第9話 初めてのアイス
★一ノ瀬家 リビングにて★
「エルちゃん! 凄いよ!
「うん! 本物の魔法少女みたいで格好良かったよ♪」
私と葵ちゃんでエルちゃんを盛大に褒めたのですが、どうやらエルちゃんの様子が少しおかしいのです。
「エ……エルちゃん? どうしたの?」
そして次の瞬間、エルちゃんの大きなぱちぱちとした愛らしい瞳からポロポロと涙が零れます。エルちゃんは腕でごしごしと涙を拭きながら俯いてしまいました。私と葵ちゃんは一瞬焦りましたが、何だろうと考えたら直ぐに原因が分かりました。
「エルちゃん、よしよし♪ おもちゃ壊れちゃったんだね、エルちゃんが怪我しなくて良かったよ~♪」
「そうだよ! 魔法少女★みくるちゃんのステッキまた買ってあげるから元気だして!」
エルちゃんは、壊れたおもちゃのステッキを宝物のように握り締めて落ち込んでいました。どうやらおもちゃのステッキが相当お気に入りだったのでしょうね……
「ふえぇ……ぐすんっ……うぅっ……」
「エルちゃん、よしよし……ほらおいで♪」
エルちゃんはトコトコと私の前までやって来ます。私は泣いているエルちゃんを優しく抱っこして、泣き止むまでよしよしとあやしました。エルちゃんには申し訳ないのですが、うるうるとした目で落ち込んでいるエルちゃん……控えめに言って、可愛いです♡
「お姉ちゃん? 顔が不審者みたいだよ?」
「なっ!? お姉ちゃんは至って普通だよ! エルちゃんが可愛いからって、決してニヤニヤしてた訳じゃないからね!」
「お姉ちゃんってさ、美人なのに何か残念だよね……」
「エルちゃん♡ ディフフ……」
「あっちゃあ~ダメだこりゃ」
そして泣いているエルちゃんを見て葵ちゃんは、冷蔵庫から甘いアイスクリームを持って来ました。
「エルちゃん~♪ ほ~ら、甘いアイスクリームだよ!」
「うぅっ……? ――――――?」
「葵ちゃんナイス! エルちゃんきっと喜ぶわね♪」
何と! 泣いていたエルちゃんがアイスクリームに興味津々で、エルちゃんの長い耳がピクピクと動いています。
「あらあら~エルちゃんって反応が分かりやすいね♪」
「ふふっ……そうだね~エルちゃんは何味が好きなのかな? バニラとチョコとクッキーがあるよ」
「う~ん……エルちゃんなら何でも食べそうだけど、チョコやクッキーとか? 子供が好きそうな味だと思うのだけど」
「とりあえずエルちゃんに選ばせて上げよう」
エルちゃんはアイスに興味津々ですが、少し警戒もしている様です。指先でツンツンとアイスのカップを突っついては目を見開いて驚いていました。冷たいのがそんなに珍しかったのかな?
「エルちゃん♪ これ食べても良いよ~どれが良いかな?」
「――――――!!」
「あっ! エルちゃん!? アイスのカップは食べられないよ!」
エルちゃんはアイスのカップを小さなお口で、パクっと咥えてもしゃもしゃしていました。どうやら食べ方を知らないみたいですね。私はエルちゃんの前でクッキー味のアイスの蓋を開けて、こうやって食べるんだよと実演して見せました。
「――――――?」
「うん! そうだよ! エルちゃん凄い! 葵ちゃん! 私の妹は天才だよ!」
「お姉ちゃんったら、大袈裟だよ」
エルちゃんは見様見真似で蓋を開けようとしています。葵ちゃんは苦笑いしてたけど、私は確信しました。将来エルちゃんは凄い子になると!
「――――――!? ――――――!!」
「あらまぁ♡ 開かないの?」
「お、お姉ちゃん……エルちゃんのこの姿動画撮りたい……か、かっ……可愛い~♡」
「ふふっ……じゃあ、もう少し見守って見ましょうか♪」
エルちゃんはアイスの蓋を開けようと必死な顔で、ぐぬぬっ!と言いながら手に力を入れています。私と葵ちゃんで、その様子を暖かい目で観察していました。
・・・数分後・・・
「ふぇ……ぐすんっ……」
エルちゃんはチョコ味のカップアイスの蓋を開けようと必死に頑張っています。そして、なかなか開ける事が出来なく次第にエルちゃんは、泣きそうな顔をしながら私達の方へと顔を向けて来ました。庇護欲が……もう思い切り抱きしめてあげたいです!
