第132話 決行の日、作戦名コードL①

 




 ◆白猫のタマちゃん視点





 ☆一ノ瀬家・庭☆





「タマの姉御、準備は完了です」

「カゴメ、ありがとう」


 今日はエルが一人でおつかいに行く日。エルはアホなので一人にすると何をしでかすか分からないわ。だから私達も楓お姉さん達と同様に陰ながらサポートするつもりよ。野良猫の仲間を集めて、エルの跡をバレない様にこっそりと追跡するつもりだ。


「ですが、ここまでする必要はあるのです?」

「カゴメ、甘いわよ? エルのアホさは筋金入りなのよ......それと泣き虫だし、純粋過ぎて直ぐに騙されるし......エルに何かあったら大変でしょ? あの子を1人にするのは危険なのよ!」


 こちらは三毛猫のカゴメ(雌)。私の右腕と呼べるパートナーよ♪ 私が不在の間は、代わりに野良猫達のリーダーとして皆を任せているのだ。私の唯一無二の頼れる相棒よ♪


「な、なるほど......」

「エルはちゃんと一人でお買い物出来るのかな......いや、まず目的地にすら辿り着けないのでは? 転んで怪我して泣いちゃうかもしれないわ。一応包帯と消毒液を持って行こうかしらね......それから〜」

「タマの姉御、きっと大丈夫ですよ。エルお嬢を信じましょう」

「心配だわ......」


 小鳥のピーちゃんやカラスのサスケくんにも援軍を要請しておこうかしら......でも、楓お姉さん達も準備はしてる筈。あくまで私達は見守る事がメインになるかもしれないわね。


「タマの姉御! エルお嬢が家から出て来ましたよ!」

「ふふ......来たわね。カゴメ、野良猫達全員に招集を掛けなさい!」

「はいっ!!!」


 エル......お願いだからしっかりしてよね!






 ◆早乙女キララ視点






 ☆一ノ瀬家の庭にて☆





「お姉たま! 各員配置に着きました!」

「良し、後は裏庭の方に緊急対策本部の設置ねぇ。エルちゃんには私達が居ることを内緒にしなくちゃ行けないわん♪ 近所迷惑にならない様に静かに作業を進めてちょーだい!」


 私達がエルちゃんの前に姿を現す時は、エルちゃんが無事おつかいに成功して帰って来た時よ。みんなでエルちゃんを盛大に出迎えてパーティーをするの♪


「あ、それとキャンディーちゃん達にテントの設営をお願いするわねぇ〜あとモニターも10台とドローンも10機大至急よろぴくね♡」

「はい! お姉たま!」


 今日は一ノ瀬家の小さなお姫様の晴れ舞台! 葵ちゃんから相談を受けた時は一言返事でおっけ〜しちゃったん♡ 楓ちゃん、葵ちゃん、エルちゃんは大切なお友達よぉん♡ だから、あたしも協力を惜しむつもりは一切無いわ♪ むしろ楽しそうだし、四天王の皆やキャンディーちゃん達に言ったら、みんな凄いノリノリで協力すると言ってくれたのよん♪


「キララさん、今日は本当にありがとうございます♪」

「良いのよぉん♡ 楓ちゅわんの気持ちは痛い程分かるわよぉん♪ エルちゃんの事が心配よね♪ みんなで無事にエルちゃんのおつかいを成功させましょ!」

「はい!」


 現在の時刻は朝の7時20分、エルちゃんは現在ベッドでスヤスヤとお寝んねしてるみたい。葵ちゃんも朝早くから起きてバタバタと忙しそうに準備をしているわね。


「キララさん、後で私の友達と喫茶【ラフォーレ】の姫島さんも来る予定です。それと最近知り合ったばかりの女子高生の雨宮紗夜さんや二宮マッマも来てくれるそうですよ♪」

「あらあら♡ これは大所帯になるわねぇ♪ こちらもキャンディーちゃん総勢300名と四天王にかなでちゃん、そしてあたしのパッピーにも協力して貰うわよ♪」

「ええ......!? 確か......キララさんのお父様って、警視総監の方でしたよね?」

「そうよ♪ 警察の人達にも少しだけ協力してもらうわよん! んふぅ〜♡」


 あたしはやる時はやるオカマ♡ 使える物は何だって使うわん♡ 今日のミッションは、エルちゃんに気付かれずに無事にお買い物を成功させてあげる事。本気を出しちゃうわよぉん♡


