第2話 進まず戻らず
そんなはずはない…夢に決まってるさ。まず同じ日を繰り返すなど、この世界がファンタジーに飲み込まれでもしない限りあり得ない。きっと夢だ。夢なんだ。2週間近く逃げ回ってんだ、こんな摩訶不思議な夢を見るくらいに疲れてるんだ。
へっ…へへっ…なら堂々と寿司でも食ってやろうか。ひどい人生を送ってるんだ、夢の世界でくらい贅沢したって許されるだろう。
電車に乗るのなんて久しぶりだな。会社も家から近いとこだったから歩きだったし、休みんときに外出することもなかったからな…
お、ついた。俺は通じゃないからどこの寿司が1番美味いとか分らない。てことでとりあえず銀座に来た。こんなみすぼらしい格好のやつがここにいるのはおかしいが、警察に捕まったって問題はない。今は堂々と食おう。
はぁ…腹がいっぱいだ。幸せだって感じたのはいつぶりだろう。もう1年はこんな気分になった記憶がない。
殺人犯が何幸せになってんだって思うか?ま、別に思っときゃいいさ。第一これは夢なんだし、それに死んだ奴らのほうが快適で充実した生活をしてたんだぜ?むかっ腹が立つ話だ。俺は孤独で充実とは程遠い身だってのによぉ…
はぁ…もう夜か。腹も満ちたし、ネカフェにでもに泊まるかな。最も、銀座にそんなものがあるのかは知らんが。
隠れたとこに1軒あったから今日はここで寝るとしよう。なんていうか、できればこれが現実だったらってちょいとばかり思うが、同じ日を繰り返すのは御免だ。
夢の中で寝るのは初めてだが…死ぬとかないよな?はっ、こんな冗談言ってられるのも今のうちだな。目が覚めたらいつも通り逃げなきゃならないって考えるとただただ辛いが、ま、しゃあなしだ…じゃあな…夢の世界…
くっ…うぁぁ…よく寝た…いよいよ今日で2週間か。もうあと2週間で1ヶ月だ。頑張って逃げてやろう。
犯罪はゲームじゃないとか言うやつもいるが、正直どんなゲームよりもスリル満点でエキサイティングだぜこいつは。
さて、そろそろここも離れなくちゃな…今警察はどんくらい俺の居場所を掴んでるのだろうか。ちとニュースみて確認するか。
「…は逃亡を続けており、警察は、全国に指名手配することを決定しました。」
おいおいおい待てよ、そんなはずないだろ!夢ならもう見終わったはずだ。何が起きてんだよえ?おい!進んでも戻ってもない…やっぱり今日を…繰り返してるのか…ここから抜け出す方法を…考えなくては。
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