放課後、好きな人に告白されると期待していたらその妹に告白された!
吹雪く吹雪
第1話
俺には好きな人がいる。
告白する勇気なんてないけれど、高校に入ってからずっとその人のことを思い続けて、好きと言えないまま、一年半が経ってしまった。
「昼飯、学食行くか?」
前の席の笠田がそう聞いてくる。
「いや、いつも通りコンビニで買って来たから、ここで食べるけど?」
そう言って鞄からレジ袋に入ったホットドッグとカレーパンを取り出して笠田に見せる。
「そうだよな。知ってた。いつもそうだもんな。」
うんうんと頷き、笠田は勝手に納得する。
「わかってるなら、」
わかってるなら、聞くな。そう言おうとするとそれを遮るように、
「でも、昼飯あってもさ、ここじゃなくて、学食で食べてくれてもいいよね。」
と机を叩いて迫ってくる。
笠田が迫ってくるのが気持ち悪かったので椅子を後ろに下げて距離を取る。
「嫌だ。混んでるし、ここから遠いし。行くなら、他の奴を誘えよ。増井あたりなら付いてくだろ。」
和佐のクラスは学食と真逆の位置にあり、二学年では一番遠い。そのせいで学食につくときにはもうすでに混んでいて、買うにも場所取りするにもある程度の時間がかかる。
そのため昼休みはゆっくりと休みたいのであまり学食は使いたくない。
「そうだけどさー、俺、増井と一緒にいる堀川と早瀬とそこまで仲良いわけじゃないから気まずくなりそうで。」
笠田は自分のクラスよりも他クラスを優先するためクラスにあまり馴染めていない。
今日だって多分、クラスに残るのが嫌だからか、誘われたかのどちらかのかだろう。
「そんなの知らないよ。ってかそもそも、なんで学食にしたんだよ。俺が行かないことくらいわかってただろ。」
「気分だよ。」
笠田は即答する。
「お前の気分で俺を巻き込むなよ。増井達とが嫌なら、購買で何か買ってくるか、他のクラスの奴と食べてこいよ。どうせ、学食にお前の友達いるだろ。」
最後の一言が決めてとなって、
「それもそうだな。じゃあ、行ってくる。」
と言って笠田はあっさりと教室から出て行った。
本当は最初から友達と食べる予定だったのかもしれない。それでも一応、俺が一人にならないように聞いてくれたのだろう。
まあ、なんにせよ学食には行かないけどな!
笠田が教室から出て行くのを見届けると、窓の方を眺める。
「一人か。」
一人で食べることが決まりなんとなく寂しくなる。
窓の方を眺めながら、ホットドッグの袋を開ける。
そんな和佐に、
「今、一人かな?」
と尋ねてくる人がいた。
誰だろう、そう思いながらその人を見るとそこには和佐の好きな人である佐倉玲奈がいる。
驚いて目を見開いてしまう。
すぐに誰にもわからないように軽く深呼吸して、
「ああ。うん。一人だよ。」
となるべく普通に返す。
何の用事かわからない。多分、委員会とかだと思う。
委員会同じじゃないけど。
「良かったー。少し、お話があってね。お昼お邪魔してもいいかな。」
「いいけど。」
そう答えると、佐倉さんは前の笠田の席を和佐の方に向けて座る。
佐倉さんと昼ご飯か。今日だけは笠田について行かなくて良かったと思う。
「何の用?」
「えっとね。そんな大した用じゃないんだけど、放課後って空いてる?」
放課後か。部活をやっていないので特にやることもないから、いつもすぐに家に帰っているので勿論空いている。
「空いてるけど。」
とりあえずそう返す。
「なら、今日の放課後、3階の空き教室に来てくれない?」
空き教室ってことはやっぱり何かの手伝いか?
