この世界に幾つか存在する『異常』
そして何よりも、本人ほどに強くない。偽キコリも偽アイアースも、ほぼ一撃で倒せている。
頭を割れば殺せるというのを弱点と呼ぶかは少しばかり疑問もあるが、やはり最大のポイントは武器を上手く使えていないという一点に尽きるだろう。
斧の使い方も槍の使い方も偽物はイマイチであり、だからこそ然程強敵ではないのだ。
そうして走り抜け、キコリたちは入り口の広間へと出る。
すると、シャンデリアの鎖がぐにゃりと溶けて凄まじい勢いで落下してくる。
「うお!?」
「ハハッ!」
キコリとアイアースが別方向に飛べばシャンデリアは床に叩きつけられ、破砕音を響かせ……ぐにゃりと溶けると、偽キコリの姿へと組み上がる。
そして同時にシャンデリアが消えたことで周囲が暗くなってしまう。
「シャンデリアも偽物だったのか……!」
「ハハハッ! 一気に暗くなっちまったなあ!?」
暗闇の中で襲ってくる偽キコリを……キコリの斧が偽キコリの斧持つ腕を切り飛ばし、アイアースの三叉の槍が背後から頭部のコアを刺し砕き割る。
「まあ、暗さにはもう適応してるけどな」
「海のドラゴンなめんじゃねえって話だ」
元シャンデリアのメモリースライムのコアが地面にばらまかれ、それでようやく襲撃がひと段落ついたのか、広間は静かになるが……シャンデリアがなくなったせいで、暗いままだ。
階段の上の方には照明があって明るいが、今の襲撃を経験した後では「どうせあれも……」という呟きが漏れてしまう。
それに、問題は他にもある。オルフェとドドのことだ。
「おかしいな。この騒ぎでもオルフェとドドが出てこない」
「ふーむ。となると、可能性は幾つかあるな」
「音が遮断されるような場所にいるか、この音が罠と思って出てこないか……だろ?」
「まあ、それもある」
言いながら、アイアースはスタスタと奥へ歩いていく。
階段を無視し広間の奥にある大きな扉へと近づいて、その扉を蹴り開ける。
そこにあった光景に……キコリは思わず息を呑む。
「なんだ、これ……」
何処までも広がるかのような廊下にドア、そして階段。ろうそくの明かりで照らされていてなお、どこまで続いているのか分からない。
ハッキリいって、おかしい。こんなおかしな家が存在するはずがない。
まるで無軌道に増築したかのような、そんな不気味さがある。
「そうだな。明らかにおかしい。おかしいが、こうして存在しちまってる。つーことは……ハハッ。おいキコリ。こいつはめんどくせえことになっちまったぜ?」
「分かるのか、アイアース?」
「ああ。此処はな……この世界に幾つか存在する『異常』の1つだ」
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