「今日は勝負下着を身に付けて来たの♡ これを身に付ける時は全力で事に当たる時だけ......」

「おおっ......!! キララさん、頼りにしています♪」

「任せてちょーだい!」


 あたしも色々と準備をして来たけど、楓ちゃん達も凄いわ♡ まさか、エルちゃんの為に服を特注して防弾性の軽い素材で出来た愛らしいお洋服や最新型のGPSと特注の防犯ブザーに最高級のヘルメットまで用意していたのに驚きを隠せなかったわん。


「楓ちゅわん、エルちゃんに渡すお買い物リストを見せて貰っても良いかな?」

「うふふ♡ 今日エルちゃんに買って来て貰うのはこれです」

「ふむふむ......品目は5つね」


 おさらいするとエルちゃんが今日お買い物に行くスーパーは、あの有名な24時間営業の【ホモネコバリュー】。ホモネコ急便やホモネコ水産にホモネコエンターテインメント等の多岐に渡る色々な子会社があるの♪ 持株会社はホモネコホールディングスと言う名前の超一流大手企業よん♪


「どれもエルちゃんの好きな食べ物です♪」

「おおぉ〜なるほどねぇ」


 内容は、豆腐、焼肉のタレ、ポテトチップス、ウインナー、お茶漬けの素。これはエルちゃんからしたら難易度が高いかもしれないわねぇ......かと言って簡単にするとエルちゃんが満足しないかもしれない。楓ちゃん色々と考えてるわね♪


「これはエルちゃんも大変ねぇ〜」

「うふふ♡ これでエルちゃんも満足する筈です♪ それとエルちゃんに渡す地図も作りました♪ 全部平仮名で書いてあるので、エルちゃんが見ても分かるかと思います♪」

「あらまぁ......これは凄いわねぇ」

「少しだけ頑張っちゃいました♪」


 楓ちゃんの本気度が伺えるわね。こんな詳細の地図を作るだけでも最低3時間くらいは掛かるはず。この丁寧に仕上がった地図は、繊細な作業が出来る人しか作れない様な代物よ。


「良し、この地図のルートを元にキャンディーちゃん達に道の清掃をお願いしようかしら。エルちゃんが歩く道に石ころやゴミが落ちてたら危ないもんねぇ......万が一にも転んで怪我をする可能性があるわん」

「おおぉ......確かに。皆さんにお願いするのは申し訳ないですけど......」

「良いのよぉん♡ キャンディーちゃん達がやる気になった時は、何だってするからねぇ♪」


 よぉ〜し! あたしも俄然やる気が出て来たわん♡


「今日のあたし達を強いて言うならば......影の実力者よん♡ 一ノ瀬家の可愛いお姫様をお守りするのよん♡」

「はい! 私や葵ちゃんも黒づくめの格好をしてエルちゃんを守ります!」

「楓ちゅわん〜その意気よん♡ 良し、時間はまだあるわね。マルビッチ〜こちら早乙女キララよん。応答してちょーだい!」


 四天王の皆は既に配置に着いているわん。そして、ホモネコバリューの店長にも話しは通してある。根回しは徹底的に済ましたわん♡


「はいお姉たま♡ わっちは現在、ヘリコプターで上空1000メートルの位置に待機しておりんす♡ オネエ狙撃部隊、ヘリコプター5機と乗組員25名準備完了でありんす!」

「おっけ〜♡」


 早乙女四天王の1人、【両刀】の異名を持つマルビッチは、狙撃の腕に関して世界大会で3位と言う実績を残している凄腕よん♡ 500メートル先のノンケのおケツに座薬をぶち込んだと言う伝説を持つ廓言葉を雅に使うおゲイさんなの♡ 今日はマルビッチの白のチャイナ服に綺麗なスキンヘッドがお空の上で輝くわねぇ♪