「お姉ちゃん、そろそろ開けてあげよう。エルちゃん泣きそうだよ」
「はっ!? エルちゃんの可愛いさに見蕩れてた……エルちゃんごめんね、お姉ちゃんにちょっと貸して見て」
「――――――!?」
「え? エルちゃん? 大丈夫だから、開けてあげるだけだよ~? エルちゃんのアイス食べようとは思って無いからね? このままだとアイス食べれないよ?」
エルちゃんはアイスを私に取られると思ったのでしょうか、両手で渡すまいと必死です。エルちゃんは私と葵ちゃんを悶え殺しにしようとしているのかな?
「「尊い……」」
見事に私と葵ちゃんの声が被ってしまいました。
「よし、じゃあ私のクッキー味のアイスを食べさせて上げよう♪」
「じゃあ私も! エルちゃんにバニラ味のアイス食べさせるよ!」
そして私と葵ちゃんはスプーンで手に持っているアイスを掬って、エルちゃんの口元まで持って行きました。エルちゃんは最初怯えた様な顔でアイスを見て、クンクンっと匂いを嗅いでいましたが、意を決して私のクッキー味のアイスを小さなお口でパクりと食べました。
「――――――。」
「エルちゃん美味しい?」
「――――――!! ――――――!?」
「エルちゃん♪ こっちも食べて見て! バニラ味のアイスだよ~葵お姉ちゃんが食べさせてあげるね!」
葵ちゃんはエルちゃんの口にスプーンを持って行き、エルちゃんは何の警戒も無くアイスをパクりと食べました。エルちゃんは幸せそうな表情で、アイスを味わっている様です。
「さっきまで泣きそうだったのに、エルちゃんは食べ物の事になるとちょろいね」
「これからもっとエルちゃんには、美味しい物沢山食べさせてあげよう♪」
そしてエルちゃんはアイスをモグモグと食べ終わり、物欲しそうに指を咥えながら私と葵ちゃんの方を見ております。私と葵ちゃんは、互いに顔を見合わせて思わずクスクスと笑ってしまいました。
「じゃあ今度は、エルちゃんの手に持ってるチョコ味のアイスを食べよっか~開けてあげるね♪」
「――――――。」
エルちゃんは自分で開けれないと諦めたのかもしれません。今度は素直にアイスを渡してくれました。そして葵ちゃんがエルちゃんのチョコ味のアイスの蓋を開けて、エルちゃんにスプーンとアイスを渡します。
「――――――♪」
「エルちゃんご機嫌だね」
エルちゃんはグーでスプーンを持って、アイスを器用に掬って食べました。今度から泣きそうになったら、何かアイスやお菓子を上げるのも有りかもしれませんね。
「エルちゃん甘い物が大好き何だね♪ 駄菓子屋さんに今度連れてってみようかな。お姉ちゃん、良いかな?」
「ふふっ……その時は皆んなで行きましょ! でも、葵ちゃん。今のエルちゃんには少し早いかもしれないわね」
「あぁ、確かに。エルちゃんここに来てから、始めて見る様な物ばかりか凄い驚いてたよね。言葉が分からなくても雰囲気や表情で何となく分かったもん」
「まずは家に慣れてもらいましょ。買い物や別の場所に行くのは、段階踏んでもう少し先にしよう。言葉も含めて、色々と教えて行かないと」
楓と葵は無我夢中でアイスを食べてるエルちゃんを見ながら、今後の事について考えていた。
「今日は私がエルちゃんに色々と教えてあげようかな」
「じゃあ、お姉ちゃんにエルちゃんの事お願いするね! 私は配信と企業案件片付けて来るよ!」
「了解♪ エルちゃんの事は任せて♪」
そして葵ちゃんはアイスを持ちながらリビングを出て、2階の自室に籠ってしまいます。
「ん? どうしたのエルちゃん?」
「――――――。」
「あらぁ……もう♪ 甘えん坊さん何だから♡ うふふっ……」
エルちゃんはアイスを食べ終わった後に、私の身体にピタッと抱き着いて来たのです!
「後でお姉ちゃんと一緒にお勉強しましょうね~手取り足取り教えてあげるから♪」
「――――――??」
「大丈夫、大丈夫だから怖がらないで♪ よしよし♪」
私は1つ夢が出来ました。なんの夢かと言うと……もしエルちゃんが、言葉や色々な物を覚えて生活に慣れて来たら、一緒に有明のビッグサイトにエルちゃんと一緒に行く事です! エルちゃんとお揃いのコスプレとかしてみたいですね♪ そして、私の好きな娯楽をエルちゃんにも是非進めたいです!
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