第114話 楓の配信準備、西園寺エリカ

 





 ◆あおい視点





「ふわぁぁぁ......よく寝たなぁ」


 窓の外を見ると今日は天気が悪いね。何だかどんよりとした気分になりそう。目を擦りながら身体を起こそうとすると誰かに抱き着かれている様な感覚がありました。


「すぅ......すぅ......むにゃむにゃ......」

「葵ちゃん......エルちゃん......ぐへへ......すぅ......すぅ」


 私のお腹にエルちゃんと楓お姉ちゃんが抱き着いていました。冬の朝は寒いけど、こうして同じベットに入ると人肌の温もりで暖かいんだよね♪


「あれ、お姉ちゃん下着姿のまま寝てるじゃん......服着ないと風邪引くよ?」


 楓お姉ちゃんは本当に世話の掛かるお姉ちゃんです。外では出来る女と言うイメージが強いそうですが、家ではご覧の有様です。他のVTuberの面々が楓お姉ちゃんのこの姿を見たら多分驚きますね。


「んふふ......しゅき♡」

「お姉ちゃん、ほら起きて! 寝るならせめて服を着て!」

「んんっ......すぅ......すぅ......ぐへへ♡」


 全然起きる気配が無いね。お姉ちゃんは朝に弱いので毎度起こすのも大変です。エルちゃんがいつも起こそうとしてくれるのですが、エルちゃんが起こそうとすると逆に楓お姉ちゃんの抱き枕になってしまいます。


「んん〜♡」

「もう、お姉ちゃんたら......」


 お姉ちゃんの抱きつき癖が段々と酷くなっている様な......エルちゃんと一緒に暮らし始めてから、お姉ちゃんとのボディタッチや一緒にお風呂に入る事が増えた様な気がする。


「お姉ちゃん、お胸でエルちゃん潰してるから......エルちゃん苦しそうだよ?」


 毎日3人で同じシングルベッドで寝るのも悪くは無いのですが、流石に3人で寝るのは狭いかなと思う。前にもう少し大きなベッドにしない?とお姉ちゃんに言ってみたら、【狭い方が良いのよ♪】の一点張りで未だにこのベッドで寝ています。姉妹の仲が良い事は素晴らしい事だと思うけど、本来の姉妹と言うのはこんなにもベタベタとした感じなのかな?


「んにゅ......」

「あ、エルちゃんおはよ♪」

「あおいねーたん、おはぉなの......」


 楓お姉ちゃんと私の胸の間に挟まって苦しかったのか、エルちゃんが起きてしまいました。目を擦りながら眠たそうにあくびをしていますね。いつ見てもエルちゃんは本当に可愛いなぁ♡ 


「エルちゃんよしよし♪」


 エルちゃんの頭を優しく撫でてあげると気持ち良さそうに目を細めています。そのまま顎の下も撫で撫でしてあげるとエルちゃんが私の手にスリスリと甘えて来ました♡


「......」


 昨夜の泥棒の件もあって少し考えてた事があります。この家に住むとお金持ちだと思われて、また再び狙われてしまう可能性があると思う。


 タマちゃんや私達3人で住むには広過ぎるし、管理も維持費も大変......お母さんやお父さんには申し訳無いけど、もう少し小さい家に引っ越すのが良いのではと考えて居ました。この件は楓お姉ちゃんにも相談しようとは思っています。


「でも、思い出の家から引っ越すのは寂しいよね......」

「んぅ? あおいねーたん?」

「何でも無いよ♪ エルちゃんもう起きる?」

「おきゆ......あおいねーたん、おちっこ」

「うふふ♡ はいはい♪」

「いっしょに、いくの......」


 あら、もしかして楓お姉ちゃんが昨日寝る前に見せたホラー画像が余程怖かったのかな? エルちゃんは夜1人ではトイレに行けないけど、朝ならいつも1人でトイレ行くのに〜うふふ♪ エルちゃん怖いの苦手なんだね♪


「おててつなぐ......」

「良いよ〜おててじゃなくて、抱っこして連れて行ってあげる♪」

「んみゅ!」


 怖がるエルちゃんが可愛すぎて気が狂いそうです! 昨日の夜、本当は良くないと分かって居たけど、お姉ちゃんと一緒に調子に乗って怖い画像を沢山エルちゃんに見せてしまいました。エルちゃんが涙目になりながら、私とお姉ちゃんに抱き着く姿に終始ニヤニヤしちゃった♡


