デモンミノタウロス
「何はともあれ……帰ってくれたんだ。やるか」
厄介そうな客は帰ったが、キコリの仕事は何1つとして終わっていない。
このエリアに発生しているデモンミノタウロスはまだ数は少ないが、放っておけばどんどん増えていく。
いきなりデモンが大量発生しないのは、強さごとに顕現に必要なエネルギーが違うとかいう推測がたてられているらしいが、そういう難しい話はキコリには分からない。
要は強いモンスターほどデモンとして顕現するには時間がかかる。そういうことらしい。
だから、あまり増えないうちに倒し切る。文字通りのいたちごっこだが、やらないよりは大分マシというわけだ。
「まずは……グングニル!」
無茶をしない程度に魔力を籠めグングニルを思いきり投擲する。
放たれた魔力の槍はデモンミノタウロスが固まっていた辺りに着弾し爆発を起こす……が、倒し切れていない。これがオルフェだったら一発だっただろうが、キコリではそうはいかないということだ。
「まったく、才能がないっていうのは空しいな!」
それでも、効いていないわけではない。キコリは全力でデモンミノタウロスたちへと接近し斧を振るう。まずは1体、2体、そして3体。傷つき混乱したデモンミノタウロスたちへと木を切るように斧を振るい叩き切っていく。
だが、それは同時に周囲に存在するデモンミノタウロスたちに「誰が犯人か」を明確に教えていた。
全ての生命体を殺そうとするかのようなデモンの殺戮本能はドラゴン相手にも発揮され、それ故にデモンミノタウロスたちはキコリにその斧を振りかざし襲ってくる。
「ゴオオオオオオオオオオオオ!」
「ガアアアアアアアアアアアア!」
「グオオオオオオオオオオオオ!」
響くのは無数のウォークライ。ビリビリと空気を震わせる威圧はキコリにも伝わり……その全てを、キコリはものともしない。
「悪いな、効かないよ」
フェアリーマントの効果で高く跳んだキコリは1体のデモンミノタウロスの頭を斧で思い切り叩き割ると、そのままデモンミノタウロスの身体を蹴りもう1体へ。舞うように跳びながらミノタウロスを叩き切っていくその姿は、此処に居るのが通常のミノタウロスであれば恐怖を抱き逃げ出すようなものだ。
しかし、此処に居るのはデモンミノタウロス。恐怖というものを知らないデモンミノタウロスはキコリへと襲い掛かっていき……その1体が、キコリの頭を叩き割ろうと兜へとその斧を全力で振り下ろして。しかし、通じない。
ガキンッと。冗談のような音をたてて弾かれた斧は……しかし当然だ。
キコリは今、斧にも鎧にも魔力を通して竜爪や竜鱗としての能力を一切の不備なく発揮させている。
ならば、デモンミノタウロスの斧など元より通じるはずもなく。この戦いは、キコリに制限時間があるということを除けば……ほぼ一方的な結末が決まっていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます