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『
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お互いに珍しくて読みにくい名字な上に、タカナシに対して鷹の男なんて悪い冗談みたいな名前。ただ、それ以外に接点などなくて、お互いのことなんて何も知らなかった。どこにでもある県立高校の、二年C組という同じクラスに在籍していることだけ。
どんなパターンで決めてるんだか、教師が勝手に決める彼女の席は一番後ろの窓際の席、対して俺は廊下側の後方席。
(……また、透けてるんだが)
目が自然と彼女のことを追うようになって、気付いたこと・その一。小鳥遊は、授業中によく透ける。それこそ、誰も気付かないのが不思議なくらいに。ただ、教室での小鳥遊は物静かで、あまり印象に残らない生徒だった。屋上での明るいキャラが、嘘みたいで。
「次……
(ああ……また、飛ばした)
気付いたこと・その二。この学校の教師は、絶対に小鳥遊の名前を呼ばない。最初から、彼女の存在なんてなかったみたいに。そして、生徒の誰も、そのことに気付かない。
ここまで来ると、小鳥遊の存在そのものが俺の妄想なんじゃないか、なんて気にもなってくる。ただ、彼女が現実に生きていることは、たった一人の存在が証明してくれていた。
「よっし、休み時間だな!さっさと号令っ!」
明るくハキハキとした声。清潔感のある短髪に、いつでも体育会系らしいオレンジのジャージ。実は現代文の教師であり、俺達の担任でもある
彼も、他の教師と同じように、授業中は小鳥遊を当てたりはしない。そういうマニュアルがあるのかもしれない……だが、休み時間になれば話は違う。
「小鳥遊」
授業が終われば、いつの間にか先生の元に駆け寄っていた小鳥遊に、お決まりのごとく名前を呼ぶ。それだけで、いつでも
「これ、準備室まで運ぶの手伝ってくれないか?」
「はい」
ふわり、と。花が開くように
気付いたこと・その三。小鳥遊の想い人は、担任の伊藤正樹だ。
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