竜殺魔法バルムンク

 キコリのその言葉にサレナは激昂し、炎をキコリへと放つ。

 フェアリーマントを発動させ水面を跳ぶキコリだが、飛ぶ者ほどに自由自在なわけではない。

 その炎はキコリを焼くべく、その周囲を囲み襲い掛かる。


「アンタがどうやって私に勝つっていうの!? もう攻略法は出来てんのよ!」


 バルムンクを放つべく、サレナは手の平を向けて……「えっ」と声をあげる。

 炎の中から怪我1つ無く飛び出してきたキコリ。炎をものともせずに水面から跳んできたのだと理解できる。しかし、問題はそこではなく。


「バ、バルムンク!」


 ガンッと。サレナの放ったバルムンクが、キコリの斧に弾かれ遠く離れた場所で爆発する。

 一瞬、意味が分からずに呆けて。サレナはその魔法の実力故に、すぐにその斧の「正体」を看破する。


「な、ななな! 何よ『ソレ』は! 何なの!? ソレを私に……向けるなああああ!」


 放つ無数の魔法を、キコリは斧だけで切り裂きながら迫り……サレナは更に高く飛ぶことでキコリから離れていく。


「チッ」


 落下するキコリをサレナはありったけの魔法で迎撃するが、キコリに効いた様子がない。

 何かが違う。さっき殺しかけた相手とは、何もかもが違う。あの斧も、貫いたはずなのに修復している鎧も、本人も。恐ろしい程の魔力が渦巻いている。いや、周囲の魔力が吸い込まれていっている。


(分かんない……でも、でも。アレで斬られたら……何をやっても、防げない……!)


 確実に殺すために作ったはずの竜殺魔法バルムンク。それは確かに効果を発揮したはずだ。

 なのに、なのに! どうしてこんなことになっているのか、サレナには全く分からない。

 先程から水面近くを跳ねて何かブツブツと呟いているキコリが何を言っているのか聞くべく、聴覚を強化する魔法を使えば……聞こえてくるのは。


「このままじゃ届かない。どうする。俺は飛べない。でも跳べる。なら……ああ、出来る。今なら出来る」


 もっと高く、と。聞こえてきたその言葉にゾクリとする。

 殺される。このままじゃ殺される。殺される前に、殺すんだ。

 サレナは必死に魔力を集めるが……バルムンクはすでに破られた。あれではもう殺せない。

 でも、もっともっと魔力を籠めれば通じる可能性はある。なら、それならば。


「自分を信じろ……私なら出来る!」


 魔力をありったけまで籠めて、サレナはそのイメージをより強くする。

 ドラゴンがどんなに強かろうと、その鱗を貫く竜殺の魔法。魔法で作ったドラゴンスレイヤー。

 もっと、もっと強く。もっと、もっと激しく、鋭く。


「バル、ムンク!」


 放った剣は光すら帯びて、跳んできたキコリに迫る。キコリを貫くべく、一筋の流星となったサレナのバルムンクは……斧を振るうキコリと衝突し、今までで最大級の大爆発を引き起こした。

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