第79話 下着泥棒、再び

 




 ◆エルちゃん視点





「エルちゃん、ここに100円玉が一枚あります。一つ108円のみくるちゃん★ウエハースは買えるでしょうか?」

「んん.......かえゆ!」

「うふふ♡ 残念でした♡ 正解は買えません」

「ぐぬぬ.......むずかちいの.......」


 お金の計算は勉強すればするほど、訳が分からなくなって来ました。現在かえでねーたんのお膝の上に座りながら、テーブルの上にお金を出してお勉強をしています。僕の向かい側の席には、あおいねーたんが穏やかな視線でボクの方を見ています。


「エルちゃん頑張って!」

「良し! 今度は私が問題を出そう! ちょっと待っててね♪」


 するとあおいねーたんは、台所の方へと何かを取りに行きました。少しの間かえでねーたんに頬っぺたをムニムニと触られながら待っていると、あおいねーたんはとんでもない食べ物を持って来たのです!


「ふふ~ん♪ 季節限定品、一つ500円の生ホイッププリンアラモードだよ♪ 私の出題する問題に答える事が出来たらあげちゃうよ~♪」

「むむっ!? なにしょれ!? おいちそう!」

「んん? エルちゃん欲しいの?」

「ほちい! たべたいぉ!」


 あおいねーたんが、僕の目の前まで豪華なプリンを持って来たのです! 思わず反射的に両手で取ろうとしたら、あおいねーたんはプリンを引っ込めてしまいました。僕を弄んでそんなに楽しいのですか!?


「あおいねーたんのいじわるぅ! もういっしょに、よるトイレについてってあげないもん!」

「あれれ~? 夜1人でトイレに行くのが怖くて、お姉ちゃんや私を起こして、一緒に手を繋いで行こうと言って来るのは、何処の怖がりさんだったかなぁ?」

「..............」

「あ、そうえばお姉ちゃん! エルちゃんね~こないだお姉ちゃんがお仕事行ってる時におもらしを.......」

「はわっ.......!? わわっ!! ボクなにも.......しらないもん!」

「くすくす♪」


 あおいねーたんに、僕がおもらしをしてしまった事をかえでねーたんには内緒にしといて欲しいとあれ程言ったのに! しかも、ちゃんと賄賂としてうめぇ棒を2本もあげたのですよ!? あおいねーたんの裏切り者おおお!!!


「え? なになに? お姉ちゃん、物凄く気になるんだけどなぁ」

「あぁ♡ 本当にエルちゃん弄るの面白いな♡ えへ♡ お姉ちゃん、何でも無いよ♪」

「そうなの? なら良いけど.......」


 た、助かりました.......僕がおもらしをした事がバレてしまったら、かえでねーたんに今後冷たい目で見られるかもしれません。でも、あおいねーたんはちゃんと内緒にしてくれたので良かったです。


「さあ、気を取り直して問題ね♪ ここに100円玉が1枚、50円玉が2枚、1円玉が5枚あります。全部合わせるといくらになるでしょう~エルちゃんにはまだ難しいかなぁ?」

「ボクがんばりゅよ!」


 100円玉が一枚.......この穴の空いた50円玉が2枚.......最後に1万円玉が5枚。ん? これがこうで.......いや、落ち着くんだ。ここは冷静に.......この難問を解くには、まずこの1万円玉を先に数えて.......


「いちまんえんだま.......んぅ? 5?」

「エルちゃん頑張れ~♡」


 100円玉と50円玉を足したら、200円? でも、この1万円玉を5個足したら.......どうなるんだ? 


「.......」

「やっぱり足し算とか引き算はまだ早かったかな?」

「んぅ.......わからないの.......」

「そかそか♪ まあ、これは私が少し意地悪だったかな♪ 正解は205円でした♡ さて、そろそろ寝る時間だから寝ようか♪」

「プリン.......」

「エルちゃん♪ 明日一緒に食べようね♪ もう歯磨きもしちゃった事だし」


 ぐぬぬ.......プリン食べたい.......今すぐに食べたいのおおおお!!


「エルちゃん~お姉ちゃん達とそろそろお寝んねしましょうね♡」

「はい、プリンは明日ね♪」

「んみゅ.......わかったの」

「エルちゃん良い子良い子♡」


 もう明日まで待てません! よし、今宵ボクは.......





 ★一ノ瀬家・寝室★





「あらあら♡ 赤ちゃんがここに居ますね~」

「モフモフのパジャマにおしゃぶりを咥えさせたエルちゃん、超絶可愛い!」


 僕は現在、かえでねーたんとあおいねーたんに弄ばれて居ます。寝る前に色々なパジャマを着せられて、更にはおしゃぶりと言う魔道具を口に咥えています。どういう物なのかと言うとかえでねーたん曰く、これを付けると強くなれるらしいのです。なので、僕は毎日寝る前に欠かさずに付けて居ます。付ける度にかえでねーたん達が目をハートにさせながら、僕に頬っぺたスリスリしたりムギュっと抱きしめて来ます。


「あぅ.......」

「エルちゃん♡ 今日も私に甘えて良いんだよぉ~私はエルちゃんのお姉ちゃんでもあり、ママでもあるんだから♪」

「お姉ちゃんばかりずるいよ! 今日は私がエルちゃん抱いて寝る日だよ!」

「やだやだやだ! じゃあエルちゃんと葵ちゃん事抱いて寝るもん!」


 かえでねーたんもあおいねーたんも相変わらず可愛いですね♪ こうして見ると僕が2人のお兄さんと言う立ち位置でも良いかもしれません。今日は僕が大人の対応と言うものを見せてあげましょう。


「ふたりとも、おちちゅいて! よちよち♪」


 僕がお姉さん達の頭を優しく撫でてあげると2人は.......


