第28話 記憶が戻った幽霊

 

 ◆楓視点


「さてと、お家に着きましたよ〜エルちゃん♪」

「――――――。」


 家に帰る道中にエルちゃんは目をごしごしと擦って、少し寝惚けていたので抱っこして連れて帰りました。エルちゃんには申し訳け無いことをしましたね。私が家に残ってエルちゃんと一緒に寝んねした方が良かったのかもしれません。


「私はアイス食べて寝ようかな。葵ちゃん結構がっつり買ったね」

「うん! お腹空いたもん! まあ、私太らない体質だし!」

「まあ、程々にね」


 葵ちゃんはリビングの机の上に唐揚げ弁当とサラダチキンにチョレギサラダを並べています。私も買ったミントのアイスと飲み物を出してから、エルちゃんのパンとチキンも机の上に並べました。


「――――――!!」

「あらあらぁ? エルちゃんお眠じゃなかったのでちゅか〜?」

「――――――!! ――――――!!!」


 エルちゃんはウトウトしていたのですが、机の上のご飯を見て覚醒してしまった様ですね。背伸びして机の上のパンやチキンを取ろうと必死です♪


「そんなに慌てなくても大丈夫でちゅよ〜エルちゃん♡ 私の膝の上においで♪ ほら、大好きなオレンジジュースあるよ〜」

「――――――!!」


 エルちゃんの目の前にオレンジジュースをチラつかせていたら、見事に可愛いお姫様が釣れました♡ 私はそのままの勢いで抱っこして膝の上にエルちゃんを乗せます。


「あぁっ! お姉ちゃんずるいよ!」

「うふふ……エルちゃんは早い者勝ちよ!」


 葵ちゃんは頬を膨らませながら渋々と唐揚げ弁当の蓋を開けました。


「エルちゃん〜葵お姉ちゃんの膝の上に来るともれなく唐揚げが付いてくるよ〜♪ ほれほれ〜」

「――――――!!」

「あ、葵ちゃんずるい! 唐揚げで釣るとは……エルちゃん? オレンジジュースとさっき買ったチキン食べましょうね〜お姉ちゃんが食べさせてあげる♡」


 だが、時既に遅し。葵ちゃんがエルちゃんの口元に唐揚げを持って行って、エルちゃんは小さなお口で一口ぱくりと食べてしまいました。


「――――――!! ――――――!?」

「くっ、エルちゃんは渡さないわよ! 秘技! トゥエンティーチキンのトゥエチキよ!」

「やるな、お姉ちゃん」

「葵ちゃんごめんね。私ね、妹抱かないと死んでしまう病気なの。欲を言えば葵ちゃんとエルちゃんどちらも抱きたいなぁ」

「―――!!」


 エルちゃんは物凄く美味しそうにチキンをもぐもぐと食べてご満悦の様子です。私と葵ちゃんはエルちゃんのそんな姿を見て、心肺停止に陥りそうでした。


「私、今天に召されるかと思った」

「チキン1つでこんなに幸せそうに食べる何て……尊いでは最早言い表せないよぉ」


 顔が自然とニヤけてしまいます。こんな光景見たら、誰だってロリコンになってしまいますよ! エルちゃんが出歩いたりでもしたら、ここら辺の住民は不治の病「ロリコン」に恐らくかかってしまうでしょう。このロリコンウイルスは一度掛かったら治る確率は0%です。このウイルスによって、何年か前に流行ったコロナウイルスも死滅してしまうかもしれませんね。




 ◆とある幽霊視点




「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ何て尊いのかしら!?」


 私はドアの隙間からこっそりと美少女三姉妹のお食事の様子を観察していました。小さい幼女ちゃんにお姉さん達がチキンや唐揚げを食べさせて、息を荒らげています。


「分かる! 分かるよお姉さん達! 分かりみが深い! この幼女ちゃんマジやばば! 妹ちゃん属性やロリ属性に萌え属性。どんだけ属性あるのよ! 私を成仏させる気かしら!? もういい加減にして! 襲っちゃうわよ!?」


 ずるい、私も混じりたい! 目の前に美少女や美幼女が居るのに見てるだけ何て……ンヒィィィィィッ!!!


「あのボクっ娘幼女ちゃんが居るだけで、世界中の紛争や戦争とか根絶されそう。そう、何たって可愛い幼女は世界を救うってね」


 あぁ、羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましいぃっ!!! 私だって……


 ――幼女ちゃんの頭を撫で撫でしたい


 ――幼女ちゃんにお姉ちゃんと呼ばれたい


 ――幼女ちゃんと一緒にお風呂入ってムフフな事がしたい


 ――幼女ちゃんと一緒にベッドで一つになりたい


 ――幼女ちゃんと手を繋いで一緒にお出掛けしたい


 私の欲望が次から次へと滝のように流れ出て来ます。そうか、私は可愛いに飢えていたんだ。全て思い出しました。私の名前は……



「私の名前……相澤 奏あいざわ かなでだ」


 そうだ、私トラックの事故で死んだんだ。道端に歩いている幼女を助ける為に飛び出したんだ。


「あぁ、全て思い出した。そうか、私は……」


 でも、何故私に未練がある? 何でこうも彷徨っているの? 記憶を取り戻したと同時にまた謎が出来てしまいました。


「まあ記憶を取り戻した所で、現状は変わらないわよね……どうせトラックに轢かれて死ぬなら、百合が日常的な男性が居ない異世界に転生したかった……」


 神様……願わくば私を百合しか存在しない世界に連れて行って下さい。もしくは、あの幼女ちゃんの近くに居られるよう生き返らせて下さい! もう、誰とも話せず一人孤独に彷徨うのはもう嫌ですっ!