「えっ......ヘリコプター?」

「まあまあ、楓ちゅわん。細かい事は気にしないのぉ♡」

「こ、細かい事......ごくり」


 あらあら、楓ちゃんが驚いてるわね。驚いた顔も可愛くて素敵よぉん♡ もお〜本当に一ノ瀬家の三姉妹は美人過ぎて羨ましい限りよん♡ 


「あーあー、こちら葵だよ。キララさん応答して」

「はぁ〜い♡ どしたの葵ちゅわん?」

「エルちゃんが起きました。これからご飯食べさせて準備をするね!」

「おっけ〜さて、いよいよねぇ!」


 無線で葵ちゃんから報告が入ったわん。お姫様のお目覚めよん! キャンディーちゃん達を始め皆には無線を渡してあるの。




【全員へ告ぐ、お姫様が目覚めたわよん! これより作戦名、コードLへと移行するわん! 皆! 頑張るわよん!⠀】



 早乙女キララの一声で、無線越しからでも伝わる大歓声が湧き上がる。







 ◆エルちゃん視点





「んん〜」


 良く寝たの......今日も体調は問題無し。さて、いよいよだ......今日は僕が一人でおつかいに行く日なのだ。


「あ、エルちゃん起きた? おはよ♡」

「あおいねーたん、おはぉ!」

「おおぉ〜今日のエルちゃんはやる気に満ち溢れて居るねぇ」

「んみゅ! がんばるお!」

「よしよし♡ じゃあお着替えしてお姉ちゃんと一緒に朝ごはんを食べよっか♪ おいで♡」

「はいなの!」






 ―――――――――――――――





 ☆時刻は朝の9時30分☆




 エルちゃんはご飯を食べて支度をして、いよいよ一人でおつかいに行こうと玄関へと向かった。



「エルちゃん、本当に大丈夫?」

「だいじょーぶ! かえでねーたん、まかちて!」

「良し、ではエルちゃんに任務を与えます!」

「らじゃっ!」

「あぁん♡ も、もう可愛い♡ むぎゅ♡」

「ふわぁっ......!?」

「頬っぺたすりすり♡ エルちゃん、この御守りも渡しておくね。エルちゃん本当の本当に大丈夫?」

「だいじょーぶ!」


 かえでねーたんも大袈裟なのだ。ボクが一人でおつかいに行くと言うだけでこの有様。いくら心配してくれるとは言え少し過保護な気がします。心配してくれるのは勿論僕としては嬉しいけども。


「そかそか、じゃあこれはお金だよ。5千円札ね」

「ふぁっ......!? ご、ごせんえん......さちゅ!? ごくりっ......」

「熊さんのお財布の中に入れておくね♪」


 はわわ......!? こ、こんな大金......まじか。5千円札はかえでねーたんが、お買い物してる時に出してる所は見た事はありましたが、自分自身で触るのは初めてなので緊張しちゃう。


「ん? エルちゃんそんなプルプルと震えてどうしたの? やっぱり一人で行くの怖くなっちゃったかな?」

「だ、だいじょーぶなの!」

「そう? それとこれはお買い物リストと目的地の地図だよ。お釣りはエルちゃんの好きな物を買っても良いしお小遣いにしちゃって良いからね♪」

「ふぁっ......!?」


 わーい♡ これでおかちが沢山買えるぞ! いや、待てよ? ここは冷静にならなくちゃ行けないな。お釣りの半分はかえでねーたんとの結婚の資金として貯金して置こう。


 しかし、五千円札と言う大金を持ち歩くのは中々に勇気がいりますね。もしかしたら、このお金を狙う輩が沢山居るかもしれません。細心の注意を払っておつかいと言う任務を成功させよう。


「エルちゃんヘルメットも付けるよ〜はい♪」

「へるめっと?」

「まあ、言わば防具の様な物だよ。それとこっちは防犯ブザーと言う道具ね。もし、エルちゃんの身に何かありそうだったらここを引っ張って、大声で助けを求めるんだよ? それと知らない人には絶対に着いて行ったら駄目だからね? 途中でおしっこしたくなったら、公園やコンビニやお店屋さんにおトイレがあるから貸して下さいって言うんだよ? それから......」

「だいじょーぶなの!」


 このままでは埒が明かない気がするぞ。強引にでも行かないとかえでねーたんやあおいねーたんはずっと一人で喋ってそうだし。


「エルちゃん、頑張ってね!」

「あおいねーたん、がんばるお!」

「良し、てかお姉ちゃんもいつまでエルちゃんとイチャイチャしてるの!」

「エルちゃん、外までお見送りするからね♡ あ、お外は冷えるからね。お姉ちゃんのマフラー貸してあげる♡」

「かえでねーたん、あいあと!」


 僕の初めてのお仕事だ! 誰にも頼らずに一人でおつかいを成功させて見せる! 頑張るぞ!


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