【第二回】「モグラの穴」 柊圭介さん

「モグラの穴」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054907806023


 思春期の男の子って、ガラスのように脆いんですよね……。

 などと言いつつ。


 フランス帰りの帰国子女である紘一はひどいいじめに遭い、学校の同級生や家族とうまく行かず孤立していきます。そんな中出会ったケベック出身のジェレミー先生。一見クマのぬいぐるみのような大男に紘一くんは次第に心惹かれていきます。


 海外帰りの子が日本社会に馴染めずいじめられるという話はよく聞きますが、この空気感が実際にこういう体験をしたことがあったのかと思うぐらいすごくリアルでした。

 群れた子供たち陰湿さ、日本人の集団意識、紘一くんの場合はそれらが最悪の形で組み合わさり、災難として降りかかってしまったのでしょう。

 「異物を排除する」というのはどこの国や文化でも起こることですが、この小説はその現実をよく描いていると思います。


 さて、この作品で私が個人的に一番記憶に残っているエピソードは十六話の「ジュテーム」で、この胸に突き刺さる辛さが大変私好みでございました。

 実らない恋や切ない別れが好きな方には是非おすすめしたい。

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