向こうに示す誠意
そうと決まれば早いものだ。人間モドキたちの間をすり抜け、キコリたちは城へと向かっていく。
グネグネと曲がりくねって行き止まりも多い道は、単純に中央を目指すだけでは辿り着けないという迷路じみた構造になっていて、キコリたちはなんども行き止まりに遭遇する。
進んでいるのか戻っているのか。それすらもよく分からない構造だ。
「めんどくせえな……飛べばいいんじゃねえの?」
「何が向こうの機嫌を損ねるか分からないからな。ルールに則った方がいいと思うんだよな」
「確かにね。向こうが芸術家だっていうならそういうのにも拘り強そうだもの」
アイアースにキコリとオルフェがそう言えば、アイアースは仕方なさそうに息を吐く。
「……ま、仕方ねえな。付き合ってやるって言ったのも俺様だ」
「ああ、ありがとう」
初対面……まあ、あの時は顔を合わせてすらいないが、その時の問答無用のドラゴンブレスの時と比べると、こうして同行しているアイアースは正直、かなり融通が利く上に頼りになる。
となるとあの時はシャルシャーンが悪かったんじゃないか、と……そう思ってしまうほどだ。
「しかし、この構造……人間の町はこんなに分かりにくいのか?」
「いや、たぶんだけど防衛用なんじゃないか? 俺は本物の王都を見たことが無いから確実じゃないけどな」
ドドにキコリはそう答える。そう、防衛用。敵の軍勢が攻め込んできたとき、王都が複雑な迷路のような構造であれば敵の進行速度を下げることが可能だ。
行き止まりで引き返そうと壁を壊そうと、そこで多少のロスが発生するからだ。味方には道が分かっているのだから、それを前提にした迎撃作戦だって可能だろう。恐らくこれは、そういうものを再現したのだと想像することは出来た。
「本当に町っていうものを解析して、それを作ろうとしたんだろうな」
「まあ、だとすると他の連中が失敗した理由も見えてくるわね」
「ああ。侵入者としての行動をとれば、それに対応した何かをされる気がする」
たとえば、先程からチラホラと見かける「衛兵モドキ」だ。
兜のバイザーを下ろしてはいるが、あれは人間モドキではなくリビングアーマーだ。
恐らく何かあれば侵入者を殺す役割を負っているのだろう。以前リビングアーマー相手に殺されかかったキコリとしては、自分の成長を此処で試してみる気はない。
「面倒だけど、正攻法で行く。それが向こうに示す誠意に繋がる気がするんだ」
此処がドンドリウスの作品であるなら、それに敬意を払って「体験」する。
ドラゴンに対して接するには、そのくらいの慎重さが生死を分けるカギになるのは間違いなかった。
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