最初からそういうものだ
ゼルベクトの咆哮と共に全方向へ放たれる、強力無比な閃光。
大地を削る閃光はドラゴンたちの竜鱗に弾かれ、キコリも兜のバイザーを下ろし真正面から耐えきる。
「耐えるか。驚きだ。これほどまでに強力な守護者が」
「能書きはもう充分だ」
ゼルベクトの言葉を遮るように、ヴォルカニオンの前に強大なエネルギーが集まっていく。それは世界の魔力を無尽蔵に……ドラゴンに許された権限をフルに使った、文字通り世界の敵を吹き飛ばすためのドラゴンブレス。
「燃え溶けろ」
ゴウ、と。この場の全てを焼き尽くさんという勢いの炎のブレスが放たれ、大地を燃やし溶かし別の物質に変えていきながらゼルベクトへと迫る。それを飛んで避けようとしたゼルベクトは……しかし、飛べない。
「……ぬっ?」
その足は、大地から現れた土の腕にしっかりと固定されているからだ。飛ぼうとするゼルベクトをミシミシと音が鳴るほどに押さえつけ、絶対に逃がすまいと地面に縫い付ける。それを為したのは、ドンドリウス。
「逃がすわけがないだろう。さっさと死ね」
「ハ、ハハハハハハハハ!」
エネルギーをヴォルカニオンに集中し放つその一撃は、同じドラゴンであろうとも耐えきれぬ超火力。だからこそ、炎のブレスはゼルベクトを溶かし、貫いて。けれど、その瞬間にゼルベクトの姿が巻き戻すように再生していく。同時にゼルベクトから放たれたのは、周囲を全て焼き焦がさんとする強力な熱波だ。
「無駄だ」
だがその周囲にドンドリウスによる土の壁が現れ、熱波を完全に防ぎきる。
「ええ、その調子です。では……次は私が」
ユグトレイルの放つ光のドラゴンブレスが放たれ、土の壁ごとゼルベクトを貫いて。再生と同時にゼルベクトの身体から無数のレルヴァが現れ……その全てが、アイアースの大海嘯により飲み込まれ消え去っていく。
「……おいシャルシャーン。まさかこのまま消耗戦ってわけじゃねえだろうな」
再び一瞬で再生を完了させるゼルベクトを見ながらアイアースはシャルシャーンへと問いかけるが……「そんなわけがないだろう」とシャルシャーンは鼻で笑う。
「火、土、水、光……なるほど理解した。しかし」
最後まで言わせず、ヴォルカニオンのドラゴンブレスが再度炸裂して。けれど、今度はその表面を焼き焦がしただけに終わる。
「もう、効かぬ」
「なんっだありゃ……!」
「耐性だよ。ボク等の適応と似たようなものさ……ああなってからが本番だ。そして切るべき札は1つ……この戦いは、最初からそういうものだ」
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