『そなたのその願い……承った』

「えっ? あんた誰?」


 急に私の視界が暗転したと思ったら、いつの間にか青い世界、どこまでも続く淡い色の海の地平線。そして私の目の前には、全身白い衣服を見に纏った、髭を生やしたエロそうな顔のジジイが微笑んでおりました。


『そなたは……とある幼女を救った。その素晴らしい功績を讃えて、願いを1つだけ叶えてやろう』

「えぇっ!? マジすかっ!?」


 え、マジか。嘘でしょ? 本当にラノベみたいな展開があると言うの? 


「私はそんなに欲はありませんが、しいて言うならば私を美少女にして生き返らせて下さい! ついでに胸も巨乳でお姉さん風が100%雰囲気の美少女ちゃんが良いですね。あ、チートも欲しいですね。様々な可愛い女の子を堕とせるようなチート! それと家族はあそこにいる美少女三姉妹ちゃんで、あのきゃわわな幼女ちゃんのお姉さんになりたいのです! そして他の2人の女の子もグヘヘ……待てよ? こ、これは!? 美少女ちゃん達と4Pでは!? んひょっおおおおっ!! 私を含めて美少女四姉妹!? 夢が広がりますね! そして、今後もまだ見ぬ新感覚美少女ちゃん達を集めて、私は百合を極める!」

『え……? あの……ちょっと落ち着くのじゃ。一つだけ願いを叶えさせるとは言ったけどのお……要望多くない?』


 人生何が起こるか本当に分かりません。もう、興奮しすぎてあそこが濡れてしまいそうです!


「多くないですよ! 老い先短そうな幸薄めなご老人。遠慮しないで、早速お願いします!」

『君は中々失礼じゃな……まあ良い、ごほんっ……まあ、簡潔にまとめると可愛い者になりたいと。そして、あの三姉妹の家族になりたいと言う事じゃな?』

「はいっ! そうです! 是非お願い致します!」

『……分かり申した。その願い叶えて進ぜよう』


 いよいよですね。これから私の百合ハーレムの物語が幕開けです! 待っててね! 幼女ちゃん達! 私が沢山の愛情を持って、愛してあげるんだから! ぐふふ……


『それでは、そなたの人生に祝福があらんことを』


 私は女神の言葉を最後に聞いてから、意識が暗闇に落ちて行きました。



 ◆エルちゃん視点



「おいひぃっ!! 柔らかくて、お口の中でとろけるぅっ! 高級肉恐るべし!」

「――――――♪」

「お姉さん、こんなに美味しい物を食べさせて下さりありがとうございます! ですが……」


 そう、僕はここで1つ別の問題に直面していたのです。


「――――――♪」

「ぐぬぬっ……!? 自分一人で食べれますよ! 僕はもうすぐ立派な大人何ですよ!? 身体は幼女だけど……」


 僕はお姉さんの膝の上に乗りながら、お肉を食べさせてもらっております。その様子はまさに親が雛鳥に餌を与えている様な感じです。少し恥ずかしいです……


「ぬっ!? これは、また新たなお肉!?」


 今度は僕の正面に座っているボブカットヘアーのお姉さんが、僕の口元にお肉を運んで来て食べさせようとしてくれております。


「ごくり……お、お姉さんでもそれは……」

「――――――♪」

「お姉さんの食べ掛けのお肉……それって、間接キスになってしまいますよね!? 僕は紳士です。そのお肉は遠慮しておきますね」


 僕が口を閉じたら、ボブカットヘアーのお姉さんは泣きそうな顔で僕を見つめるのです! お姉さん達はずるいです! そんな顔されたら、もう食べるしか無いではありませんか!


「後で文句言われても知りませんからね! では、っ!?」

「――――――♪」


 何とお姉さんが突然机に身を乗り出して、僕の口元にぶっちゅぅ〜とキスをして来たのです! 僕が驚きの余り唖然としていたら、片方のお姉さんも僕の頬っぺに沢山キスをして来たのです!


「わわっ!? いきなりどうしたのですか!? まさか、その食べ物の中に何か悪い物でも入ってたのですか!?」

「――――――♪」

「―――――――――!」


 2人のお姉さんは目をハートにして、息を荒らげながら僕の耳や頬っぺに唇等にキス攻撃を仕掛けて来たのです!

 僕はお姉さんに背後からがっちりと掴まれており、身動きが取れず為す術なくキス攻撃の餌食となりました。


「っ!?」


 今度はボブカットヘアーのお姉さんがお肉を口に咥えて、僕のお口に運んで来たのです! これは、このまま食べろと言う事なのでしょうか……


「みゃっ!?」


 今度はロングヘアーの妖艶なお姉さんが、僕の耳をはむはむとし始めました。やっぱり、この食べ物の中に何か変な物が入ってたに違い無いです!

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