はきゅうてんBOSS城のカステラ職人はリニアモーターカーより強い

ゴオルド

第1話 カステラ職人の朝は早い

カステラ職人の朝は早い――。




ナーガ・サリ王国の王城、その名も刃臼天はきゅうてんBOSS城――お花畑と運河に囲まれたその城は、広大な城下町を有し、その一角に100人ものカステラ職人を住まわせ、カステラ貿易で儲けていた。それはもうエゲツないほど稼いでいた。そのためナーガ・サリ王国はキュシュ連合の中でも一目置かれた存在であった。


あと、城の周りは常にチューリップが咲いてる。魔法のパワーで冬でも夏でもずっと咲いてる。王様がチューリップが大好きだからね。



この国において、100人のカステラ職人はものすごーく偉い。どのくらい偉いかというと、王様の次ぐらいに偉い。だって、カステラ職人に逆らったら二度とカステラが食べられなくなるのだから。国民は皆カステラが大好きなので、カステラ職人には逆らえなくて当然なのである。



この城下町で、権力を欲しいままにしているはずのカステラ職人である私、15歳の素敵女子のフラフィアちゃんは、不運なことに今朝も師匠に叱られていた。



「フラフィア! おまえが焼いたカステラに卵の殻が入っていたと苦情が来たぞ! どういうことだ」

「ええ~、そんなはずは……、あっ、違います、それ卵の殻じゃないです。サプリです。カルシウム錠です」

「……なんでカステラにカルシウム錠を入れたんだ?」

「えっと、体に良いから? 骨が丈夫になるんですよ」

「この……馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁ!」

カステラ職人の師匠であるユリアさんは澄ましていればかなりのクールビューティーの女性なのだが、今朝はもはや変顔のレベルで顔を歪めて怒りまくっていた。しかし、私はこの変顔のほうが見慣れている。しょっちゅ怒られてるから。



はあ。

カステラ職人の朝は早……ねっむ……。夜明け前に呼び出されてのお説教は体にこたえるなあ。


あくびをかみ殺してお説教を聞いていたら、厨房の片隅に何やら動くものが見えた。黄色い全身タイツを着た40代ぐらいのおじさんことカステラの妖精さんだ。物陰にかくれて、そっとこちらを窺っている。

「どうしておまえは普通にカステラを焼けないんだ!? どうしてなんだぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ごめんなさい師匠、私にもわからないんです……」


妖精さんは怒る師匠を見て、悲しそうに眉をひそめた。



師匠のもとでかれこれ半年ほど修行をしているが、うまくカステラを焼けたためしがない。でも気にしない気にしない。そのうち何とかなるっしょ!



城下町のどこかで一番鶏が鳴いた。こけこっこー。

カステラづくりには卵がたくさん要るからね。城下町にはニワトリがうじゃうじゃいるんだよ。

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