第6話 魔法少女★みくるちゃん
時刻は朝の7時58分、エルちゃんと楓はリビングのソファで座って、うめぇ棒を食べながらテレビを見ていた。
「お姉さんにあやされてしまった……これじゃ、まるで本物の幼女じゃないか。いや、まあ本物何だけど……身体が小さくなってから、精神がこの身体に引っ張られているのか情緒不安定だ」
「――――――♪」
「お姉さん、もう大丈夫です。なので降ろして下さ……え? んにゃ!?」
僕はお姉さんの隣りに降ろされてから、綺麗な布でお顔をフキフキと拭かれて、棒状の食べ物?をお姉さんから貰いました。今度は高級パンに続き、謎の甘い匂いを発する棒。コーティングされている黒い部分が甘くて美味しそうな匂いを発している。
「くんくん……いい匂い、ジュるり……」
「――――――。」
僕はこの黒い棒状の物が、何なのかを考えて見る。するとお姉さんも違う色の棒状の食べ物を持っていた。
「え? 何じゃあれは!?」
「――――――??」
僕は現在お姉さんの隣りに座っているのですが、壁際にある大きな四角くて薄い物にとても興味が惹かれました。さっきまで真っ暗だったのに、お姉さんが手元に持ってる謎のボタンを押してから光って、中に人が写っているのだ!
「これも魔道具なのか!? って! お姉さん! 謎の魔物みたいな……って!? 2足歩行!? あんな魔物は見たことないぞ!? 可愛い女の子が戦っている……助けなくちゃ!」
「――――――?」
僕はお姉さんに大きな声で、魔道具に写っている魔物と女の子を指を指した。
「お、お姉さん! 女の子が魔物に襲われていますよ! 早く助けないと!」
「―――――――――♪」
「え? 何で僕の頭を撫で撫でするのですか?」
お姉さんはクスクスとお上品に笑いながら、僕の事をじっーと見つめたり、頭を撫で撫でしてくるのです。
「えぇぇっ!? 女の子が謎の呪文を唱えてから変身したぞ!? しゅ……しゅごい! 魔物が吹っ飛んだ!? あの女の子もしかしたら、凄腕の冒険者なのかな? 低く見積もってもAランク帯の実力はありそうだ」
「――――――??」
「はわぁ!? 最近の女の子は、杖からビーム出すのか!? 頑張れば僕にも出せるようになるのかな?」
◆
「エルちゃん? もしも~し、あらあら……魔法少女★みくるちゃんに、すっかりハマっちゃったのかな? まあ、エルちゃんの年頃なら皆こういうの好きだよね」
私の隣りでエルちゃんは、テレビを見ながらポカーンと口を開けて魔法少女★みくるちゃんを熱心に見ています。
朝のこの時間にやってる子供向けの番組ですね。
「――――――!?」
「うふふっ……エルちゃん、あれはテレビって言うんだよ? 今やってるのが、魔法少女★みくるちゃんだよ~丁度朝8時からやってる子供向けの番組だね〜」
「―――!! ――――――!? …………??」
「エルちゃん、落ち着いて! 興奮するのは分かるけど、暴れたら危ないですよ~? あっ、うめぇ棒落としちゃうよ?」
こんなに興奮してるエルちゃんを見るのは初めてです。私はエルちゃんの子供らしい一面を見て、無意識の内にだらけ切った顔でニヤニヤしていました。エルちゃんが可愛すぎて私も興奮しそうです! そんなこんなでエルちゃんを宥めていたら、葵ちゃんが洗濯から戻って来ました。
「お姉ちゃん、エルちゃんどうしたの?」
「どうもエルちゃんは、魔法少女★みくるちゃんにハマっちゃったみたいなの。さっきからテンション高いのよ~エルちゃんめちゃくちゃ可愛いよ!」
「なるほどね。ん? お姉ちゃん、エルちゃんが切羽詰まった顔でテレビの方を指差してるよ」
「どうしたのエルちゃん? う~ん、どうやら魔法少女★みくるちゃんが変身した事に関して驚いているのかな?」
私と葵ちゃんはその後もエルちゃんの事をじっくりと観察しました。
「エルちゃんの言葉が分かればなぁ~」
「そうだね、でも葵ちゃん。焦っても仕方ないよ。時間は沢山あるから、これから色々とエルちゃんに言葉や食べ物に道具等、様々な事を教えて行きましょ!」
「うん♪ そうだね! いつかエルちゃんと一緒に配信とかもして見たいなぁ」
