第6話 おもてなし
「ああ、それでしたら……彼、リシアンは王なのですよ」
「へ?」
「ルキアール王国王、リシアン・コルティサングその人です」
「えぇ!? リシアンさん、王様だったんですか!?」
「ええ、まぁ……そうです……」
リシアンさんは少し照れくさそうに頭をかく仕草をします。
ルキアール王国……私ですら聞いたことがないですし、相当な小国なのでしょうが……王子、ですか……。
王子様に泊っていただくのに、この小屋はしょうしょう失礼でしたかね……。
あとで不敬だとか言われなければよいですが……。
「あ、でもそんなにかしこまらないでくださいよ? 僕はエルキアさんに助けてもらった身なのですから。それに、ホラ、親衛隊のこいつらだって、僕には基本ため口ですし」
「あ、そうなんですか」
「まったく、王はいつもそうやって……王の自覚が足りないから迷子になるんだぞ?」
「いやぁ、すまんすまん……」
なんだかリシアンさんたち、仲がよさそうですね……。
これが本当に王子と親衛隊の関係性なのでしょうか?
というよりも、単純に年の近い友達のように見えます。
「とりあえず、今日はもう遅いので、みなさんでお泊りになってください」
「いいんですか!? この人数ですよ!?」
「ええ、大丈夫です。隣にもう一軒建てますので」
「はい?」
親衛隊のお一人が、首を傾げます。
リシアンさんだけは得意顔で――。
「まあ、見てなって」
と、なぜか我が事のように自慢げです。
私たちはいったん外に出て――。
「
今度は少し大き目の屋敷を建てちゃいましょうか……。
今後もなにかと必要になるかもしれません。
ほんとはもっと豪快に、お城とか建ててみたいんですけどねぇ。
あいにく、ここには木以外の建材もありませんし……。
「木造屋敷B、をクリエイトします!」
私はカタログから、ちょうど森の雰囲気に合ったものを選びました。
「おお! 一瞬で巨大な屋敷が!?」
「どうなっているんだ!?」
「彼女は何者なんだ!?」
「はっはっは、みんなすごいだろう? エルキアさんはなんでもできるんだ!」
だからどうしてリシアンさんがそんなに得意げなんですか……。
まぁとにかく、これで全員分の寝床は提供できますね。
で、問題は……。
あとは食事ですかね。
私はとらなくても問題はないんですが、彼らには必要ですよね。
「みなさん、中に入って待っていてください。私はもう少ししたら行きますので」
「エルキアさん? わ、わかりました。みんな、お言葉に甘えて、さっそく中に入ろう」
彼らは私に言われるままに従います。
当然ですね、私の力を知っているから、逆らいなどしないでしょう。
さあて……、それでは彼らのために、久々に腕を振るいましょうかね。
せっかくのこの国最初の来客です。
しかも他国の王族となれば、これはもう
「昨日植えた【無限キノコ】と【大豆ミート】に……」
私は作物の前に立ち、呪文をとなえます。
「
すると【無限キノコ】はニョキニョキ生えそろい、【大豆ミート】のツタはぐんぐん伸び始めました。
これをすると味が落ちてしまうんですが……まあそこは私の腕でなんとかしてみせましょう!
こう見えて、料理は得意なんですからね、私。
なんといっても、500年も料理をしているのですから。
「
えーっと、レシピを選んで……。
よし、セット完了です!
「できました……! 【無限キノコ】と【大豆ミート】の冷製サラダと、栄養満点のホットスープです!」
私はそれを、さっそく彼らに提供します。
屋敷には、全員が囲んで座るのに十分なほどのテーブルがありました。
みんなで協力して、そこにお料理を並べていきます。
「わぁ! おいしそうなにおいですね! エルキアさん、お料理もお上手なんですね!」
親衛隊の一人である、マーリャという女性剣士が、私のことを褒めてくれました。
なんだかかわいい子ですね。
私、イケメンももちろん好きですが、かわいい女の子も大好きです!
特に、頼られるとなんでもしちゃいます。
「今度、私にもお料理教えてください!」
「もちろんです、マーリャさん! 私でよければいくらでも!」
そうこうしているうちに、お食事の準備が整いました!
さっそくいただきましょう。
「ではみなさん、どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
「ん……おいしい!」
「ほんとうだ! こんなに美味しい料理は初めて食べたぞ!?」
「我が国に持って帰りたい! うちには存在しない味だ!」
ふっふっふ……さっそく私の隠し味が効いたみたいですね……。
500年の間、いろいろな国の料理を学びましたからね。
彼らのような辺境の小国には存在しない味なのは当然です。
「いやぁ、エルキアさん。なにからなにまで、本当にお世話になります。ありがとうございます」
改めてお礼を述べたのは、親衛隊隊長のへギムという男性です。
正義感と責任感の強そうな、屈強な男性で、いかにも隊長らしい感じです。
きっと彼がリシアンさんを陰で支えているのでしょうね……。
私にもそんな、気の許せる友人がいればよかったのですけど……。
500年も生きていると、大事な人をこれ以上見送り続けるのは正直、つらいものがありますね……。
ですから、あまり人と深く親密にならないようにはしていたのですが……。
それが今回の追放の原因なのかもしれません。
いつか私にも、素敵な相手ができればなぁ……。
会食のさなか、私はそんなことをおぼろげに、夢想するのでした――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます