第10話 楓の友達・真瀬明美 現る!

 

 時刻は朝の9時36分。リビングの机の上にノートと書くものを用意して、エルちゃんとのお勉強の準備はバッチリです!


「お勉強の前に、まずは私の名前や葵ちゃんの名前を覚えてみよう♪ そして自分の名前を書く練習からだね!」

「――――――。」

「よし! 私の名前は一ノ瀬 楓だよ。エルちゃん、楓お姉ちゃんって呼んでみて!」

「―――――――――?」

「あはは……やっぱり分からないよね、紙に漢字と平仮名書いてみよ」


 私は紙に一ノ瀬 楓、一ノ瀬 葵、一ノ瀬 愛瑠と漢字で書いてその下に平仮名も一緒に書いてみました。まずは名前を言えるようにする所からと考えて見ましたが、どうやって教えようか悩ましい所ですね。


「エルちゃん、ここに書いてあるのが私の名前だよ

 ~楓お姉ちゃんって言えるかなぁ?」

「うにゅ?」

「ん〜、まずは下の名前だけでも。私はかえで、かえでお姉ちゃん!」


 私は紙と自分を交互に指をさしながら、エルちゃんに分かりやすくはっきりと聞こえるように、優しく話し掛けてみます。


「………………」

「あはは……どうしよう」


 これは予想していた以上に前途多難ですね。私の教え方が下手だというのもあると思いますが、言語の壁と言うのは物凄く高いハードルです。でも私は諦めません。時間を掛けてでも、エルちゃんに言葉を覚えて貰えるように、頑張ります!


「じゃあ次は……」


 楓が再びエルちゃんに名前を教えようとした時に、ピンポーンと来客を知らせる音が部屋に鳴り響いた。


「誰かしら? エルちゃん、ちょっと待っててね」

「――――――。」


 私は玄関へと急いで向かいドアを開けました。そして来客は私の親友でした。私より歳は1つ上で、名前は真瀬まなせ明美あけみと言う金髪ロングヘアーで、つり目が特徴の明るい女性です。今日は肩を出した青白い半袖に、純白のフリルの付いたミニスカートと言う中々に際どい服を来ていますね。


「やっほー楓!「ラ・クリエール」の新作ショートケーキ、何とか買えたから楓にもお裾分けしようと来ちゃった♪」

「えぇっ!? あの有名店の……良く買えたね。明美ありがとね! せっかくだから上がって行って、今お茶用意するから」

「悪いね~ではお邪魔します♪ ん? 楓、あの子は誰?」


 明美の視線を辿るとリビングのドアを少し開けて、こちらをじーっとエルちゃんが、顔を少し出して見つめていました。


「うふふっ……あの子はエルちゃん♪ 訳あって新しく家族として迎えたの! 可愛いでしょ?」

「え? マジ!? 初耳何ですけど! どういう事かちゃんと教えなさいよ!」

「明美落ち着いて、とりあえず上がって」


 私は明美をリビングへと案内したら、明美はエルちゃんの事を目をキラキラと輝かせながら見つめています。どうやらエルちゃんの事が凄い気になっている様子です。エルちゃんは少し怯えながら、私の後ろに隠れて足をぷるぷると震えさせています。恥ずかしがり屋さんなのかな?


「この子が居るならもう1つケーキ買って来れば良かったなぁ、とりあえずこれ葵ちゃんの分ね」

「ありがとう♪ 葵ちゃん喜ぶわね、お皿に移し替えて冷蔵庫に入れて置きましょう」

「葵ちゃんは今日も配信?」

「そうなの、葵ちゃんも何だかんだ忙しそうだから。でもしばらく休止するみたいよ」

「そっかぁ、まあ有名だもんね……って、休止!?」


 明美から葵ちゃんについて矢継ぎ早に質問が飛んで来たけど、さらっと流しながらお皿とフォークを用意して机の上に並べました。私のケーキを半分個にして、エルちゃんに食べさせようとおもっています。


「エルちゃん? お姉ちゃんの後ろに隠れちゃって、恥ずかしいのかな?」

「まあ、葵ちゃんの件は置いておきましょう。エルちゃん、私は明美って言うんだよ~宜しくね♡」

「――――――!?」

「え、エルちゃん? あれ、言葉がもしかして通じない?」

「明美、そこへ座って。今から事情話すから」


 そして私はエルちゃんとの出会いについて、明美に最初から説明をしました。



 ・・・10分後・・・



「そんな事があるのね……事情は分かったけど、リアルにロリエルフ何て実在するのね。この長い耳は本物みたいだし……と言うか可愛いすぎでしょ! ずるい!」

「ふふっ……エルちゃんはまだ他の人に慣れて無いみたいだから、お手柔らかにね」



 ◆



「この女性は誰だろう……美人さんだけど、目付きが怖い」

「――――――♪」

「ヒィッ……!? ぼ、僕何か無礼をしてしまいましたか!?」


 僕はお姉さんの足にピタッとしがみついて、この女性の様子を伺う事にしました。


「人を殺してそうな目だ……スラムに住んでる時もたまに居たんだよな。こんな感じの雰囲気の人」

「――――――♪」

「え? お姉さん!? 待って下さい! まさか僕を売る気ですか!?」


 僕はお姉さんに抱っこされて、目付きの怖い美人な女性の膝の上に座らされました。女性はニヤニヤとしながら僕の身体に思い切り抱き着いて来ます。僕は怖くて最早借りて来たネコの様な状態でした。


