第105話 喫茶ラフォーレ
◆エルちゃん視点
「エルちゃん♡ んん〜♡ スリスリ♡」
「あ、あおいねーたん?」
「やっぱりエルちゃん抱いてると落ち着く♪ 2日間ぶりのエルちゃんだ♡ うふふ♡」
現在僕達はかえでねーたんのオススメするお店へと向かって居るのですが、かえでねーたんに抱っこされたと思えば、今度はあおいねーたんが僕を抱っこしているのです。僕は地面に足を付ける事無く、たらい回しにされております。抱かれるのは嬉しいのですが、通行人の方達がすれ違いざまにニッコリと微笑みながら見てくるのが、何だか少し恥ずかしい.......
「2人ともきゃわいい♡ 葵ちゃん、エルちゃん、こっち向いて♪ はい、カマンベールチーズ♪」
「何故カマンベールなの.......」
楓はスマホのシャッターを何十回も押して、葵ちゃんとエルちゃんを撮りまくった。
「お姉ちゃん、後でその撮った写真送っといて〜スマホの待ち受けにするから♪」
「は〜い♪ あらあら♡ エルちゃん赤ちゃんみたいだね〜♡ ばぶばぶでちゅかぁ?」
はっ.......!? し、しまった。最近無意識の内にやってしまう癖なのですが、親指を何故か口で咥えてしまうのです。外でおしゃぶりをするのは恥ずかしいので今は外していますが、何だかお口が寂しくて親指を咥えちゃう癖が最近ついてしまったのです。この癖を早く治さなければ.......ううぅっ.......穴があったら入りたい気分だ。
「つんつん〜♪ エルちゃんは、まだまだ赤ちゃんだねぇ〜甘えん坊さん♡」
「むむっ!? ボク、あかちゃんじゃない! りっぱな.......ちんち!」
「あらあら♪ 葵ちゃん、エルちゃんは立派なち〇ち〇だそうよ♪」
「ええ〜エルちゃんえっちだね♡」
「ちがうの! ちんち! もう!」
「うふふ♡ そんなムキになっちゃって〜エルちゃん可愛い♡ 頬っぺたプニプニ〜♪」
かえでねーたんとあおいねーたんに弄ばれながら、気付けば目的地のお店へと到着しました。駅から歩いて徒歩10くらいの所に、お洒落な雰囲気の赤煉瓦の建物があります。
「着いたね。入るのは久しぶりかしら?」
「そうだね.......【喫茶・ラフォーレ】。ご飯やスイーツは美味しいんだけど、店主が癖強いのよねぇ〜まあ、入ろっかお姉ちゃん」
ん? かえでねーたんもあおいねーたんも何故そんなに身構えて居るのだろうか? まさか、この立派なお店の中に新手の変態さんが居るのかな? 今思えば、僕がお姉さん達の家に住み始めてから、変態.......個性が強いと言えば良いのでしょうか? 僕が出会って来た人達の中で、まともな人があんまり居ないような気がします。たまたまなのかもしれませんけど。
―――そして、僕達はお店の扉を開けて中へと入りました。
「おや? これはこれは! 楓お嬢様に葵お嬢様! ご機嫌麗しゅう。お久しぶりでございますね♪」
「お、お久しぶりですね♪」
「姫島さん、また凄い場所に居ますね.......」
ふぁっ.......何か青髪の眼鏡を掛けたお兄さんが、冷蔵庫と壁の隙間に挟まって悶えている。これは一体どういう状況なんだ!?
「おやおや? そちらの小さなお姫様は?」
「色々あって、私の家族になった妹の一ノ瀬
「そうですか! これはこれは.......エルお嬢様、お初にお目に掛かります。この【喫茶・ラフォーレ】を経営している姫島・ブリュッセル・ローレライと申します♪ 以後お見知りおきを」
「ふ、ふぇ.......え、えりゅです」
「何と愛らしいのでしょう.......エルお嬢様、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ♪」
お姉さん達がドン引きする理由が何となく分かりました。この人はやばい、マジでやばい。他の人とは違う只らならぬオーラを身にまとっていますね。僕には分かるぞ.......姫島さんの包帯で巻かれた右腕、片目には眼帯.......頭には何ヶ月も洗濯してなさそうなおじさんが穿きそうなパンツを被っています! これは歴戦の猛者に違い無い!