「ぐすんっ......こわい、ゆめみたの」

「ん? 怖い夢?」

「もったいないオバケ......でてきたの」

「あぁ、あれね」


 苦手な食べ物を残すとその食べ物がお化けとして出て来るよと私が言った奴かな? 嘘だけどね♪


「じゃあ、今度からお野菜もちゃんと食べなくちゃね♪」

「んみゅ......」

「ほら、エルちゃん〜トイレ着いたよ」

「あおいねーたん、あいあと」

「うん♪ 私はここに居るからね♪」

「............」

「ん?」


 あらあら、エルちゃんが無言で私の服の袖を掴んでいます。これは私も一緒にトイレに入って欲しいと言う事かな? 楓お姉ちゃんにちょくちょく悪戯されるから不安なのかもしれないね。楓お姉ちゃんはトイレに出て来た所を驚かすからね。


「あうっ......あっちむいてなの!」

「はいはい♪」


 本当に世話の焼ける妹です♡ 前はエルちゃんにおトイレの仕方を教えてたのが懐かしいな。最初は恐る恐るボタンを押したり驚いては居たけど、今ではちゃんとおしっこした後にお水を流す事が出来るようにもなって......成長を少しずつ感じるね♪


「あおいねーたん、おちっこでたの」

「良し、ちゃんと拭き拭きした?」

「んみゅ!」

「じゃあ行こっか♪」


 今日は私やお姉ちゃんも何も無い日。今日は家でゆっくりして、楓お姉ちゃんに配信のやり方を教えよう。私の理想は楓お姉ちゃんと一緒にVTuberをやる事。同じ西園寺の性を名乗って、バーチャル世界でも一緒に姉妹で活動したいな。私は楓お姉ちゃんなら、間違い無く人気が出ると見ています。


 私が西園寺モモネで、お姉ちゃんは......西園寺エリカ? んん〜変態のお姉ちゃんには少しお上品な名前は似合わないかな? でも、お姉ちゃん見た目だけは清楚や美人何だよねぇ......見た目だけわ。


「あらあら、エルちゃんまだ眠い?。お姉ちゃんともう少しお寝んねしよっか?」

「んみゅ......ぴったんこちて、おねんねしゅるの......」


 では、もう一眠りしよう♪ 楓お姉ちゃんもまだ暫く寝てるだろうし。エルちゃんの温もりが心地良くて、思わずむぎゅっとしてしまいました♡



  「ゴロゴロ......」



 あら? 突然雷が鳴り始めましたね。今日は洗濯物を干すのは諦めよう......


「ううっ......あおいねーたん、おなかちまうの! ぴったんこしゅるの!」

「ん? お腹?」

「おへちょ、とられるの!」

「あぁ、そういう事ね」


 エルちゃんは本当に純粋だね♡ だいぶ前に雷が近くで落ちた時に、取り乱す程にエルちゃんが酷く怯えてしまった事がありました。


 その時に楓お姉ちゃんがニヤニヤしながら、【雷が鳴ってる時は、オヘソを隠さないと雷神様が奪いに来ちゃうの♪】と言ってたかな? 純粋なエルちゃんは直ぐにそれを真に受けてしまい顔面蒼白でしたね。


 更にお姉ちゃんは調子に乗って、【雷が鳴ってる時は家族の人に抱き着いて、お互いにおへそを隠せば大丈夫だよ♪ だからお姉ちゃんにぴったんこすれば大丈夫♪】とかエルちゃんにろくでもないことを吹き込んでたね。


「また、なってゆの!」

「エルちゃん落ち着いて♪ 大丈夫だから♪」


 そんなプルプルと身体を震えさせちゃって......うふふ♡ 私の身体に必死にしがみついている姿を見ると......あ、私の方こそ落ち着かないとね。危ない所だった......エルちゃんは本当に小悪魔だよね。妹が可愛い過ぎると言うのも贅沢な悩みだよね♪



 そして、エルちゃんを抱っこしながら寝室へ戻ると欠伸をしながらお姉ちゃんが目を覚ましておりました。


「んん〜! エルちゃん、葵ちゃんおはよ〜♡」

「お姉ちゃんおはよ、エルちゃんが雷怖いってプルプル震えてるよ?」

「あらまぁ♡ エルちゃん抱きしめてあげないとね♡」


 とりあえずお姉ちゃんが飢えた獣みたいな目付きでエルちゃんを見つめていたので、お姉ちゃんにエルちゃんを託しました。あの目をしている時のお姉ちゃんは近寄ると危険だ。何をされるか分かったものじゃない。だから、こういう時はエルちゃんに任せて置くのです。