「――――――!!」

「ぐぬぬっ……ひゃあ!?」


 何と美人な女性が僕の頬っぺたにキスをして来たのです! 僕はお姉ちゃんの方へと助けを求めようとしたのですが、暖かい目でクスクスと笑っていました。


「うにゅ……この人いい匂いがしゅる。優しくて大自然の森の良い匂いが……何か付けてるのかな?」

「――――――♪」

「え、これ何? くんくん……っ!? 甘い匂いがしゅる!」


 美人な女性が、箱から何やら甘そうな匂いの食べ物を取り出したのです! そしてそれをお皿に分けた後に、僕の口元に持って来ました。


「っ!? ぼ、僕はそんなので釣られる程甘くは無いんだからね!」

「――――――?」

「え、何でそんな悲しそうな目を……分かりました。食べますよ! ぐぬぬ……えいっ! パクっ!」

「――――――!! ――――――♪」


 僕は意を決して美人なお姉さんから甘い食べ物を一口パクっと食べました。


「ふぁああああ~甘い……美味すぎて語彙力が……何このふわふわとした柔らかい食感に、甘すぎず口当たりの良いクリーム……あぁ」

「――――――♪」

「え? まだくれるのですか!?」


 美人な女性が僕にもう一口美味しい食べ物をくれました。


「んふふ♪ この人見た目は少し怖いけど優しい人だな~しゅき♡」

「――――――♪」


 最初は警戒していた筈なのに、甘い食べ物を食べてから美人な女性に撫で撫でされて、いつの間にか陥落してしまいました。



 ◆



「楓、この子チョロ過ぎない? 最初あんなに私の事警戒してたのに、ケーキ食べさせて上げたら私に抱き着いて来たわよ! めっちゃ嬉しいんですけど!」

「あはは……良かったじゃない。エルちゃん可愛いでしょ?」

「無理! 可愛い過ぎ! 楓、この子私に頂戴! 大切にするから!」

「だ、駄目だよ! 私の妹だから! もう……」

「うふふっ……エルちゃん、はいあ〜んして♡」

「聞いてない!?」


 明美がフォークで、ケーキをエルちゃんの小さなお口に運んで食べさせております。親鳥が雛鳥に餌を上げているような光景です。尊い光景なのですが、ちょっと嫉妬してしまいます!


「――――――♪」

「はぁん♡ 私死にそうかも……エルちゃんの髪の毛サラサラね! 長いお耳がピクピクしていて可愛いし、小さな唇にぱちぱちとしたおめめ、私もこんな可愛い妹が欲しかったなぁ~」


 明美はエルちゃんの可愛いさに最早メロメロです。


「楓、こうもチョロいと知らないおじさんにお菓子貰ったら、エルちゃん着いて行きそうよね」

「まさか……流石に知らないおじさんについて行く何て……」


 私はエルちゃんが知らないおじさんにお菓子に釣られて、ついて行く光景が脳裏を過ぎりました。


「やっぱりお外はまだ駄目ね。もし出るなら私がずっと抱っこしているか、最悪首にリードか何かで……」

「犬か! もう、楓も極端だよね~これは過保護と言うのかしら」

「冗談に決まってるでしょ~やれやれ」

「その割に目が泳いでいるわよ?」


 私は明美の問い掛けにスルーして、話題を変えました。


「あ、そうだ! ケーキ食べ終わったら一緒にエルちゃんの勉強見てくれないかな? 明美どうせ暇してるでしょ?」

「暇とは失礼な! まあ、今日は帰ったら溜まってたアニメを消化しようと思っていただけだから、別に良いけど」

「よし! じゃあ決まりね! エルちゃん~この目付きの怖い美人なお姉さんが、一緒にお勉強見てくれるそうだよ~♪」

「目付きが怖いのは余分! しょうがないわねぇ……うふふっ……エルちゃん♡」


 明美はそのままの勢いでエルちゃんに抱き着いて頬をスリスリとしています。エルちゃんは、顔を赤くして少し恥ずかしがっている様子でした。羨ましいです……


「こほんっ……それにしてもこのケーキ……おいひい~♪」


 私はケーキの味をよく噛んで味わって食べました。そして、エルちゃんの口元にフォークでケーキを持って行ったら、案の定一瞬でした。エルちゃんは食いしん坊さんですね~♪

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