「かえでねーたん、あおいねーたん.......あれ」
「こらこら、エルちゃん指を差しながら姫島さんの事をあれと言っては駄目だよ?」
「葵ちゃん.......前にお会いした時よりも姫島さんレベルアップしてない? やばい方に」
「お姉ちゃん、私の感覚がおかしいのかもしれないけど、どんな変態さんが出て来ても何事にも動じず冷静な自分がいるよ。まあ、姫島さんも一種の個性だと思えば.......」
エルちゃん達は冷蔵庫と壁の隙間に挟まっている不審者の様に息を荒げたお兄さんをじっーと見つめていた。その視線はまるで汚物を見るかのような憐れみの目である。
「あはぁん♡ はぁ.......はぁ.......この壁と冷蔵庫の隙間が堪りませんねぇ♡ この狭さ、まるで実家のような安心感♡ 僕の身体が圧迫されてるこの感じ.......至高の絶対領域! 控えめに言って、超ぎもぢぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!」
「お姉ちゃん、帰ろう.......」
「そ、そうね.......」
「お嬢様方! お、お待ち下さいませ! どうか御無礼をお許しくださいませ。さあさあ、お席へご案内致します♪」
これはまた癖の強い人だな。でも、この人は何だか純粋な変態と言う感じがする。やばい事には変わり無いのですが、この人からは素直さに誠実さが垣間見えるような印象を受けます。もしかしたら、話してみると案外普通のお兄さんなのかもしれません。頭にパンツ被って壁に挟まって興奮してる所さえ目を瞑れば問題無し? それに僕が今まで出会って来た変態さん達は、みんな優しくて良い人ばかりでしたからね。
「ぐはっ.......だ、駄目だ! 鎮まれ、我が右腕よ!」
「ふぇ? ひめじましゃん、どうちたの.......!?」
「エルお嬢様、私の右腕には邪悪なる黒炎竜アズルガンドが封印されているのです。私は
「こくえんりゅ.......!? かえでねーたん! あおいねーたん! たいへんなの! ちぇかいのききなの!」
まさか、このお兄さん.......あの伝説の解放者と呼ばれる勇者パーティーのお人だったのか!? あの右腕にはきっと光り輝く紋章が浮かび上がっているに違い無い。か、カッコイイ!
「フハハハハ! 来たるべき
「あ、姫島さん。フルーツの盛り合わせとイチゴパフェ3人分下さい」
「ぐふふ、禁断の果実の盛り合わせと赤き血染めのホワイトラプソディを3つだな。心得た! おい、我が妹よ! 仕事(注文)が入ったぞ!」
「了解!」
え、何かお姉さん達普通に対応してるぞ? 何でしょうか、この温度差は.......お姉さん達のスルースキルがレベル上がってる? そして、奥からもう一人綺麗な女性の人がやって来ました。
「エルちゃん、あの方はドMな変態さんの上に不治の病、【厨二病】を患ってるの。だから気にしないで」
「ちゅーにびょう?」
「うん、あれは真似しちゃ駄目よ?」
「ふぇぇぇ.......」
でも、あの眼帯カッコイイなぁ.......僕も付けてみたい。
「ふぅ.......危うく妄想.......暴走する所でした.......おっと、妹の自己紹介がまだでしたね」
姫島は眼帯に手を当てながら、奇行種の様なポーズをキメながら妹を紹介する。
「調理担当の|姫島・ロレンティーナ・カナ! 料理の腕はピカイチ! そのレパートリーは数知れず。私の自慢の妹なのだ!」
「やっほー! 見ないうちに楓ちゃんも葵ちゃんもまた可愛くなっちゃってぇ〜アホで愚かなお兄ちゃんがご迷惑をお掛けしてごめんなさいね。あら? 楓ちゃん、そちらのお嬢ちゃんは?」
「佳奈ちゃんお久しぶりね♪ こちらは私の妹の一ノ瀬愛瑠ちゃんだよ♪ ふふん♪ 可愛いでしょ!」
「きゃわいい! 楓ちゃんの妹さんかぁ〜あ、私の名は
「ボクえりゅなの! よろしくなの!」
「あらあらぁ〜元気に挨拶出来る何て凄いね! しかも、ボクっ娘.......」
何だ、妹さんの方はまともな人じゃないか。しかも、長くて綺麗な青髪と眼鏡が似合っている可愛いお姉さんだ。毛先だけ色が白色.......変わった髪の毛の色ですね。
「美少女三姉妹とか羨ましいなぁ〜うちのお兄ちゃんとエルちゃん交換しない?」
「謹んでお断り致します♪」
「ぐふっ.......葵ちゃん、良かったら私の妹に.......ええ!? 良いの!? やったあ!」
「ちょっ!? 佳奈さん、私何も言ってないよ!?」
「佳奈さん、葵ちゃんとエルちゃんは私の妹です! 誰にも渡しませんから!」
ぐぬぬっ.......!? かえでねーたん、くるちいよ。抱くのは良いけど、かえでねーたんのお胸で窒息死しちゃう!
