べるのに、俺には翼がないんだろう。そんなことを考えながら。
急いで帰ったのは、早く帰らないと、親が先に家に帰ってきてしまうから。
「スマカラ」スマートフォンでカラオケができるアプリだ。親がいなけりゃ全力で歌える。元来歌うのが好きな僕は、それをダウンロードしたてのスマホを握りしめ、大好きなMyFirstStoryの曲を聴きながら地面を蹴る。
慌てて鍵を開け、さながら市街地戦の戦士の様に家に突入する。親は来ていない。暑い。クーラーをつける。今日は何を歌おう。まだ、息も上がりきらない内にスマカラを起動する。そこで君と廻り合うとも知らずに。
今日はこの気分だ。RADWIMPSの「スパークル」。曲を選択する。はて、曲の流れを忘れてしまった。他の人が歌っているのを聞いてみよう。そう思って、他の人の投稿を押したつもりだった。でも、暑くて、息が上がっていたのもあって、間違って僕は朱音のルームに入ってしまった。
ルームっていうのは、簡単に説明すると、ツイキャスやYoutubeのライブみたいに配信者がいて、それにコメントできて、予約すれば歌が歌える。要は、カラオケルームのアプリ版みたいな。司会と歌う人以外は文字でしか喋れないってだけの。そのルームで誰かがその歌を歌うと、ルームがその歌のボタンの所に開かれている間は表示される様になる仕組みだ。
これまで僕は間違ってルームに入ったことは何度もあったけど、すぐに抜ける様にしていた。なんか内輪のりでつまらないし、僕は歌いたいだけだったから。
でも朱音のルームに入った時、聞こえた朱音の声で僕の心は変わった。心地よい声だった。すごく可愛くて、それでいてアニメっぽい作られたカワボじゃなくて。今までにないくらい心地よく感じた。その場から離れたくないほどに。
「いらっしゃーい」朱音はそう言った。僕は「初めましてー」ってコメントした。
そこには、朱音を囲むファン?友達?が大勢いた。すぐに仲良くなれた。
そして、その中の一人、リリって男の子とすぐに仲良くなって、ライバル同士になった。アイテム(司会者にペンライトみたいなのを送れる)の数を競ったり。
朱音は俺のだーって取り合ってた。次第に、僕が朱音の夫を名乗る様になり、それからその仲間の間で家族関係が作られ始めた。僕と朱音の娘、メレンゲ。その師匠リリ、メレンゲの彼氏ロロ。そうやって少しずつ、輪が広がって、楽しくて。気づいたら1週間そんな会話を繰り返してた。
そんな中、朱音がメレンゲが開いたルームで、「安楽死の方法って知ってる?」なんの脈略もなく、そう聞いた。入ってきてすぐに。この一言が、全ての始まりだった。
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