「もう♡ エルちゃんどちたの〜? そんな泣きそうなお顔して〜チュッ♡ 雷が怖いのでちゅかぁ?」

「ぐすんっ......おへちょ、とられゆ?」

「大丈夫だよ♪ ほら、お姉ちゃんとぴったんこしてると怖くないでしょ?」

「んみゅ......」

「よしよし♡ お姉ちゃんとおてて握りながらお寝んねしましょうね〜♪」


 今は良いけど、このままお姉ちゃんがこんな感じでエルちゃんをドロドロに甘やかしていたら、大きくなってもエルちゃんは、お姉ちゃんや私からは卒業は出来ない様な気がする。高校生になっても一緒にお風呂に入ったり、夜は同じベッドで寝てそう。



 ―――そして、楓がエルちゃんを甘やかしているその時でした。一際大きな雷が、轟音を発しながら落ちたのである。



「ヒィッ......!?」

「今日は酷くなりそうね。あら、雨も沢山降って来たわね」


 エルちゃんが落ち着くまでベッドで3人で横になり、エルちゃんの小さな震える身体を私とお姉ちゃんでそっと包み込むように抱きしめました。


「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ〜エルちゃんは将来かっこいい冒険者になるんでしょ?」

「んみゅ......なりゅ」

「エルちゃんなら大丈夫。雷なんてイチコロだよ♪」


 そ、そんな切なそうな目で見つめないで......エルちゃんの事を甘やかしたくなっちゃう。私の胸がドキドキしちゃうよぉ!


「ボク、こわくないもん!」

「おお〜エルちゃんかっこいい♪」

「やっぱりおきゆ! はみがき、ちてくるの!」


 エルちゃんはそう言うと洗面所の方へと1人で向かおうと意を決してベッドから降る。しかし、エルちゃんが部屋の外に出て数秒後にまた大きな雷が鳴ってしまい、エルちゃんは血相を変えて再び寝室へと戻って来るのでした。


「んみゃあああぁぁぁ!?」


 その様子を見てた私と楓お姉ちゃんは思わずクスクスと笑ってしまいました。雷が鳴り止むまで3人で抱き合いながら2度寝しようか♪


「エルちゃん〜お姉ちゃんが雷の音を聞こえなくしてあげるね♡」

「むむ!?」


 楓お姉ちゃん......まじか。自分の豊満な胸を使って、エルちゃんの小さなお顔をサンドイッチしてしまいました。エルちゃんがお顔を少し赤くしながら悶えています。


「ほ〜ら、エルちゃんの大好きなお姉ちゃんのお胸でちゅよ〜こうすれば雷さん聞こえないでしょ♪」

「......」


 おお〜エルちゃんが少し落ち着きを取り戻している。耳栓では無く代わりに胸を使うとは......お姉ちゃん、考える事がイカレてる。


「エルちゃん、このおしゃぶりも咥えてみて♪ 落ち着くと思うから」

「んみゅ」

「うふふ♡ それかお姉ちゃんのおっぱいチュッチュしたい?」


 エルちゃん、完全にお姉ちゃんに弄ばれていますね。エルちゃんがおしゃぶりをすると本物赤ちゃんみたいに更に可愛いさに磨きがかかりますね♪


「むぎゅっ♡ 3人でお寝んねしましょうね〜」

「お、お姉ちゃん苦しい......」


 この歳にもなって、お姉ちゃんと抱き合いながら寝るのはいつもどうかと思うけど......私もまだまだお姉ちゃんっ子なのかな? 3人で抱き合いながら寝ると落ち着くし嫌じゃない。


「葵ちゃん、もっと近くにおいで♪」

「もう十分近いよ」

「むぎゅっ♡」


 本当にいつ見てもお姉ちゃんの胸はめっちゃ大きいです。メロン所のサイズじゃ無い。私も大きい方だと思うけど、お姉ちゃんと比べるとまだまだです。


「ぐぬぬ......ち、ちぬ!?」

「あぁ、エルちゃんごめんね」


 私とお姉ちゃんがむぎゅっと抱いてるとエルちゃんのお顔がすっぽりとお姉ちゃんの胸と私の胸で埋まってしまいました。エルちゃんのお口に私の乳房が当たる度に何かが出ちゃいそうな感覚があります。何だかソワソワして来ちゃう♡


