第3話 私のカステラ魔力はナンバー1

カステラ職人の朝は早い――。



「今度は何をやらかした! どんな余計なものをカステラに入れたんだ!?」


今朝も怒りのあまり変顔中の師匠に、私は正直に打ち明けた。

「えっと、余計なものは入れてない……というか、卵と砂糖と水飴を入れ忘れました」

要するに小麦粉と水だけでカステラを作り上げました。我ながらすげー。

それを聞いて、師匠は頭を抱えた。

「それで見た目はきちんとカステラに仕上がっているところは、カステラ職人としては認める。普通の人間なら、それで生地が膨らむはずがないからな。カステラ魔法はしっかり発動できているようだ」


カステラ魔法というのは、カステラ職人だけが使える特別な魔法だ。これがないとカステラはカステラにならず、生地を混ぜて焼いても蒸しパンやスポンジケーキになってしまうのである!

ちなみにカレーを作っても、炊き込みご飯をつくっても、カステラ魔法が発動するとカステラになる。炊飯器や鍋の中から四角いカステラが出てくる。そういうもんなのである。


ちなみに私はカステラ魔法がかなり強いらしい。その魔力は国一番かも? とまで言われており、だから失敗続きでもクビにならないのである。ちょっと自慢!


「カステラ魔法は使えるのに、なぜ普通にカステラが焼けないんだ?」

「本当ですよねー。ふっしぎー」

「ふっしぎー、じゃない! ノリが軽すぎる! もっと深刻に受けとめてくれよ頼むよ! 何の味もしない粉っぽいだけのカステラを王家に納品したら首が飛ぶぞ!」

それをぎりぎりのところで師匠が気づいて止めてくれた。改めて検品の重要性を知る私だった。



検品…………たいせつ!!

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