「いいけど、なんで?」
「ここじゃ話せない内容だから。」
ここでは話せない内容。少し期待してしまう。
それでも冷静に、
「そっか。わかった。放課後な。」
と返事をする。
返事を聞いて佐倉さんは、
「うん。よろしくね。」
と微笑む。
そして、
「じゃあ、お昼ご飯食べよ。」
と和佐の机に弁当を広げる。
「いいのか?いつも一緒に食べてる友達とじゃなくて。」
佐倉さんならば俺とは違い食べる友達いない訳じゃないと思うけど。
「今日はみんな学食行っちゃって私も一人なんだよね。伊崎くんもそうでしょ?」
学食か。
いつもは半分くらいはクラスに残っているけど今日は殆どいない。今日はいつもよりも学食に行っている人数が多い。
「そうだけど、佐倉さんはなんで一緒に学食に行かなかったんだ?」
「うーん。なんか学食混んでるからあまり行きたくないんだよね。」
「それはわかる。人が多い日は食べ物持ってると身動き取りづらいし。もう少し広ければなー。」
「うんうん。伊崎くんもわかってるみたいだね。」
佐倉さんは和佐の意見に賛同する。
今まで同じような意見の人はいなかったため、意見が合って話していて楽しい。
「そんな感じで学食にあまり行きたくないので今日は私は一人なのです。」
そう言いながら、弁当の蓋を開ける。
「それじゃあ、いただきます。」
和佐の顔を見て、両手を合わせそう言うと佐倉さんはご飯を食べ始めた。
それを見て、
「いただきます。」
と言ってホットドッグを頬張った。
佐倉さんは誰にでも普通に接してくれ、誰とでも仲良くなれるそんな人だ。一緒に食べるのは所詮、話のついで。
そうではなければ、今、二人でご飯を食べるなんてことなかっただろう。
和佐は先生や授業についての話をしながらご飯を食べた。パン二つだけということもあり、和佐の方が先に食べ終わる。
水筒のお茶を飲んで一息つく。
お茶を飲んでいる間に佐倉さんもご飯を食べ終えて、リラックスしている。
あとどれくらいで休み時間が終わるか気になったので腕時計で確認する。
それを見て佐倉さんも気になったのか
「今、何時?」
と聞いてくる。
そのまま今、見たものを伝える。
「1時15分くらい。」
「もうそんな時間かー。」
5限が始まるのが1時30分なのでそこそこな時間が経っている。学食に行った人が大体帰ってくる時間だ。
「じゃあ、みんな戻ってくるし、戻るね。」
そう言って佐倉さんは自分の机に戻っていく。
自分の机に戻ると、
「それじゃあ、放課後、空き教室に来てね。」
と軽く手を振る。
「ああ、わかった。」
俺の返事を聞いてかどうかはわからないが佐倉さんが微笑んだ気がした。
「放課後か。」
そう呟いて、俺はポケットにあるスマホを取り出して、スマホゲームを始めた。
数分後、笠田が帰ってきて、
「大丈夫だったか?一人、寂しくなかったか?」
と心配してくる。
いや、煽ってきているのか?
「うるせー。別に寂しくなかったよ。寧ろ、ゲームが捗ったからまだ帰って来なくて良かったのに。」
スマホゲームをやりながらそう言う。
「本当は帰ってきて嬉しいくせに。」
やっぱり煽ってきてるな。
そもそも俺が一人になったは誰のせいだよ。
俺が断ったせいか。
と勝手に心の中で自問自答し、表面上ではスルーする。
「変なこと言ってないでさっさと、次の準備しろよ。次、物理室だからな。」
そう言いながら、鞄から物理の教科書を取り出して机の上に置く。
「わかってるよ。」
「ならいいけど。」
教科書を持って立つと、そのまま笠田の横を通り過ぎて廊下にでる。廊下から頭を少し出して、
「早くしないと先行くからな。」
と笠田を急かす。急かされた笠田は
「待って。あと少しだから。」
と慌てて廊下に出くる。
そして、和佐たちは物理室に向かった。
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