「エルちゃんって、お人形さんみたいに大人しくて可愛いね! 楓ちゃん、私も少しエルちゃんを抱いても良いかな?」
「良いですよ〜エルちゃん、佳奈お姉さんがエルちゃんの事を抱っこしたいみたいだよ♪」
「んみゃっ.......!?」
最近思うのですが、僕には選択権と言う物があんまり無い気がします。かえでねーたんやあおいねーたんのお願いや命令には逆らえません。まあ、逆らおうとも思わないのですが、僕はみんなの抱き枕と化している気がする。
「エルちゃんきゃわよ! むぎゅう♡ くんくん〜ぷはぁ! リアル美幼女ちゃんの匂い生き返るわぁ♡ 抱き心地は至高の領域。文句無しの100点満点よ!」
「ぐぬぬ.......!? かえでねーたん! た、たちゅけて!」
「エルちゃん純粋だね〜ほれほれ♪ もう♡ 遠慮しなくて良いんだよ〜あ、お姉ちゃんがお手製のパフェや料理作ってあげるね♡ お金は要らないから、その代わりにエルちゃんを愛でさせて♡」
「お、おい.......妹よ」
「
「我が妹よ、本名で呼ばないでくれ。それと時間長くないか!? ほら、お客様にパフェとフルーツの盛り合わせを早く提供するのだ」
「うぐっ。そ、そうね.......エルちゃん、食べ終わった後に私のお部屋に遊びにおいで♡ お姉さんと2人で良い事しよ♡」
「ふぇ!?」
前言撤回です! この佳奈お姉さんと言う方も僕を抱き枕にしようとしている種類のお姉さんです! 僕はどうして女性と会う度に抱かれるのでしょうか? 僕が幼女だからなのか? この世の中ロリコンが多過ぎますよ!
「エルお嬢様、我が妹が迷惑を掛けたな。お詫びに私のお手製のブライト・オブ・ダークネス(眼帯)を進呈致しましょう」
「ぶらいと? だくねちゅ?」
「ふふっ.......フハハハハ!!! ゲホッ.......ゴホッ.......!? 失礼した。さあ、お受け取り下さいませ」
ふぇ〜何か良く分からないけど、カッコイイ眼帯を貰えました! 僕も一流の冒険者を目指す者として、このアイテムはきっと僕をイケメンにしてくれるアイテムに違い無い。これをすればかえでねーたんやあおいねーたんも僕の事を可愛いでは無くて、男としてカッコイイと言って貰えるかもしれぬ! それならば.......
「ひめじましゃん! あいあと!」
「ぐふっ.......ま、眩しい.......エルお嬢様の純粋な愛らしさが眩しすぎて、私の身体が消滅してしまいそうです」
エルちゃんは姫島から眼帯を受け取って、早速貰った眼帯を左目に付けて楓達にドヤ顔でお披露目をした。
「ふははは! わがなは.......えりゅ! かいほうちゃの.......えっと、ありゃ? なんだっけ?」
あ、しまった。この空気は.......もしかして僕盛大に滑ったかな? カッコ良く言ったつもりがグタグタに.......セリフ忘れちゃった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛エルちゃん可愛いぃ♡」
「お姉ちゃん落ち着いて! 傷はまだ浅いよ! ほら、一旦深呼吸をして!」
「すぅ〜はぁ.......大丈夫、少し落ち着いたわ」
「んぅ? かえでねーたん?」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「楓お姉ちゃん!? エルちゃん! 眼帯を早く外して! お姉ちゃんが天に召されるから! 早く!」
ふぇ.......何故そうなるのだ!? え、僕そんなつもり無いのだけど.......何をしても可愛いとばかり言われてしまう。眼帯付けただけで、かえでねーたんはいちいち大袈裟ですよ。
「眼帯を付けたエルちゃん.......何と恐ろしいのでしょう。葵ちゃん、帰ったら通販で眼帯と猫耳やメイド服等のコスプレセットを買いましょう。家でエルちゃんに着せ替えをして、私達の可愛いに対する耐性を上げる特訓をするのよ!」
「お姉ちゃん落ち着いて、頭大丈夫?」
「葵ちゃんが辛辣ぅ.......!?」
「てか、それお姉ちゃんが純粋にエルちゃんにコスプレさせたいだけでしょ.......まあ、買うけどさ」
「やた! 帰ったらボタンポチポチして買っちゃうぞ〜エルちゃんを可愛い服に着替えさせて.......あんな事やこんな事を.......ぐへへ♡」
うん、今のは聞かなかったことにしよう。てか、僕は着せ替え人形じゃないですよ!? 僕じゃなくて、かえでねーたんやあおいねーたんのコスプレを見てみたいです。あ、でもお姉さん達はお胸がデカすぎてサイズが合わないのかもしれないな。
「ごほんっ.......お嬢様方、落ち着きましたか?」
「あ、姫島さん。すみません.......」
「お姉ちゃん暴走し過ぎだよ。ほら、エルちゃんをこちらに頂戴」
あおいねーたんがどさくさに紛れて僕を抱いています。椅子が3つちゃんとあるのに、僕の座る場所はかえでねーたんかあおいねーたんの膝の上らしい。
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