「うふふっ、エルちゃんと日本のトップVTuberの葵ちゃんがコラボしたら一波乱起きそうね♪」
まあ、それはともかく。これからは色々と忙しくなりそうです。エルちゃんには教える事が山のように沢山ありますからね。
「お姉ちゃん~ちょっとコンビニ行ってくるよ! みんなのアイス買うついでに、帰りにおもちゃ屋で【魔法少女★みくるちゃん】のウエハースやおもちゃでも買ってくるよ。エルちゃん、きっと喜ぶと思うし」
「あらあら、葵ちゃんありがとね。お金は後で渡すから、ウエハース箱買いして、魔法少女の変身セットも買っちゃいましょ! あぁ、エルちゃんがみくるちゃんのコスプレかぁ……お姉ちゃん天に召されるかもしれないわね」
「エルちゃんはただでさえ可愛いからね。気持ちは分かるよ! よし! ちょっと行ってくるよ!」
「うん♪ 葵ちゃん、気を付けてね~」
葵ちゃんは財布を持ってコンビニとおもちゃ屋さんに向かうため、家を後にしました。私はその間、エルちゃん成分を補給するとしましょう。
◆
「こ、これは……」
「――――――♪」
僕は今一つの試練に立ち向かっていた。何故なら、お姉さんが食べ掛けの棒状のお菓子を僕に食べろと言わんばかりに口元へと持って来たのです!
「美人なお姉さんと間接キス……ふぁあああああ!? 僕は今まで女の子とキスした事無い……」
そう、僕は自慢じゃないけど童貞を貫いて来たのだ。ここでお姉さんの大きくて、太い物を咥えたら……
「――――――♪」
「くっ!? 何故お姉さんはそんなにニコニコしているのか……そんなに僕の初めてを奪いたいと言うのですか!?」
僕は意を決して、お姉さんの棒状の物をお口でパクリと咥えてムシャムシャと食べた。
(あぁ、これで僕は童貞を卒業してしまった……でも綺麗なお姉さんに奪われるなら本望です)
僕はお菓子の味を堪能する余裕は無かった。確かに美味しかったのですが、お姉さんの食べ掛けだと意識しちゃってからは頭の中が真っ白になってしまいました。
「――――――チュッ♡」
「はわぁっ!?」
何とお姉さんが僕の頬っぺたにキスをして来たのです! 僕の心臓がバクバクと高鳴っているのが自分でも分かる。顔が熱い……お姉さんのプルンとした美人特有の唇、生々しく僕は自分の頬っぺたを思わず手でさすってしまった。
◆
「あらまぁ、エルちゃん可愛い♡」
「――――――!?」
「よしよし、キスでこんなに動揺するのは予想外だったけど、エルちゃんのリアクションが面白くて可愛くて……」
はい、控えめに言ってもう最高です! 今直ぐにソファの上に押し倒してチュッチュッしたいです!
(落ち着くのよ、私。いくら葵ちゃんが今居ないからって、良くない良くない。あぁっ……エルちゃんは小悪魔なのか天使ちゃんなのかどちらなのでしょう……可愛いがすぎます。)
楓はエルちゃんを見ながら、自分の欲望と理性と戦っていた。エルちゃんは首を傾げながらこちらをキョトンとして見ています。
「うふふ……エルちゃんも忙しいわね。テレビ見て興奮したり、私の食べ掛けのお菓子食べて驚愕して、顔を赤くしてモジモジしたりと。イチャイチャしてるだけで一日が終わりそうな気がするわね」
「――――――??」
「あらあら。エルちゃん、可愛いらしい熊さんのパンツが見えてるよ? エルちゃんったら、本当無防備何だから♪」
エルちゃんは可愛い女の子です。今この場には私しか居ませんが、今後外を出歩く度にパンチラしていては変態さんに襲われてしまうかもしれません。ただでさえ可愛いのですから。まあ、私が目を光らせているのでそこは問題ありませんけどね。
(でもエルちゃんはまだ小さいから仕方ないか。もう少し大きくなったら、女の子の心得や嗜みなど色々とお姉ちゃんが手取り足取り教えてあげよう……ぐふふっ)
楓は、エルちゃんの頭を優しく撫でながらニヤニヤしていました。傍から見ればその様子は、妹を溺愛する過保護で残念な美人の姉の様です。でもエルちゃんも楓に抱き着いて甘えており、まさに本物の姉妹の様でした。
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