ドラゴンは『適応』する生き物だから
ドワーフの国での出来事から、1カ月が経過していた。
そこで起こったことはすでにフレインの町の町長であるミレイヌも知っており、人間との共闘は相当に難しいという結論に達していた。
まあ実際、元々難しかったことだ……それが不可能に変わったに過ぎない。ミレイヌはオルフェから聞いた話を元に色々と準備を進めているようだが、それが功を奏するかは不明だ。
何しろ、相手は来るかどうかも分からない破壊神だ。こちらの好きなタイミングで来てくれるわけではない。なんならフレインの町の住人の寿命が尽きた後の話かもしれないのだ。
しかし、オルフェはそう遠くない話なのではないかと思っていた。なんとなく、そんな予感がするのだ。
「……ほんと、迷惑な話よね。何が破壊神よ。人様に迷惑かけて何が楽しいのかしら」
言いながらオルフェは、ベッドに寝ているキコリに手をかざしていた。
そう……キコリはまだ目覚めない。キコリと一緒にいるはずのレルヴァたちも出てくることはなく、まるで一緒に眠りについているかのようだ。
実際、話しかけても出てこないから寝ているのかもしれないが……未だにキコリの中で荒れ狂い続けている魔力は、オルフェがなんとか方向性を制御しようと毎日苦心しているが……どの程度効いているのかは分からない。
実際、今この瞬間もキコリの中の魔力を少しでも落ち着けようとしていた。
「……ふう」
オルフェはキコリから手を離し、悲しげな表情で見つめる。
目覚めない。こんなに長い間目覚めないのは初めてだった。
その理由は明らかでも、それを即座に解決できる手段がない。キコリの中を荒れ狂う魔力が、あまりにも大きすぎるからだ。
アイアースに手伝ってもらう方法も考えたが、逆に壊しかねないと辞退されてしまった。
まあ、それは仕方ない部分ではある。アイアースはキコリよりは魔法の才能があるが、結構雑だ。繊細な作業には全く向いていない。
「どうだ?」
そのアイアースがドアを開けて部屋にやってくると、キコリをチラリと見て「まだダメか」と呟く。ドラゴンの1体であるアイアースだが、その少女の姿が気に入っているのだろう、元の姿に戻ったところをオルフェはこの1カ月では1度も見ていない。まあ、戻ったら大騒ぎではあるだろうけども。
「ドラゴンは『適応』する生き物だから時間が解決するはずではあるが……どう適応するか怖ぇ部分があるからな。何しろ、モノがモノだ」
「分かってるわよ、そんなこと」
「……だな」
キコリはドラゴンだ。どんなものにも適応し、弱点を無くしていく。
しかし体の中に入り込んだ「破壊神の力の欠片」に適応したとき、どうなるのか……それは、誰にも分からないのだ。
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