「エルちゃん、おしゃぶりじゃなくて私の胸咥えて良いよ♪」

「ふぇ!?」

「どうぞ♡」


 私はブラを外して、エルちゃんのお口に乳房を咥えさせました。これがまた気持ち良くて何だか母性と言う何かに目覚めそうな感覚に陥りそうです。


「私も咥えちゃお♡ はむ♡」

「え、お姉ちゃんも!?」


 左の乳房にはエルちゃん、右の乳房には楓お姉ちゃんがいやらしいお口で私の胸を咥えました。妹の乳首をちゅぱちゅぱ吸う救いようの無い変態なお姉ちゃんだけど、正直気持ち良くて脳が蕩けてしまいそうです♡


「んん♡」

「おやおや〜? 朝からモモネちゃんのえちちボイスが聞けるとは♡」

「お姉ちゃんの変態!」

「ぐへへ〜♡ 葵ちゃんのえちちミルク頂こうかしら♡ それからぁ〜ここもね♡」

「あ♡ やめ......」


 楓お姉ちゃんの手が私の股間に......やばい、下着が濡れてる。


「葵ちゃんのあそこ、こんなにもいやらしく糸を引いちゃって♪ うふふ♡」

「変態......」


 そして、楓と葵とエルちゃんの3人はイチャイチャした後に仲良く抱き合って昼過ぎまで寝るのであった。







 ◆配信準備・葵ちゃんのお部屋






「ねぇ、葵ちゃんこれはどうすれば良いの?」

「これはここを押してから、こうするの」


 お昼ご飯を食べて少し休憩をしてから、現在私の部屋で配信準備をしています。丁度午前中に二宮マッマにお願いしてたイラスト等が届いたので、今日は試しにテストをしようと思っています。最初は無名なので、配信に来る人もそう居ないと思うので気楽に出来る筈。


「葵ねーたん! これなぁに?」

「これは配信用のマイクだね」

「んにゅ? まいく?」

「エルちゃんにはまだネット関係は難しいかな。そのうち教えてあげるね♪」


 とりあえずエルちゃんを膝の上に乗せて、楓お姉ちゃんの横に座りながら配信機材やアプリ等色々と教えました。楓お姉ちゃんは頭が良いので、私が言う事を直ぐに理解して自分で色々設定をしていますね。


「何かレスポンス悪いね」

「そうだね、じゃあここの設定を変えて見ようか」

「うんうん♪」


 何か久しぶりに真面目な姿の楓お姉ちゃんを見たような気がする。いつもはぐへへ〜とかア゛ア゛ア゛ア゛ア゛とか発狂している変態で残念なお姉ちゃんだけど、今日は別人の様ですね。


「良し、一通り設定は出来たかな。でも、雑談配信って何を話せば良いのかしら?」

「適当で大丈夫だよ。わりとリスナーさんの方から話題振ったりしてくれるから自然に話せるよ」


 流石のお姉ちゃんも少し緊張している様ですね。まあ、私も最初は緊張してたから気持ちは分かるよ。


「ねぇ、お姉ちゃん......何で私の胸揉んでるの?」

「だって、葵ちゃんのお胸揉むと緊張和らぐかな〜って♪」

「あぁ、全然緊張してなかったのね......」

「葵ちゃんの胸を揉みながら精神統一よ♪」


 この調子なら問題無さそうですね。いつもの変態さんです。


「なにしゅるの?」

「配信......と言ってもエルちゃんにはまだ分からないよね。今から楓お姉ちゃんがお喋りをするから、静かにしないとダメなの」

「はいちん!」

「はいちんじゃないよ。配信ね♪」


 エルちゃんは本当にいつも目をキラキラとさせて、元気一杯ですね♪ 好奇心旺盛なお年頃♪


「んん〜名前どうしようかしら」

「西園寺エリカとか?」

「良し、それで行こう!」

「え、そんな即決で良いの?」

「葵ちゃんが考えてくれた名前だもん♡」


 そんなこんなで、楓お姉ちゃんのVTuberキャラの名前が決まってしまいました。まあ、キャラ絵は西園寺モモネの大人バージョンの様な美しい女性と言った感じのイラストですね。


 黒髪に猫耳を生やした艶のある長い髪の毛。しかも、爆乳......リアルも2次元も恐ろしい程のサイズの大きさのお胸を誇るお姉ちゃんは、ある意味最強かもしれない。


「お姉ちゃん、私は裏声でサポートするからね。メインはお姉ちゃん......西園寺エリカだからね。それと配信中は、個人情報に繋がる事は言ったらダメ、念の為配信機材の周りは何も映らないように物は置かない事。前に配信事故で部屋の一部が映った事があったから......」

「うん、気をつけるね♪ 良し! 頑張るぞ〜♪」

「かえでねーたん、がんばえ!」

「エルちゃんありがとう♡」


 いよいよ楓の初配信が始まろうとしていた。

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