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛もう無理ぃっ! しゅきしゅき! だぁいすき♡」

「楓お姉ちゃん落ち着いて!? エルちゃんったら.......今日は責任取ってもらうからね!」

「ふぇ!?」


 頭を撫でただけで大袈裟だと思いますが、何やらデジャブの予感です。かえでねーたんは、目をハートにしながら僕に抱き着いてチュッチュして来て、更にはあおいねーたんは服を脱いでおります。


「ほ~ら、エルちゃんの大好きなお胸だよ~」

「ほほう、葵ちゃんやる気ですなぁ♪ じゃあ私も脱いじゃお♡」


 はわわっ.......!? 今日はいつもより激しい気がします! 2人とも服を脱いで、お姉ちゃん達の大きなたわわに実った胸が.......乳房が丸見えです! いつも見ているとは言え、僕の内心は毎日ドキドキします。顔が赤くなってるのが自分でも分かります。


「んにゅう!?」

「エルちゃん、私の胸の方が大きいでちゅよ~♪ チューチューして良いんだよ♪」

「楓お姉ちゃんの胸より、私の胸の方が吸い心地や揉み心地最高だよ♡」


 左右からお姉ちゃん達の大きなお胸が迫って来ております。逃げようとするとお姉さん達が僕を逃がさないように身体をがっしりと押さえております!


「「エルちゃん♡ 責任取ってね♡」」


 今日の僕は寝る事が果たして出来るのでしょうか.......






 ◆下着泥棒のカズオ視点






「兄貴! 準備は万端ですぜ!」

「ふふっ.......今宵はクリスマスが近いと言う事で、サンタのコスプレ衣装を身にまといながら作業に取り掛かるぞ。今回は再び一ノ瀬家に侵入するぞ。再戦だ」


 今宵の俺達は一味違うのだ。下着泥棒だって、ちゃんと季節に合わせたコーデは勿論する。夏場はビキニを付けて、バニーガールの格好をする時もあった。何故こんな格好をするのだと? それはもしバレた時に、相手に精神攻撃を喰らわせて、その隙に逃げると言う戦法を取るためだ。生半可な気持ちでは、下着泥棒の業界を生き残る事など出来やしない。恥じらいも全て捨てて、頭に下着を被って渋谷を歩く積りの心構えで居ないと、この業界は生き残れないのだ。俺達はこの道のプロッフェッショナル。美少女が穿いた下着を手に入れる為ならば、俺達は一切妥協しない!


「兄貴! 前回の失敗を踏まえて、今回は猫用の対策に睡眠薬入りのチュールと悪霊退散グッズも持って来ましたぜ!」

「おう! ナイスだマサオ! 流石はオレの相棒だぜ!」

「ありがとうございます!」


 今日こそは必ず成功させて見せる! 記念すべき100枚目の下着コレクションは、一ノ瀬家の美少女三姉妹の一番下の子.......幼女ちゃんのパンツにするんだ。余裕があればお姉ちゃん達の下着も勿論頂くつもりである。


「あぁ.......幼女ちゃんのパンツを手に入れたら、思いっ切り下着に顔を埋めて深呼吸したいぜ!」

「兄貴、俺は幼女ちゃんのパンツを頭に被って帽子代わりにしたいですぜ!」

「おいおい、マサオ。それじゃまるで、俺達が救いようの無い変態みたいじゃないか」

「人間の本質はみんな変態です。俺らは逆に変態パラメータを一周振り切って、むしろ健全なんですぜ」


 そうか、逆に俺達は健全なのかもしれないな。俺達はただ歴史を感じてるだけなのだ。その美少女ちゃんが穿いたパンツを見るだけで、俺はどれだけの年月穿いていたのか何となく分かる。そのパンツが少しでも汚れているとそのパンツは国宝級へと進化するのだ。ただし美少女に限る。


「うっ.......急にトラウマが蘇って来ました.......」

「落ち着くんだマサオ! こないだのあれは悪夢だったんだよ! 早く忘れるんだ!」


 マサオの気持ちも良く分かる。こないだ下着の回収に向かったのは良いが、そのパンツを穿いている持ち主が問題だったんだ。


「だって.......あんなゴリラが穿いているとは思わなかったんですよ! おぇぇ.......吐きそう」

「あれは確かにやばかった.......」


 明智商店と言う店の3階のベランダに、若い乙女が穿くような下着が干してあったのだ。その店に良く出入りをする美少女店員さんが居るのだが、俺はその子のパンツだと思って居たのだが、手に入れた後に事態は発覚したのだ。そのパンツの持ち主は、早乙女キララと言うおゲイの方だったんだ!


「マサオ、次はもう間違えはしない。なんてたって、あの一ノ瀬家には美少女しか居ないんだぞ? 幼女ちゃんのパンツは見ればすぐに分かるし、どれを取っても大当たりだ!」

「ですね。こないだのあれは悪夢だったんだ.......兄貴! 必ず成功させやしょう!」

「おうよ!」


 下着泥棒.......布回収業者の仕事の時間だぜ!

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