ピアノでYouTuber活動していた俺がクラスの女子に特定された。
大官めぐみ
第一章 月見里有希
第1話 正体がばれた?
音楽とは精神と感覚の世界を結ぶ媒介のようなものである。
Music is the mediator between the spiritual and the sensual life.
――ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
♪♪♪♪♪
『今回はルパンなんですね!』
『左手が鬼畜ww』
『安定のレベチ』
『どうやったらこの譜面になるのか想像不可ww』
『このお方のすごいところは着ぐるみでここまで弾くことなんだよな』
『手袋はモフモフじゃないとはいえこれでピアノ弾くのはキチガイ』
『結論、こいつは人間じゃないww』
「今回もなかなかに好評だな」
最新の動画をアップしてから数十分。ヘッドフォンをはずし俺はホッと息をついた。今回の動画は自室からのものだったがおおむね好評らしい。やっぱり有名どころを弾けば文句はつけられないな。
「おっ、チャンネル登録者数増えてる。えっと、五十万の大台超えたか。よっしゃ。さすが
本当に感謝しなければならない。おかげで俺みたいなこの冴えない高校生にも収入が入るのだから。嬉しすぎて自分の名前を叫んでしまった。
見るともう再生回数が一万回を越している。コメントも百を超えた。次の動画にあげる曲のリクエストも来ている。感慨深くて思わず笑みがこぼれる。
「動画は撮りだめしているしカップ麺でも食いながら編集するか」
キッチンに向かいお湯を沸かす。ポットの半分ほどしか入れていないのですぐに沸いた。音が鳴るかならないかのタイミングでチリトマト味のカップ麺に注いでいく。
お湯を線までしっかり注ぎ、蓋をしてティッシュの箱で抑え。
その時だった。
「……なんだ?」
ラインの着信音が鳴る。陰キャの俺には友達と呼べる存在は無いに等しいので驚いた。ついこないだ収入関連の話はつけたのでまだかかってくるはずが無いんだが。
「クラスラインか? でも今日は火曜だし連絡とか貼られることも無かったと思うけど……」
怪しみながらもスマホを手に取り顔認証で開く。そこには―――
「……誰?」
『ヤユぴょん』というネームが表示されていた。アイコンはひげとか生やすことが出来るアプリを用いた自撮り写真。
ここはとりあえず通報を押せばいいのだろうか。それとも追加?
クラス内立ち位置ゴミのクソ陰キャの俺にはそれすらキツイ。ピアノでは無双できるというのにな。
チキンな俺はとりあえずクラスラインの名簿を見ることにする。クラス四十人の名前を上から順にスクロールしていくと――。
「あった」
『ヤユぴょん』ってなんだよ……。
どうやら知らない人じゃないらしい。知らない人っていっちゃったらクラス全員ほとんど知らない人になっちゃうのだが。そんなことを考えてしまい思わず自嘲が漏れる。
知っている人らしいけど、どうしようか。
「あとでなにか教室で言われるのもいやだしなぁ」
迷った末に追加を押す。そしてそのままトーク画面に移った。
するとそこに書いてあったのは―――
『この動画、あげてるのアンタでしょ?』
との文面とYoutubeのリンク。着ぐるみの男が【超絶技巧! ルパン!】という文字と一緒に映っているものだった。
あ、ああ~。やべ~、ばれてる。
というよりも動画出してすぐ気づくってこいつドンだけ暇人なの? 勉強とかしろよ。
いや、待てよ。この男着ぐるみだしばれないのでは? そう思いすぐに否定しようとするも既読がついたことに気づいたのか相手が先にトークを送ってくる。
『否定の文面とかいらないから』
『これ○○町の○○マンションでしょ』
『私もそこに住んでいるから分かるし』
『脅しとかじゃないから安心して』
「いや、脅してるやん」
立て続けに送られてくるトーク。ピロンと可愛らしい音が脅迫状のような文面と一緒に流れてくる。ていうか、誰?
さてどうしたものか。
もし「こればらされたくなかったらアタシの奴隷になりなさい!」的なこと言われたらどうしよう。お金でも渡せば許してもらえるのだろうか。
世の中の若いモンはお金が全て。もし道行く人に「百万と友達交換して」なんていわれたら交換するようなモンばっかりだ。とくにギャルなんか酒と薬とドッキングだけが楽しみなのだろう。
そんなやつに逆らったらどうなるか。
「つ、吊るされる……」
焦った俺は急いで文面を相手に贈る。
『なんでしょうか。お金でしたら十万円ほどでしたら可能です。どうか本名公開はおやめください』と。
すぐに既読がついて十秒も経たないうちに返信が来た。
『そんなことしないってww。それに文面キモイ』
悪かったな。てか、お前母ちゃんに初対面の人には礼儀正しくしましょうって習わなかったのかよ。
キモイ。その言葉がグサッと刺さる。ピアノしかしてこなかった俺にはきつ過ぎる言葉だ。やばい。俺、泣きそう・・・・・・。
・・・・・・ていうか、誰?
でも言わないって言っているし心はやさしい奴なのかもしれない。そう思った直後またもピロンと音がする。
文面は―――
『明日、放課後、屋上。来なかったらばらすから』
『どうせ暇でしょ? 友達いないだろうし』
「いや、俺の心情返せ」
友達くらいいるわ。・・・・・・学校外に。
この時はまだ分からなかった。
このメッセージを皮切りに、俺の人生が大きく動いていくことが。
――――
実は作者、ピアノをやっていました。(過去形)
どうしたらピアノのことを生かしていけるかと悩みストリートピアノを実際に弾いてみて考えたのがこの話です。
実話も交えて創造していきたいと思っていますのでここだ!と思った方はコメントください。
専門の知識も交えて面白く書いていこうと思います。作者のことは近況ノートに書いておりますので気になった方はどうぞ御越しください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます