第18話 鉄を探せ
「お次は鉄を探しましょう」
線路をつくるには、木材だけでなく鉄も必要です。
「でも、どうやって探すのですか? こんな荒野のどこに……?」
困惑するリシアンさん。
私は、地面を指さします。
「下……?」
「鉄とかって、地下にも埋まってるものなんですよ」
「へぇ……って、それならなおさら無理なんじゃ……?」
「まかせてください」
私はいつものように、空中に
その中から、今回使うアイテムを選択し……。
「
これで金属の埋まっている地点を割り出せます。
使い方は……
「ですが、これで鉄を見つけたとしても、どうやって手に入れるのです? まさか鉱山を?」
「いえいえ、そんな大掛かりなことはしませんよ」
モンスターの中には、特殊な物質のみを好んで集める種類がいます。
彼らは、人間の常識を無視して、とんでもない方法で収集をしたりするのです。
「リシアンさんは、鉱物種ってご存じですか?」
「たしか、アイアンドラゴンなどの、金属を身体に含んだ生き物のことですよね?」
「はい、では彼らがどうして、そんな肉体を会得し、維持できていると思いますか?」
「それは……えーっと……」
「例えばアイアンドラゴンでしたら、実際に金属を捕食することでその硬度を維持します。彼らが鉱物系の山々にしか存在しないのがその証拠ですね」
「はぁ、なるほど」
ここまで説明を聞いても、リシアンさんはまだあまりピンときていない様子。
これは実際にお見せした方が早いですかね。
「
「えぇ!? シルヴィアさん、召喚魔法まで使えるんですか?」
「だから、魔法ならなんでもできると言ってるじゃないですか……」
なんといったって、その現代魔法の基礎を築き上げたのも、この私なんですからね。
教科書に載っている魔法学者の名前は、ほとんど私の偽名です。
全部自分の名前だとあとあと面倒そうなので、偽名で論文を発表していたんですよねぇ……。
「とにかく、いきますよ! えーっと、鉱物種のページは……っと、あったあった」
「ゴクリ……。どんな魔物を召喚するんでしょう……」
「リシアンさん、そう警戒しないでも大丈夫です。比較的安全なモンスターですよ」
「だ、だといいですが……」
「アイアンスライム・召喚!」
――じゅううううううううううううううう!
魔法陣が地面に焼け付くように光った後、その上に透明なスライムが召喚されました。
大きさは人の半分くらいの背丈。
さわるとぷるぷるとおいしそうです。
「って、シルヴィアさん。これがアイアンスライム? どうみても透明な、ただのスライムじゃないですか!」
「いえ、これが彼ら本来の姿なのですよ。ここから、鉄を接種して、アイアンスライムの良く知られた形になるんです」
「そうだったんですか……」
通常、野生のアイアンスライムの見た目は、まさに鉄の塊です。
触り心地も鉄そのものですし、成分もほぼ鉄です。
ですが産まれたときの彼らの状態は違います。
アイアンスライム、というのは、単に鉄を好んで食すタイプのスライムってだけなんですよね。
ま、あまり知られていないことですが……。
「さあ、スライムさん。この辺りの鉄を吸い上げちゃってください!」
私が召喚したのはちょうど、お腹が空いて透明になった状態のアイアンスライムです。
なのできっとたっぷりと鉄をかき集めてくれることでしょう。
「ぴぴーー!!」
スライムさんは三回ほど飛び跳ねると、身体の一部を地面へと挿入します。
――ずちゅ。
――ずぼ。
――ずりゅりゅりゅりゅりゅ。
「あのーシルヴィアさん、これは……?」
リシアンさんには少し、ショッキングな光景だったでしょうか。
「アイアンスライムは身体の一部を触覚状に伸ばすことで、地下の鉱物を接種することができるんです」
「へぇ……すごいものですねぇ……」
よほどお腹が空いていたのか、ものの数分で、透明だったスライムの身体は、鉄色に染まりました。
「ぴぴー……ぷふぅ……」
「お疲れ様です、スライムさん」
どうやらお腹いっぱいになって、疲れて眠ってしまったみたいですね。
今の内です。
「スライム
「シルヴィアさん、まさかこれは……」
「そうです、この機械でアイアンスライムの体内の鉄を吸いだします」
「えぇ……」
――ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅ!!!!
スライムの身体に
「なんというか……すごい光景ですね……」
「そうですか? 慣れてください」
ものの数分で、アイアンスライムは元の透明な状態に戻りました。
「ぴぴー!」
「あらあら、またお腹がすいたんですか? それじゃあ、もう一度、よろしくお願いしますね?」
なぜかその様子をみたリシアンさんが悲鳴を上げます。
「ひぃ!?」
この調子で、スライムを利用すれば、十分な鉄が得られるでしょう。
ついでにあと何体かスライムを召喚しておきましょう。
「えい!」
「ぴきー!」「ぴきー!」「ぴきー!」「ぴきー!」「ぴきー!」
「ぴきー!」「ぴきー!」「ぴきー!」「ぴきー!」「ぴきー!」
あとはこれらを職人に割り振って……。
これでもう私が居なくても鉄には困りませんね。
スライムたちもお腹いっぱい食べれて幸せでしょう。
「ありがてえぇありがてえぇ!」
職にありつけずに困っていた国民も多いですからね。
アイアンスライム職人もすぐに集まりました。
「シルヴィアさん、うちの職業問題まで解決するなんて……ありがとうございます」
「いえいえ、お安い御用ですよ」
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